ピアニストのシネマレビュー、評価、クチコミ、感想です。

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ピアニスト

[ピアニスト]
THE PIANO TEACHER
(LA PIANISTE)
2001年オーストリア上映時間:131分
平均点:6.08 / 10(Review 92人) (点数分布表示)
ドラマラブストーリー音楽ものエロティック
新規登録(不明)【シネマレビュー管理人】さん
タイトル情報更新(2012-03-03)【ESPERANZA】さん
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監督ミヒャエル・ハネケ
キャストイザベル・ユペール(女優)
ブノワ・マジメル(男優)
アニー・ジラルド(女優)
スザンヌ・ローター(女優)
原作エルフリーデ・イェリネク
脚本ミヒャエル・ハネケ
撮影クリスティアン・ベルガー
製作総指揮イヴォン・クレン
クリスティーヌ・ゴズラン
ミヒャエル・カッツ
配給日本ヘラルド
字幕翻訳寺尾次郎
あらすじ
ウィーン音楽大学院の教授として音楽を教えるエリカ(イザベル・ユペール)は、抑圧された環境の中で育てられたために40歳を超えた今でも恋愛経験すらなく、音楽一筋で生きてきた。そんな彼女の前に美男子の男子生徒ワルターが現れエリカに好意を持つ。エリカは戸惑うが、ある日、ワルターに手紙をおくる。その手紙はSMプレイの欲求をつづった手紙だった─。ノーベル文学賞作家エルフリーデの自伝的な小説を映画化し、カンヌグランプリを受賞
ネタバレは禁止していませんので
未見の方は注意願います!
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【クチコミ・感想】

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92.《ネタバレ》 ずっと前、美保純が気に入った映画として紹介していた。どうでもいいけど、美保純。ハネケ作品の中ではメジャーな位置にある一品みたいだ。が、やっぱり私はハネケ映画に謎解きしか求めていない不埒な観客だった。「隠された記憶」に興味を持ったのはそういうことだ。 で、比較的メジャーとされる「ピアニスト」は、私の謎解き欲を全く満たしてくれなかった。 淡々とした日常動作を単調な演出で延々と見せる合間に突然衝撃的な場面を入れるとかいう手法はもう慣れてしまったし、「ピアニスト」では途中からエリカの妄想をそのまま流しているだけだし…それにしては、「どこからが妄想なのか」という推理もそれほどしたくはならない。面倒な気すらする。 ラストの発表会の日にエリカの顔が全く腫れていなかったことで、「妄想だよ」とハネケはバラすけれど、バラされて感心するようなオチではない。と私は思う。ここでウォルターが朗らかな態度を取ることで、手紙自体も渡されていなかったとわかるし、おそらくホールのトイレ場面から妄想なんだろう。どうでもいいけども。 で、ついでにいうと、自宅のバスルームでのカミソリ場面から母親の「まあやだ、気をつけてよ」については、変態性を強調するというよりはエリカが生理の無い女性であることをハネケが強調したかったのだと思う。生理が無い、未だかつて来たことがないのか、妊娠以外の理由で来なくなってしまったのかは不明だが、とにかく現在無月経。なので、自傷行為癖も兼ねて、「ちゃんとある」ということをわざと母親の目に触れるようにしたということだと思う。…ここにきて、映画という媒体にタブーはあるべきなのか、などと考える。エリカが月経のあるふりをしたい、というところを表現するのはいい。そのために自傷までしているという脚本でもいい。…が、それをしているところをあんなふうに見せるのは私は断固批判したい。あなたはしょせん男でしょう。女性に対して敬意を払うべき。と主張したい。この場面は女性を侮辱している、と私には感じられる。 ハネケについてはいろいろな評価があると思うが、「既存のもの(作品、表現)」に対するアンチという気負いが非常に強く感じられ、ショッキングな描写を売りにするのは本当に感心しない。残念だ。
