すばらしき世界の投票された口コミです。

Menu
 > 映画作品情報
 > 映画作品情報 ス行
 > すばらしき世界の口コミ・評価
 > (レビュー・口コミ)

すばらしき世界

[スバラシキセカイ]
2021年上映時間:126分
平均点:7.32 / 10(Review 41人) (点数分布表示)
公開開始日(2021-02-11)
ドラマ実話もの小説の映画化
新規登録(2021-01-15)【にゃお♪】さん
タイトル情報更新(2024-09-28)【イニシャルK】さん
Amazonにて検索Googleにて検索Yahooにて検索
Twitterにて検索
ブログに映画情報を貼り付け
監督西川美和
キャスト役所広司(男優)三上正夫
仲野太賀(男優)津乃田龍太郎(TVディレクター)
六角精児(男優)松本良介(スーパーの店長)
北村有起哉(男優)井口久俊(ケースワーカー)
白竜(男優)下稲葉組・組長
キムラ緑子(女優)下稲葉マス子
長澤まさみ(女優)吉澤遥(TVプロデューサー)
安田成美(女優)西尾久美子(元妻)
梶芽衣子(女優)庄司敦子
橋爪功(男優)庄司勉(弁護士・身元引受人)
井上肇(男優)
原作佐木隆三(原案)「身分帳」(講談社文庫)
脚本西川美和
撮影笠松則通
製作川城和実
バンダイナムコアーツ(「すばらしき世界」製作委員会)
ワーナー・ブラザース(「すばらしき世界」製作委員会)
ギャガ(「すばらしき世界」製作委員会)
講談社(「すばらしき世界」製作委員会)
配給ワーナー・ブラザース
美術三ツ松けいこ
衣装小川久美子(衣裳デザイン)
編集宮島竜治
録音白取貢(音響)
北田雅也(音響効果)
ネタバレは禁止していませんので
未見の方は注意願います!
(ネタバレを非表示にする)

