16.《ネタバレ》 ■構成について
非常にダイジェストな作りで、総集編的になっている。
主要なストーリーラインは以下の6つ。
・若おかみの孤立と成長
・うり坊と峰子
・真月と美陽
・客三組
それぞれが魅力的な素材だったけど、6つのストーリーを94分で描くのは無理があった。
結果、どうなったか?
あらゆる障害は滞りなく、スムーズに解決する。
うり坊と美陽には遺された人とのドラマはなく
若おかみが幽霊を見れなくなる演出の舞台装置の域を出ない。
「幽霊が視える若おかみと遺された人々の話」か
「未熟な若おかみとやっかいな客達の話」のどちらかに振り切れば掘り下げられたのだろう。
もともと、複数の原作小説を一つの映画に収めることに無理があるのだ。
これが監督の責任なのか、配給会社の責任なのかは知らないけど。
■メッセージ性について
監督はインタビューで仏教の滅私を描いたと語ってるのだけど
それなら等身大の小学生として生きる選択肢を与えた上でおかみを選ばせるべきだった。
周囲の大人がフォローせず、幽霊と気のいい客に支えられたギリギリの状況じゃ
滅私じゃなくて理不尽な環境に対する認知的不協和の解消に過ぎない。
自分を奮い立たせるしかない。
登場人物はみんないい人だけど
いい人との出会いだけで奉公の素晴らしさを説こうとすることこそが
この作品のリアリティの限界点だ。
動物みんな共存させつつも肉食動物の食事事情を
一切描かなかったズートピアに通じる子ども騙し感が残る。
ターゲットを子どもと割り切ったのかもしれないが。
辛い過去があるけど落ち度はないし反省してる。
そりゃあまあ、葛藤はあるにせよ許せるだろう。
そうではなく、クズな客が現れ、全然反省してないし生きてて社会の役に立つかも分からない、
むしろいない方が世の中のためなのではと思わせるクズが現れた、でもどうやら困ってるらしい。
そこで手を差し伸べられるか。
普通はそんなやつ助けない。でも花の湯温泉なら────
そういう語り口であれば、言わんとするところは読み取れたかもしれない。
■その他
子ども向けであることを主張するかのような
ミュージカルのような演技。
子どもに真摯に向き合ったとき、本当にこのような演出が必要なのだろうか。
また、トラウマが思い起こされるシーンへの切り替えも急で
明るいBGMから突然不穏なBGMになり、スムーズな心の揺さぶりを阻害しているように感じられた。
俗世に疲弊した占い師と、親を亡くしながらも純朴な若おかみの交流は素晴らしい。
それだけに惜しい。