パブロン中毒さん [CS・衛星(字幕)] 0点(2007-09-25 15:32:52)(良:3票)
91.《ネタバレ》 エリカは感情を麻痺させる術に長けている。他人を求め拒絶されることは恐怖だ。あらかじめその恐怖の芽を摘みとることで、彼女は孤独と引きかえに心の平穏と均衡を手に入れてきた。それは彼女なりの生きる智慧だ。ポルノショップで男たちの好奇の目に曝されること、ドライブインシアターでカーセックスに耽る恋人たちを窃視すること、彼女の秘密の二つの行為はどちらも視線を媒介する。見られる時、あるいは見る時、そこに生じるのは他者との距離だ。視線という距離を測ることで彼女は他者との隔たりを認識し、安心する。母親以外を隔絶して生きる彼女はまるで羊水に浮遊する胎児だ。けれどミヒャエル・ハネケはそんなエリカのぬるま湯のような無痛の孤独に、残酷な揺さぶりをかける。彼女の鉄壁を乗り越え迫るワルター。彼のその無邪気さは、常に茫とした第三者として世界に存在していたはずのエリカに、当事者としての甘美な実感を与えてしまう。あえなく氷解してしまった感情のままにたどたどしくワルターと向き合うエリカは、雛鳥のように無防備に愛を乞う。痛ましく無様なその姿と、やがて語られる赤裸々な被虐願望。それは隠し持つ己れの醜さすら曝け出した上で赦されたいという切実な愛の告白であり、罪深い彼女にとってのある種の告解だ。だが頑なな心を開いた彼女を残忍に待ちうけるのは、愛した者に拒まれ、切り捨てられる絶望だ。健やかな笑顔を見せ、他人事のように軽やかに去っていくワルター。それら出来事のすべてが彼女の妄想であれ現実であれ、重要なのはその痛みを前にしたエリカが、麻酔も鎧も、身を護るその一切を失っているということだ。母との蜜月を断ち切り、産道を抜け、血まみれで産み落とされた彼女はもうぬるま湯に逃げ帰ることはできない。胸に突き立てたナイフは、鋭い痛みの実感を彼女に与える。その表情によぎる誤魔化しきれぬ苦悶。エリカは血を流す生身の体で再び、貫くような孤独の痛みの中を、ひたすらに歩いて行く。この不愉快な映画はまさにエリカの持つ尖鋭なその刃の切っ先だ。ハネケの見せつける本物の痛みを前に、私はその不愉快を滑稽と嗤い飛ばす。けれどそれはエリカを庇護し続けた偽りの麻酔とどこが違うのか。ハンドバッグの中に包み隠されたそのナイフを、私もまた確実に持っている。ハネケは言うだろう。ナイフを突き立てろ、そしてその痛みから目を逸らすなと。
BOWWOWさん [DVD(字幕)] 9点(2009-11-03 18:00:27)(良:2票)
90.「妄想女のイタイお話」と言ってしまえばそれまでなのだけれど、この映画は、そんな一言じゃ済まされない、もの凄い映画です。なにが凄いのか、というと、まず、その性描写。これは、日本人が日本人で撮ったら安っぽいポルノになる可能性大の、めちゃめちゃリアルな描写です。なのに、見ていてもちっとも「感じない」。むしろ、眉間に皺が寄ってきて、かろうじて目を背けずに見ているのが精一杯。さらに凄いのがブノワ・マジメルの見ているものが引いてしまうほどの演技。この役を演じるのは、大変なエネルギーと想像力を要するはずなのに、若い彼はそれをこなしてしまった! そして最後の凄いは、イザベル・ユペールの演技力。無表情なのに、エリカの心の叫びの聞こえてくる迫真の演技は、鳥肌が立つほど。本当に仮面のように表情は変わらないのに、なぜこうもエリカの気持ちが伝わってくるのだろうか。とにかく、最初から最後まで「すごい、スゴイ、凄い」の連発。でも、一番の「凄い」は、ここまで人間の醜さ、哀しさ、滑稽さを、容赦なく残酷なまでに、果ては思わず笑いが起きるほどまでに描写し切ったハネケの力量なんでしょう。魂を揺さぶられる、と言っても大げさではない、大変な映画です。
すねこすりさん [映画館(字幕)] 9点(2007-09-19 17:31:47)(良:2票)