【口コミ・感想】

別のページへ
新規登録順】 / 【変更順】 / 【投票順】
1
>> お気に入りレビュワーのみ表示
>> 全レビュー表示

>> 改行表示 ※《改行表示》をクリックすると個別に改行表示致します
※ 「改行」や「ネタバレ」のデフォルト表示のカスタマイズは「カスタマイズ画面」でどうぞ
《改行表示》
10.《ネタバレ》 10~20代の時に見たら、多分この映画の本質の半分も理解できなかったかなと思う。いや、30代もあやしい……。 映画館からの帰り道からずっと、あの人の人生を考えずにはいられなかった。 短気であまり頭の良くない、挫折を繰り返す男。でも優しいし一本気で、子供のような男。 あの人はきっと、あのままじゃ長生き出来ない人だったと思う。  あの時。弱いものを嬲っていた男たちを、心の思うがままに暴行して痛めつけていたら、彼の体はストレスをためることなく、いまだ生きていたかもしれない。でも、支援してくれた人々をまた悲しませ、落胆させ、失望させていた。 だから死に物狂いでその衝動に耐えた。結局、彼の体はそれに耐えられなかったけれど。 綺麗できっぷの良いイカす元妻から、娘と一緒に会おう、楽しみ! なんて言われて。 きっと神様は最後に御褒美をくれたんだと思う。  最後に、花の香りを嗅ぎながら、彼は思ったんじゃないかなぁ。 ・優しい坊主、守れなくて悪かった、我慢せずやっちまいたかった ・でも、やっちまってたら、スカっとしたけど、あの人達を失望させた ・だから、これで良かったんだ、これで良かったんだ すばらしき人生って言っていいのだと思う。  運のない人だったけれど、死んでから泣いてくれる人がいるだなんて、うらやましい。 個人的には、六角精児が演じたスーパーの人には一番頭が下がる。あの人は凄い。本当に凄い。 人生は人との繋がり、なんだなぁと、自己を顧みてつくづく反省した。  多分一生頭の片隅にこびりつく映画。
りんどうさん [映画館(邦画)] 8点(2021-03-16 01:07:23)(良:3票)
《改行表示》
9.《ネタバレ》 良かった。すごく良かった。 原作があるのか無いのか知らんけど、映画良かった。 俳優さんたち、みんな素敵だった!  ところで『すばらしき世界』という題名って、すごい皮肉よね。  確かに主人公が出所後、手を貸してくれた人々が周りにたくさん居たけど、 だけど、 あんなに気持ち=正義を押し殺して、(もちろん「本人にとって」の正義だけど) 文字通り死ぬほど感情を押し殺して、素晴しい世界なの?  あの人(主人公)、本当に本当に苦しかったと思う。 「カタギ」に馴染むためには、 理不尽な事も許せないことも何もかも「自分の感情」をスルーして、 全て「他人事」と位置づけて。 そうしないと生きていけない世界って「スバラシイ」の?  自分が死んだあと、誰が泣いてくれてもしょうがないのよ。 自分が生きている間に、自分らしく生きられないのなら ただの人形。   最後に(あえてハンドルネームは出しませんが)「3.」の人。 「僕のすばらしき世界」が訪れますように。。。
ジャスミンさん [映画館(邦画)] 9点(2021-02-18 22:50:53)(良:2票)
《改行表示》
8.《ネタバレ》 原作『身分帳』既読。 映画は実話に基づく佐木隆三氏の小説『身分帳』を原案とするが、映画版は原作と比べて違った印象を受けた。 原作は事実に基づいた淡々とした記録風のルポルタージュで、再犯率5割という数字も客観的に提示されるだけだった。 一方、映画はその現実を舞台にしながらも、概ね問題点を強調するための脚色、演出が行われている。  映画は、再出発を支援できない社会を痛烈に描く。 三上は刑務所という閉ざされた世界から一歩外に出た瞬間から、冷たい壁にぶつかる。 映画では、無理解な社会との対峙が、激しい衝動と内に秘めた儚い希望と共に描かれる。 役所広司の迫真の演技が、そんな三上の複雑な内面を余すところなく表現し、胸が痛む。  原作では数字と事実、取材に基づく冷静な記録があるだけで「こんな現実がある」という事実認識を重視している。 しかし、映画では、三上という男が社会に受け入れられず、再出発すらも許されない現実を強く押し出してくる。  映画の中で描かれる「再犯率5割」という数字は、ただ統計として受け止めるのではなく、 背負う過去と罪から逃れられない現実の重さとして映画では訴えるのだ。 社会は、一度裏社会に足を踏み入れた者を、どこまで冷たく拒絶するのか。 これが社会の仕組みとしての状況なのだ。映画はそれを三上の運命を通して突きつけてくる。  原作の静かな記述も良かったが、映画の演出には心が辛くなる。 しかし、あの演出がなければ、数字の示す本当の恐ろしさを見過ごしてしまうことになるだろう。 映画は、残酷な現実を示し「罪を犯した人が変われるのか」という問いを投げかけ、 それが口先だけの人事戯言でいかに困難なことであるかを訴える。  現実社会をかなり知る立場の私としては、 全体的に物事を強調しすぎて現実から乖離しているところも多いと感じる。 