242.《ネタバレ》 封切り当時は確かこれ不評の映画だったですね。
私は場末の客席ガラガラの映画館で見ましたが
この時私と一緒に見た何人かの人々は
多分一生忘れられない1作になったんだろうと思います。
話の筋は逃げ出したレプリカント(人造人間)を処分するブレードランナー(賞金稼ぎ)を描くという事には成っておりますが
はっきり言ってそんな事はどうでも良い。
本作品に出て来るレプリカントの寿命は僅か4年です。
もし本当の人間が自分の寿命は4年と区切られてしまったらどうするでしょう?
植民地星に送られ、重労働にコキ使われて死んで行くだけの人生を受け入れられるでしょうか?
自分の寿命を4年と自覚したが故に
劇中のレプリカント達は追う存在である人間より人間臭く
そしてより少ない人生を追い求める。
また自分たちの存在意義をも、激しく追い求めて行きます。
自分たちがどうやって作られたか?切られてしまった寿命を伸ばす方法は無いのか?
彼等は必死であがいて行く。しかしそうしている間にも
自分たちの肉体はドンドン衰えて行きます。
そして最期は仲間がブレードランナーデッカードに次々と殺され
逃げ出したレプリカントのリーダー バッティーは超人的な力で
デッカードを絶対絶命まで追い詰める。
しかしなぜかバッティーは絶体絶命のデッカードを助けてしまう。なぜか?
劇中その事についての説明は一切有りませんが、私はこう解釈しました。
つまりバッティーは自分の寿命が尽きる事を悟り、全ての諦めが付いた訳です。
諦めが付いたからこそ、デッカードを助けた。
自分がいま死に行くが故に、バッティは命あるものの尊さを知ったのでしょう。
死の間際 降りしきる雨の中、バッティは諭す様にデッカードへ
自分が見てきた僅か数年の事柄を語ります。
その時、邪心の無くなった彼の肩には1羽の小鳥が止まりました。
そして彼が語り終え、こと切れた瞬間に大空へ羽ばたい行く。。。
涙無しには見られないシーンです。何度もこのシーンで泣いた人が多いのでは無いでしょうか。
ともかくSF映画の金字塔と言うには余りにもマニアックで、虚無に満ちている作品ですが
ラストにデッカードが完全人造体であるレイチェルと、恋に落ちエアカーで逃げて行くシーンで僅かに救われます。
人間とレプリカントの差異は無いのだ。と。