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89.主人公は、ものすごーくイタくて、滑稽で、コミニュケーションのど下手くそな人。悪い意味でオタクっぽくて、おそらくは人間関係の基本というものがわかっていなくて、ろくな友達も恋人もおらず、ポルノに耽溺して変態的な妄想をすることで生きている。日本人にも多そうなタイプ。    美男子に言い寄られて大チャンスなのに、最初は戸惑いのあまり拒絶して、相手が離れていくと一気に怖くなってすがりつく。人との距離の取り方が、全然なってない。イタいイタい。ほんとに痛い。    でもすっごく可哀そうでもある。現実の悲劇というものは大抵の小説や映画よりもかっこ悪くて、醜悪で、どうしようもなくまぬけだったりするものだ。同情する以前に引いてしまうような、心の歪み。ある種の人間は本当に辛いことがあると、幸福な人間には想像もつかないような変てこな方向に行ってしまう。まともに愛されたことのないゆえに心が崩れ、他人に嫌われ、そしてかえって愛されたいという願いばかりが膨らんでいき、さらにバランスを崩していく。    これが『電車男』なら、オタクが更生(?)してめでたしめでたし、というハッピーエンドだったけど、ミヒャエル・ハネケはそんな甘い結末を用意しない。もっとも幸福なオタクの人生が『電車男』にあるとしたら、もっとも不幸なオタクの人生がこの映画だ。  そして残念なことに、不幸な物語の方が現実には多いだろう。だって正直な話、こういう人が周りにいたら、自分でも敬遠するんじゃないかと思う(恋愛対象としても友達としても)。彼女のような人間を愛してくれる誰かが、この世に存在するんだろうか?    そしてまったく救われないラスト。変に聞こえるかもしれないが、自分はこの結末に監督の優しさを観たような気がした。だって、これが現実なんだもの。どこにでも孤独に苦しんでいる変人はいる。彼らが苦しんでいても普通の人々は見て見ぬふりをするか、バカにするだけで、手を差し伸べたりはしない。彼らはけっして救われない。監督はそんな彼らの苦しみを本当に理解している。    そして見て見ぬふりを決め込んでいるわれわれに、これでもかとばかりに見せ付ける――「お前ら、目を背けてんじゃねえぞ」、と。彼女のような人間と、彼女を侮蔑するか拒絶するかしかしない普通の人々。本当に醜いのはどちらなのか?
no oneさん [映画館(字幕)] 9点(2004-02-24 02:30:13)(良:2票)
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88.《ネタバレ》 この先どうなるんだろ?って、緊張しながら見ていた。 だけど、ショッキングなシーンが多い割に、ストーリー的には大して衝撃は受けなかった。 女の方は最後ひどい事をされたが、希望通りのはずなのに全く嬉しそうにしていない。 男の方は女の変態さに嫌悪したと言っておきながら、その変態的な行為をする。 二人のこの心理を理解できなかった。 色んな意味で消化不良。  (追記) 他の方のレビューを拝読して少し理解できました。 なるほど、あの母親がキーなんですね。 母親と同じベッドで寝ている。過剰に娘に干渉する。人生がピアノだけ。 鬱屈した人生を歩んできた女性が、不器用にも自分の精神を解放しようとする。 自分の理解力不足、感受性が不足しておりました。
にじばぶさん [インターネット(字幕)] 6点(2022-10-05 19:26:19)(良:1票)
87.《ネタバレ》 対人距離設定不全症とでも言うのか。ヒロインは道で男にぶつかると、その触れた肩を神経質に何度も払う。でもポルノショップに堂々と入っていって、集中してくる男の視線には何ともない。覗く人でありながら、見られることには全然平気。固い殻を持っているからなのか。「私には感情がないの、あるとしても知性がまさっているの」って人。彼女がいかに孤独を完成させたか、って話だ。この題材だったらコメディにしたほうが楽だっただろうが、それをギリギリの悲劇にしたことを、この作品に関しては褒めねばならない。笑ってしまえば、変わり者で終わってしまう話だ。でも、心臓から血を流しながらウィーンの町を毅然と歩いていくラストで、彼女は、誰でも落ち込み得る罠に正面から対決した悲劇の英雄以外の何者でもなくなる。シューベルトのピアノ曲の妖しさが生きた。十二音音楽のシェーンベルクを弾けばミスタッチが分からない、ってのがおかしい。
