37.《ネタバレ》 吉蔵演じる藤竜也にレビュー点数全振り。
70年代の修正版リバイバル→2000年完全ノーカット版
→2009年クライテリオン版無修正ブルーレイ→2021年2Kリマスター、が私の鑑賞履歴。
因みに無修正度は丸見え順に無修正ブルーレイ>2021年リマスター>2000年>修正版。
この映画の困った点はあまりにも性器のクロースアップ・性交描写が露骨過ぎるので
どんなに大島監督が芸術作品である、とうたっても、周りからは「わいせつじゃん、これ」
と片づけられてしまう事+性描写に尽力注ぎ過ぎで肝心のストーリーが薄い、という事にある。
阿部定事件を描いた作品としては前年に制作された監督田中登/主演宮下順子の
「実録・阿部定('75)」の方が事件の背景・心情もわかりやすい。
ただ私はこの作品、「性愛の行く末」を描いた映画として当時の世界映画史上
徹底的にやり切ったという点に評価をしてあげたいし、何よりも藤竜也のキャラクター
に尽きる一本だと思う。「女からの狂おしい愛情を受け止め、死に至るまで付き合う」
という概念は当時の男尊女卑の風潮から考えたら有り得ないだろう感覚で、
『この出演依頼から「逃げちゃいけない」と思った』という藤竜也の想いがちゃんと
表れている事に(実際、彼はこの映画出演により所属事務所を退社し、
約2年間、映画界から締め出される=休業)感心しつつこの点数。
個人的には大島監督の小難しい主張が炸裂する「日本の夜と霧('60)」、
「絞首刑(’68)」「儀式(’71)」よりは好き。機会があれば、と言いたいけど
兎に角露骨でございますので、その点はどうぞご勘弁。