しかし、普通の人たちから見ればいつものような毎日が、弱者から見ればイバラの道に感じることを現しているのだ。 だからこそ非現実的な演出としてメッセージ性を強めエンタメ性を持たせていることを理解するべきだ。 これを事実と違うなどという批判もあるようだがそれは見当違いだ。 現実がドラマより奇異なこともあるし、そもそもドラマは非現実のものを観るものである。  『すばらしき世界』は、 社会の冷酷さに直面する現実を痛感すると同時に、社会構造の脆弱性や葛藤を映し出す鏡のような作品。  もと犯罪者の方々の再出発の難しさ。それに対して社会がどれだけ無関心か、 あるいは拒絶しているかを改めて問い直さずにはいられない。  
そくらてつこさん [インターネット(邦画)] 8点(2025-03-09 06:31:36)(良:1票)
《改行表示》
7.《ネタバレ》 最近、韓国映画のパワーにずっと心をやられていたが、何となく見た本作で邦画の良さをしみじみ感じられた。 これ他の国の出来事だったらここまで心に染み渡らないでしょうね。 役所広司の役作りは凄い。自分が見てきた「昭和初期に悪かった人」の独特の雰囲気というか何というか 面倒くさいけど、不器用で憎めない、すぐ怒る、笑顔がズルい、等のなんとも言えん感じが とっても良く出てると思った。 すばらしき世界というタイトルは凄いですね。皆さん見終わった後、はあ~となりますよね・・・。 ごくごく一部に登場する人以外、主人公の周りには良い人ばっかり積み重なってきます。 周りの人に感謝したくなる、会話したくなる、社会について考えてみる、そんな映画でした。良かった。
masaovさん [インターネット(邦画)] 7点(2024-08-11 01:49:31)(良:1票)
《改行表示》
6.《ネタバレ》 すばらしき映画。 三上の狂気っぷりを役所広司が見事な演技で表現している。 喧嘩中相手にかみついて口の中血まみれにしながら笑顔で一般人の津野田を呼ぶシーンが一見暴力的とはいえ普通の人っぽかった三上が普通じゃない世界の人だと認識させられる印象的な場面。 こんな三上がカタギになれる訳もなく自然な流れで暴力団に戻っていきかける。 たまたま暴力団を離れることになり再びカタギの仕事に就いてだんだんと見て見ぬふりをする「普通」の世界に馴染み始めた矢先突然死する。 不器用だけど一生懸命に生きようとする三上に目頭が熱くなるいい映画だ。
Dry-manさん [インターネット(邦画)] 8点(2024-02-12 22:03:13)(良:1票)
《改行表示》
5.ストーリーがすばらしい。よくある勧善懲悪ものとは明らかに一線を画し、たしかに現実にありそうな話を、ものすごく自然に、少々の毒や皮肉を込めて描いている感じ。しかも主人公はけっして特異な存在ではなく、誰もが大なり小なり似たような要素を持っていて、生きづらさみたいなものを感じているんじゃないですか、と問われているような気がします。 しかしストーリーもさることながら、私がもっともグッと来たのは、前半と中盤に1回ずつあった役所広司が泣くシーン。前半は橋爪功夫婦と食卓を囲みながら、中盤は子どもたちとサッカーに興じた後で。演出なのか演技なのかわかりませんが、大の大人が堪え切れなくなって人目も憚らずに嗚咽するというのは、まさにこんな感じだろうと。仮に前後を切り離してこのシーンだけ見たとしても、私はきっともらい泣きしたと思います。
眉山さん [インターネット(邦画)] 9点(2024-02-02 02:02:51)(良:1票)
《改行表示》
4.《ネタバレ》 大好きな西川美和監督と大好きな俳優役所広司さんということもあって、とにかく観る前からの期待値はかなり高かったです。ただ事前にあまり情報を得なかったので、この話が実在した人物をモデルに作られていたことは鑑賞後に知りました。知って思ったのは、この話の実在した人物と西川監督の世界観がものの見事にマッチしているということ。だからこそこれだけ素晴らしい作品へと昇華されたのでしょう。  反社会に対しての社会のシステムがどんどん厳しくなっていく中で、反社会から足を洗って真っ当に生きていこうとする人間に対する社会のあり方に焦点を当てているわけなんですが、そんな中で一番強烈に印象深く残るのは、私たちは常に社会に対して何らかの不平不満を抱きながらもそれらを我慢して生きていかなきゃいけないということを、その現実を改めて思い知らされたということが、何よりもズンときました。そんな我慢なストレスを抱え込んだ人たちは自分よりも立場的に不利な人を見つけるとつい上から的な態度を取ってしまうのも、こういった社会の闇なのかもしれませんね。  この監督さんは台詞のない描写で印象的なシーンをよく見せてくれるのだが、今作では、大きなキャベツから徐々に小さなキャベツを選び直すシーンや、ちょっと高級そうなシャンプーを手に取りながら羨望の眼差しで何とも言えない表情をするシーンとか、とにかくそういった何気ないシーンが本当に良い塩梅に散りばめられていて、非常に心地よい。  