なんのかんのさん [映画館(字幕)] 8点(2008-06-25 12:13:05)(良:1票)
86.《ネタバレ》 エリカ先生がバスルームでカミソリ握りしめて・・・・のシーンは、「痛い、痛い、痛い!やめとくれやすーーーー!!」と叫んでしまいました。画面上の人物がなにをやらかすのかわからないのが「ハネケ流」なので油断大敵ですね。個室ビデオのエリカ先生、お車で見る映画館でのエリカ先生・・・エリカ先生の超ド変態プレイの数々は、どこかもの悲しさも手伝い、痛々しいですね。
ふぉんださん [DVD(吹替)] 6点(2007-11-08 20:00:37)(良:1票)
85.《ネタバレ》 母親の精神的完全管理の下、ピアニストとしてのみ生きて来た女はピアニストに必要なもの意外を受け入れる器を持たない。歳をとっても女として成熟していない。未熟な女が性欲を満たすために行う行動の一つ一つが男の性欲を満たすための行動となるのが面白い。つまり男は成熟しても性欲に対しては未熟なままということなのだ。なるほど、そうかもしれない。 異性への興味はあるものの、それを受け入れる器もないから認めたくもない。そこに突然表れる男。不器用を通り越した異常な愛の形。本当に縛られたいわけじゃない。本当に殴られたいわけじゃない。でも何をすべきか、何をしてほしくないのか、それさえも分からない。観ていて悲しすぎる。それでもハネケは手を緩めない。ラストであんな表情をさせるなんて、、、ハネケは鬼です。それにしても、これは小説ですね。ハネケは映画で小説を作ってます。
R&Aさん [DVD(字幕)] 6点(2007-06-27 13:59:04)(良:1票)
84.《ネタバレ》 ・・・・痛い。説明はできないが、最後のエリカの顔が全てを語っているのでは。人は様々な局面で自分の人生を選び取るけど、それとは別にあがなえない宿命もある。母親との泥にまみれるような確執がある女性、または母性の裏の顔・その底知れぬ闇・全てを飲み込む恐怖というのを肌身で感じて生きてきた女性にはかなり痛い作品だと思う。キツイ。キツすぎます。もう見たくない。
タマクロさん [DVD(字幕)] 9点(2006-01-16 18:49:29)(良:1票)
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83.《ネタバレ》 地味で目立たない女主人公。化粧っけもなし。おしゃれもなし。恋人もなし。でもいいの!私にはピアノがあるから!突然現れた美少年。相手からの猛烈な好き好き攻撃。何この人!私のことからかってるの?やめて!男の人に期待して傷つくのはもう嫌なの・・・。どうして君は自分に素直になれないの?(かくかくしかじか)大丈夫。僕は君のことを傷つけたりしない。僕を信じて。・・・そんな少女漫画的な映画だと思っていた、ら・・・。(注意:上のレビューは少女漫画が好きな私の創作です)狼に育てられた少女がその後人間に保護されても生活に馴染めないのと同じようなものなのか。小さい頃からピアノ一色で、恋愛もせず友達もおらず(いなさそう)しかもあんな厳格なお母さんに育てられたらそりゃ歪むわ。モデルにする人間がいないんだもん。オチは、現実は少女漫画のようにはいかんって感じました。面白かったです。 
キュウリと蜂蜜さん 9点(2004-10-09 11:56:24)(笑:1票)
82.《ネタバレ》 主人公エリカの、苦みばしったような表情が忘れられない。人生のほとんどをピアノに費やし、威圧的な母と同じベッドで眠るオールドミスの女性。この映画の母子関係に自分を重ね合わせた女性は少なくないと思う。「愛」がよく解らないのに、突然光がさすように現れた青年から真っ直ぐな愛情を受け、どうしていいかわからずにいる。彼女がとる行動の一つ一つが痛々しく、思わず「止めなよ」「だめだよ」と声をかけてしまう。ラストシーンもすごかった。遠くの回転ドアから、ワルターがいつ入ってくるかジット息を呑んで見入ってしまった。ここまで感情移入してしまうのは、この映画がすごい力を持っているからだと思う。この映画を見て、私の心の中の何かが動きました。確実に。
のはらさん 10点(2003-12-27 23:22:59)(良:1票)
81.切ないでつ。途中何度もDVD止めちゃいました。性的嗜好が異常っていうより、これは傷ついた心の悲鳴みたいに感じたでつ。逃げ場になるはずの母親は娘を見ていない。内面を理解しようとしてない。だから無表情な仮面で内面的に幼い自分を守る。そう、あたしにはエリカが少女のように幼くみえたのでした。ホッケーのクラブハウスのシーンなんて特に。幼いから不器用。恋愛でも直球勝負。剛速球すぎまつ。てゆうかもっと駆け引きしろよ~。エリカがっついてるぞ~。でもそれはセク~スにがっついてるんじゃない。心のつながりが欲しかった。受け止めてほしかったんじゃないかな。そう思ったの。と、今回ものめりこんでいるわたくし。
ごりちんですさん 9点(2003-08-08 00:48:23)(良:1票)
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80.《ネタバレ》 少し珍しい、女性の変態性欲者を描いたエロティックな一作。とは言え、この物語の本質の部分は、とある理由から精神面に歪みを生じた一人の女性の悲劇的な顛末を描いた作品という点であり、その歪みが主に性的な方面に現れているというだけで、決して性的倒錯を直接的に描くことが主題の作品ではないと思う。  しかし、上品なフランスマダムそのものなイザベル・ユペールの佇まいと彩り豊かなクラシックが奏でる瀟洒な雰囲気の中に、突如として割り込んでくる倒錯的な性描写の衝撃度は、一瞬ふと「意味が分からない」レベルに極めて高く、本作に特大の「凄み」を与えることに十二分に成功している。また、このような性描写の生々しさを(倫理コード的に)可能な限り引き出しつつも、もう一方の側面である文芸映画としての知的な雰囲気をギリギリ損なわない非常に高度なバランスが保たれている点には、監督の繊細なセンスと流石と言うべき演出の腕前を大いに感じ取れる。  そして同時に、この繊細かつ鮮烈な演出を見事に成立させているイザベル・ユペールの鬼気迫る演技(と前述の素晴らしく品格の有るオーラ)は、私が知る中でも最高の仕事の一つと言ってよい。文芸映画らしい雰囲気を残しながらも比較的分り易い仕上りに加え、奇妙で複雑な一人の人間を描いた非常に劇的なドラマ映画としても十分に興味深く観ることが出来る。決して万人向けでは無いが、人を選んで是非お勧めしたい一品。
Yuki2Invyさん [DVD(字幕)] 9点(2019-11-15 23:21:35)
79.2017.05/30 BS鑑賞。全く理解不能。余りにアブノーマル過ぎ理解を超える。その気がある人が多いのかなあ。
ご自由さんさん [CS・衛星(字幕)] 5点(2017-05-30 19:50:11)
78.《ネタバレ》 シングルマザーの承認欲求のために人生の全てをピアノに注ぎ込み、それに応えることができなかったエリカはピアノ以外に外の世界を知らない。子供の頃に抑圧された欲求が歪んだ形で浮上してきたアダルトチルドレンだ。自傷行為もまた、果てしなく自己肯定感の低いことの裏返し。しかし、彼女は悲劇のヒロインとして酔っているだけだ、とハネケは容赦なく切り捨てる。理想に思えたSMプレイは、現実では甘ったるい自分の自尊心と妄想を破壊させるには十分で、依存していたワルターに否定されることによって、エリカは自分を刺し、ピアノも母親も何もかもを捨てて夜の街に消えていく。絶望して自殺したかもしれないし、現実を受け入れて新しい人生のスタートを切ったかもしれない。見栄のために子供の代理戦争に駆り立てる親は失敗したときその責任を負えるだろうか。満たされづらくなった現代の承認欲求の病理とエゴイズムを的確に貫く。何もしないくせに他人に対して、「私を満足させて」と構ってくる地点で間違っているんだよね。