コスモスの花言葉は「調和」や「謙虚」。 やっと就職してこれから「謙虚」に社会と「調和」して生きていこうとした三上への最上の表現ですね。でも私は三上は死んで良かったんじゃないかとも。なぜなら果たしてあの職場で我慢し続けられるのか、己をとことん殺してまで耐えていけるのか、甚だ疑問でもあったし、我慢し続けてもいつかストレス溜まりすぎてぶっ倒れちゃうんじゃないかとも...だから遅かれ早かれ楽になるにはああなるしかなかったのかもって...だから死んで楽になれて良かったですね、ていう感情もありました。  すばらしき世界・・・皮肉たっぷりなこのタイトルが本当に...憎たらしい...。   PS:日本語の聞き取りづらい箇所が何箇所かあるの、年配者には本当に辛いので字幕付き邦画の検討、本当にお願いします。
Dream kerokeroさん [インターネット(邦画)] 8点(2024-02-01 12:24:00)(良:1票)
《改行表示》
3.《ネタバレ》 世界は決してただ美しい、素晴らしいモノではないのであって、多くの不条理・不正義・不公平と残酷な運命に満ち満ちている。それは人ひとりの力で何とか出来るものばかりでは全くないのだし、そもそも人智に依っては如何ともし難いことだって今だ数多く存在する。だから残念なことに「努力は人を裏切らない」とか「人生は何度だってやり直せる」だとかいう美辞麗句というのは、言葉の使い方の問題でもあろうが確実にそこに「嘘」を孕んでいる、とも思うのだ。人生とは、この世界とは、元々全く「ままならない」ものなのだろう、と考えている。  でももし、そこにただ純粋に素晴らしいことがひとつだけ在るとしたら、人が自分の人生を少しでも、ほんの少しずつでも「前に」進めようというささやかな意志を持ったのならば、その人生はどんな時でも、ほんの少しだけはより善い・より意義深いものにきっと変わるだろうということなのだ。例え明日死ぬとしても、その明日を今日よりも少しだけ何か意味の在るものにすることはたぶん可能なのだ。それだけが、人に許されている唯一つの絶対なのだ(人生の意味とは、ただひたすらにその積み重ねでしかないのだ)。だから、それでも世界は絶対に素晴らしいのだ、と。
Yuki2Invyさん [DVD(邦画)] 9点(2022-05-08 18:20:35)(良:1票)
《改行表示》
2.《ネタバレ》 ネタバレあります。未見の方はご注意ください。  自然災害、不慮の事故など、本人に責任が及ばぬ原因で終わる人生もあれば、己が生き様の帰結として迎える必然の最期もあります。後者を選択できた者は、その結果が好ましかどうかに関わらず「幸運」に違いありません。三上の最期は唐突かつ遣り切れぬものでしたが、明らかに後者と考えます。それに見方を変えれば、これほど幸せな結末もありません。生活苦もなく、辛い闘病生活も経験せず、悲しんでくれる人がいる、泣いてくれる人がいる。これ以上何を望みましょう。彼は周りの人々に恵まれました。もしかしたら人生の前半で使わなかった運を、ここで一気に使ったのかと思うほど。もちろん、身寄りのない三上が短期間で濃密な人間関係を築けたのは、彼の人間性に魅力があったからに外なりません。広い空の下で死ねたこと。彼が迎えた人生の結末は、最善でなくとも、最良のものだった気がします。 生い立ち、セーフティネット、犯罪者の社会復帰。シリアスな周辺要素を孕みながらも、物語は一人の男の日常生活を淡々と描くスタイルです。どこで終わっても成立したでしょう。それこそ後味よく希望を抱かせるエンディングを用意することも容易でした。しかし西川監督は「けじめ」に拘った気がします。それが「人生」を描く責任。西川監督の過去作を見てもわかるように、その真摯な姿勢は一貫しています。良いところも悪いところも、好都合も不都合も、全て描く。でもその視線には人間に対する絶対的な肯定感が見てとれます。それを「愛」と呼ぶのかもしれません。だから私たちは西川監督に魅了されるのだと思います。タイトル『すばらしき世界』は幾ばくかの苦みを含みつつも、皮肉ではありません。
目隠シストさん [DVD(邦画)] 9点(2022-01-01 00:00:00)(良:1票)
《改行表示》
1.《ネタバレ》 この映画に登場する人物のほぼ全員は、主人公・三上正夫に対して、悪意や敵意を示して接することはない。 むしろ皆が、偽りなき「善意」をもって彼に接し、本気で彼の助けになろうとしている。 そして、三上自身も、その善意に対し感謝をもって受け止め、“更生”することで応えようと、懸命に努力している。 その様は、「やさしい世界」と表現できようし、この映画のタイトルが示す通り、「すばらしき世界」だと言えるだろう。  でも、それでも、この世界はあまりにも生きづらい。 その、ありのままの「残酷」を、この映画は潔くさらりと描きつける。 西川美和という映画監督が表現するその世界は、いつも、とても優しく、そしてあまりに厳しい。   