Cinecdockeさん [DVD(字幕)] 6点(2015-08-20 19:53:20)
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77.《ネタバレ》 母親支配の怖ろしきこと。冒頭からいきなりモンスター・マザーが娘を蹂躙する描写からスタートし、不穏な空気がぷんぷん、ハネケ節全開だ。後悔先に立たず。観始めてしまうと、不吉な磁場に引きずられるように、この異常な話に最後まで付き合わされてしまう。 エリカは母親に精神支配されているステージ3くらいの疾患だ。反発した後で「お母さんを傷つけてしまった。申し訳ない」と幼女のように泣く。DVのせいで相手に依存症になってしまっている。そのひずみが性に向かう。経験の無さが彼女のコンプレックスだから。質の悪いポルノや覗きだけで頭でっかちになってる似非SM趣味のエリカ。M嗜好なのは母親を傷つけたいから。真のMじゃないので、ワルターに暴力を振るわれると一気に萎縮する。悦ぶどころではない。 ワルター。おそらく人生で拒否などされたことなど無いであろう容姿も育ちも申し分ない坊ちゃん。同世代のガールフレンドとはこれまで飽きるほど付き合ってきて、変り種のエリカは知的で格上の女性に思えたのだろう。だけど彼の手に負える物件じゃなかった。 エリカもワルターも互いに「私の言うとおりにして」「僕に優しくしてくれ」と要求するばかり。暴力に嫌悪を示していたワルターが、エリカの発する毒々しい気に呑まれて、手を上げ強姦におよぶ場面は映画史上グロトップ3には入るだろう。 ついには自らを切りつけるエリカ。もっと何年も前にその刃は母親に向けるべきだったのだ。あくまで彼女の心の中でだが。 その場で崩れ落ちるのでなく、外へ歩き出るラストは私にとっては不可解だ。エリカが死んだのかどうか明らかにしないとはハネケは何がしたいのか。この上エリカに生を与えるつもりなのか。 哀しい中年女を虐めているだけにもみえるこの映画。監督てのは作中の人物にとって神たる立場だろう。少しは愛をかけたっていいんじゃないのか。 ダンサー・イン・ザ・ダーク以来だこんなに点をつけづらいのは。
tottokoさん [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-03-13 00:39:05)
76.観客への嫌がらせの様な陰湿な映画を撮る事で定評のあるミヒャエル・ハネケ監督の2001年作。粗筋的には倒錯した性癖を持つ中年女性のピアノ講師と若い男子生徒との歪みまくったラブストーリーである訳だが、爽快な見せ場など皆無の所謂アンチカタルシスな映画なのに何かとんでもなくヤバいものを見たかの様な余韻が残る。主人公が異常な性向を持つに至った背景は劇中でそれとなく示唆されるものの過度に説明的な描写がある訳ではなく、断片的なヒントだけが羅列されて最後はほぼ投げっ放しのままで終わるという実に見事な“ハネケ節”が炸裂している。序盤は半笑いで見ていられる主人公の変態っぷりも途中から笑えなくなって終盤にかけて息が詰まりそうになるのは、誰もが内に秘める《他者と関わる上での根源的な不安感》を本作が白日の下に暴き出しているからなのかもしれない。私には「おめーらが心から誰かに理解される訳ねーだろバーカwww」という監督の高笑いが聞こえてきた様な気がした。
オルタナ野郎さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-01-12 04:57:22)
75.3回観てはじめて、これは母と娘の物語だ…と思いました。根が深いです…。
トトットさん [DVD(字幕)] 9点(2014-11-19 08:50:07)
74.《ネタバレ》 皆さんのレビュー読んでなるほどなるほど。妄想って思うとまた解釈変わりますね。でもラストでは顔に殴りアザあったしなぁ。率直な感想としては、SMや痴漢などの行為にハマる人は堅い仕事や世間体を気にする方が多いと何かで読んだり見たりしていたので、エリカもそういうパターンなのかなぁ、なんて簡単に考えてしまった。母親に依存されて可哀想な人も身近にいますので、想像も少ししやすかった。精神のバランスの振り幅が半端ない&ド変態なエリカは、間違いなくお医者さんに行った方がいいけれど、ラストが一番正気に近かったのかもな。でもこんな人達は貴方の側にもいるんですよ、なんて想像させる安定のハネケ作品でした。
movie海馬さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2014-10-01 02:58:26)
73.《ネタバレ》 「私は音楽一筋で生きてきたわ。覚えておいて、私には感情も欲望もないの。あるとしても、必ず最後は知性が勝る」――。保守的で厳格な母親と2人で暮らし、ほとんど恋愛経験もないまま、これまでずっと独身を通して生きてきた40過ぎの生真面目な音楽教師エリカ。それでも抑えきれない性欲を満足させるため、一人で個室ビデオ店でポルノを鑑賞したり、他人のカーセックスを覗き見ながら放尿したりという、誰も知らない秘密の顔を隠し持っていた。そんな空しい日々を過ごすエリカの元にある日、情熱的な青年ワルターがわざわざ自分にピアノが習いたいと申し出るのだった。いかにも軽佻浮薄な現代の若者といった彼に最初は反発を覚えた彼女だったが、授業を進めていくうちに突然愛の告白をされてしまう。あまりのことに戸惑いを隠せないエリカ。そのことをきっかけに、エリカの心の奥底に溜め込んだ暗い澱のような感情と欲望が徐々に暴走しはじめるのだった……。恋愛にもセックスにも、まして男にもなれていない、そんな誇り高き中年女性エリカの愛と性欲とプライドがいびつに交錯する、いかにもミヒャエル・ハネケ監督らしい歪んだラブストーリー。この監督の作品は何作か観てきて、その人間の酷い感情や欲望、理不尽な暴力を圧倒的な負のエネルギーで映像化する作風には心底うんざりさせられることもしばしばだけど、それでもその高い芸術性は認めざるをえないので、カンヌで初のグランプリを取ったという本作を今回鑑賞してみました。うん、相変わらず鬱ですね~~。もう最後まで絶対に人に見られたくないような自分の恥部を、これでもかこれでもかと見せ付けてくるような暗鬱極まりない作品でございました。愛する青年のモノを欲望のままに咥えたものの馴れていないせいで思わず吐いちゃったエリカが、怒った青年に「お前、口が臭いんだよ!」と追い出されふらふらになりながら歩いて去るシーンなんて、あまりにも鬱過ぎて見てるこっちが吐きそうです(笑)。人間なんて芸術だなんだと言いながら、一皮向けば誰しもこんなもの……、なんという絶望的でシニカルな思想に貫かれた映画なのだろう。それでも、最後にエリカの取った行動には、微かだけど(本当に本当に微かだけど!笑)感情よりも知性が勝った人間の高尚な姿を見たような気がします。
かたゆきさん [DVD(字幕)] 7点(2014-07-15 21:27:51)
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【点数情報】

Review人数 92人
平均点数 6.08点
033.26%
144.35%
222.17%
333.26%
499.78%
51213.04%
61415.22%
71920.65%
899.78%
91314.13%
1044.35%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 7.20点 Review5人
2 ストーリー評価 7.00点 Review4人
3 鑑賞後の後味 4.20点 Review5人
4 音楽評価 5.75点 Review4人
5 感泣評価 4.25点 Review4人
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