僕自身、ようやくと言うべきか、早くもと言うべきか、兎にも角にも40年の人生を生きてきた。 平穏な家庭に育ち、平穏な成長を経て、そして自らも平穏な家庭を持っている。 決してお金持ちではないし、生活や仕事において不満やストレスが全く無いことはないけれど、今のところは「幸福」と言うべき人生だと思う。  だがしかし、だ。 その平穏という幸福を自認し噛み締めつつも、僕自身この世界における“生きづらさ”を否定できない。 人並みにアイデンティティが芽生えた少年時代から、40歳を目前にした現在に至るまで、「生きやすい」と感じたことは、実はただの一度も無いかもしれない。 人の些細な言動に傷つき怒り鬱積を募らせ、僕自身も“本音”を吐き出す程に周囲の人間を困らせたり、怒らせたり、傷つけたりしてしまっている。 どんな物事も思ったとおりになんて進まないし、「失敗」に至るための「行動」すらできていないことが殆どだ。 自分自身の幸福度に関わらず、人生は失望と苦悩の連続で、この世界はとても生きづらいもの。 それが、殆ど無意識下で辿り着いていた、現時点での僕の人生観だったと思う。  そしてそれは、この世界に生きるすべての人たちに共通する感情なのではないかと思う。 そういった個人の閉塞感を、この世界の一人ひとりが持たざる得ないため、その負の感情は縦横無尽に連鎖し、社会全体が閉塞感に包まれているように感じる。  この映画で西川美和監督が、社会に爪弾きにされた前科者の男の目線を通じて描き出したことは、決して一部の限られた人間の人生観ではなく、この世界の住人一人ひとりが共有せざるを得ない“痛み”と一抹の“歓び”だったのだと思う。  確かに、この世界はすばらしい。 美しい光に満ち溢れているし、エキサイティングで、エモーショナルで、ただ一つの命をまっとうするに相応しいものだ。少なくとも僕はそう信じている。  そんな世界の中で、人は皆、誰かに対して優しくありたいし、誰しも本当は「罪」など犯したくはない。 それでも、結果として「罪」が生まれることを避けられないし、すべての人が無垢な「善意」のみで生きられるほど、人間は強くない。 この映画の登場人物たちは皆優しい人間だと思うけれど、主人公に対する「善意」の奥底には、それぞれ一欠片の「傲慢」が見え隠れする。 取材をするTVディレクターも、身元引受人の弁護士とその妻も、スーパーの店長も、役所のケースワーカーも、ヤクザの老組長も、心からの善意で主人公を助けているけれど、同時にその心の奥底では彼のことをどこか見下し、自分の優位性を感じていることを否定できない。  無論、だからと言って、彼らを否定する余地などはどこにもない。 彼ら自身も、この生きづらい世界の中で、自分の心の中で折り合いをつけながら、必死に生きているに過ぎないのだから。   自分の感情に対して「正直」に生きることしかできない主人公は、それ故に少年時代から悪事と罪を重ね、人生の大半を刑務所内で過ごしてきた。 理由がどうであれ、犯した罪は擁護できないけれど、誰にとっても生きづらいこの世界が、益々彼を追い詰め、ついには自分自身で、文字通り心を押し殺さざるを得なくなっていく様を目の当たりにして、悲痛を通り越して心を掻きむしられた。 それは、単なる暴力による報復などとは、比べ物にならないくらいに残酷な業苦を見ているようだった。  ラストの帰り道、どこか都合よくかかってきたように見える元妻からの電話による多幸感は、果たして「現実」だったのだろうか。 そして、とある人物から貰った秋桜を握りしめ、最期の時を迎えた主人公の心に去来していた感情は、如何なるものだったのだろうか、救済だったろうか、贖罪だったろうか、悔恨だったろうか。 僕自身、様々な感情が渦巻き、鑑賞後数日が経つがうまく整理がつかない。  空が広く見えた。 人間は、この「すばらしき世界」で、ただそれのみを唯一の“救い”とすべきなのか。
鉄腕麗人さん [映画館(邦画)] 10点(2021-03-01 12:30:15)(良:1票)
別のページへ
新規登録順】 / 【変更順】 / 【投票順】
1
マーク説明
★《新規》★:2日以内に新規投稿
《新規》:7日以内に新規投稿
★《更新》★:2日以内に更新
《更新》:7日以内に更新

【点数情報】

Review人数 41人
平均点数 7.32点
012.44%
100.00%
200.00%
300.00%
400.00%
537.32%
6512.20%
71126.83%
81331.71%
9614.63%
1024.88%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 10.00点 Review2人
2 ストーリー評価 6.66点 Review3人
3 鑑賞後の後味 7.66点 Review3人
4 音楽評価 7.00点 Review1人
5 感泣評価 7.50点 Review2人

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS