11.蛍、昼の月、水藻などのアワアワした世界が広がっている。作中の言葉を使えば「道楽」の世界。「本来の仕事を忘れてそれ以外のことにふけり楽しむ」ときの心のゆとりというか、合いの手を入れるオルゴールの音や花火の音が、それこそ「道楽」の雰囲気でした。ハッと気を取り直すようで、またそこに没入していってしまう。自分は愛されていないと思いたがっている人たちの物語で、愛されるのが怖いというか、他人の心をおもんぱかることの傲慢さを自ら封じてしまってるというか、みんなの思いがそれぞれ孤立して、流れ出さず淀んでいる町。頽廃への傾倒、意志のなさ、行為に対する不信、というより面倒くささか。舟で見る歌舞伎の遠景のシーンの、古い記憶のような懐かしさ。全体のトーンからすると、ちょっとクサいところはあって、根岸季衣が顔をピクピクしたり、ラストの三郎君の叫びとかありますけど、それらが目立つほど全体のトーンはいいの。ラストの「列車の窓から」を除いて風景が広がらないのもいい。もう二度とこの夏を繰り返すことができない取り返しのつかなさが、大林監督のモチーフだな。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 9点(2012-12-17 09:58:16) (良:1票) |
《改行表示》10.《ネタバレ》 大林監督が、日本を舞台にして、あの名作「旅情」に挑む。 向こうがベニスなら、こっちは柳川だ! まさに甲乙つけがたい決闘であった。 どっちの作品も良い。 ささやかな心の交流を大事にする日本的な心情。 それが姉夫婦のズレに響くとき、東京からお坊ちゃんがやってくる。 柳川の堀の水の音の中、女性の泣く声。 果たしてあのすすり泣きは誰であったか? サスペンス的に話を引っ張る大林監督の話術の見事さ。 夏の終わりとともに思い出は消え・・なかったんですねぇ(笑) 最後の船頭の尾身くんの一言で、廃市はまた新たな活力を引き寄せることになるのです。 素晴らしい!傑作! 【トント】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2020-04-04 23:12:51) |
《改行表示》9.静かな映画で死のイメージが付きまとってますが、舞台となっている柳川の夜の雰囲気や堀の流れや音等、映像は美しかったです。 本作の小林聡美は他作によくみられる快活な性格ではなく、髪もロングでやや淑やかな感じで良かったです。 ストーリーも劇的というよりは淡々とひと夏の出来事を綴っており、何がよいのか自分でもよくわからないのですが不思議と惹かれる作品です。 【クリプトポネ】さん [DVD(邦画)] 8点(2017-08-17 20:34:41) |
8.《ネタバレ》 20年以上前になるが、柳川には行ったことがある。ちょうどこの映画が作られた頃だ。一人旅の途中で立ち寄り、掘割の川下りは経験した。そのときは長閑ないいところと思った。タイトルに云うところの廃市。変化が無く、退廃的で、死に向かっているところ、というようなことを言っていた。過疎化とまでは言わないが、発展する兆しが見えないということか、観光資源に頼っている先行き不安みたいなものなのか…。 その土地柄と、今作の複雑な恋愛関係が直接関係しているとは思わないけど、停滞感や抜け道がない感じがシンクロして情感を増幅していたとは思う。監督も決してこの土地のことを悪く言いたい訳ではなく、むしろ今作のような、繊細な関係が似合う場所という捕らえ方なのでしょう。文学的な土地ってことですね。姉妹の愛情の板ばさみで、33歳で自殺した男も凄く文学的です。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2009-01-08 01:47:57) |
7.大林宣彦監督作品の中では比較的、地味でいまひとつ知名度も少ない作品だと思うけど、大林宣彦監督らしく品の良さと落ち着きのある作品になっている。大林宣彦監督独自の映像美、柳川の雰囲気が上手く描かれている。いかにも日本て感じの雰囲気が作品全体を包み込む辺りは大林宣彦監督ならではです。尾道シリーズに比べると笑いが無い分、退屈に感じる部分もあるけど、けして、つまらない作品ではないし、観て損のない作品になっている。それと大林宣彦監督の優しい言葉でのナレーションも印象に残る。 【青観】さん [DVD(邦画)] 7点(2007-07-07 18:14:21) |
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6.柳川には数回行ったことがあるし、川下りの船にも乗ったけれど、夏の川(掘割り)の澱んだような雰囲気はこの映画には乏しいです。原作の廃市は静かに廃れていく世界であって腐っていくのとは違うのだけれど、この映画では腐臭みたいなものが感じられる。最後の場面で船頭の少年がその印象に抗議するようにして訴えるところがあるけれど、そうでなければ撮影に協力した地元の立場がなくなったかも知れない。時代は昭和30年代の中ほどあたり(主人公の服装とかから)に設定されているようだけれど、実際の柳川は当時から福岡市の中心からの西鉄の特急が頻繁に通う街です。 【たいほう】さん 5点(2004-12-30 23:47:03) |
5.《ネタバレ》 この映画の舞台となっている柳川の描写は、抒情的で素晴らしい。水の流れる音が絶えない街に自分も行ってみたくなった。しかし、如何せんストーリーが暗い。タイトルからして暗すぎる。「結局滅び行く運命」とあきらめの境地に達した登場人物が多すぎる。それだけに日本映画らしいが・・・もっと、気楽に、楽しく行こうやというのが自分のポリシーなので、正直歯痒かった。 【mhiro】さん 4点(2004-07-10 15:38:47) |
4.小林聡美の「静」の演技が良かったのですが、話としては他愛ない色恋沙汰ではありますね。でも、それを町の止まった時間、そのまま周りの時の流れに取り残され、徐々に崩れてゆく町に重ねる事で、感傷的な雰囲気を持った、味わいのある映画になっていました。16ミリ撮影ゆえの「時を経たような画像」も効果的だったと思います。もっともこの映画の最大の功労者は、現実の世界でこの町・柳川を作り、守ってきた人々ですね。 【あにやん🌈】さん [映画館(邦画)] 7点(2003-12-17 12:49:28) |
3.滅び行こうとしている町で主人公が過ごすひと夏の経験を描く映画を、秋に撮ってはいけません。真夏の風情が全然感じられない。手を抜いた大林監督の驕りが不愉快。それからことごとく外しているキャスティングにいたっては、いうべき言葉もない。ジェームズ三木の息子はいわずもがな、峰岸徹に繊細さと退廃の気を求めようとするのは土台無理というものである。尾美としのりも、ここでは学芸会レベルの演技を一歩も出ていない。 【アチオ】さん 2点(2002-09-24 11:19:33) |
2.柳川のひなびた感じがよく出ています。なんだか物寂しくて、でももう1度見たくなってしまう映画。原作の雰囲気を少しも損なわずに作られている映画で大林監督の作者福永さんへの思いが感じられます。 【湯の花直子】さん 8点(2002-09-14 22:19:58) |
1.約2週間で撮り終えたと言う作品。原作の作風をかなり意識していたのか大林監督作品としては異色で落ち着いた雰囲気を醸し出していました。柳川の静かで時間の歯車が止まってしまった町の悲しく切ないストーリーでした。大林監督本人の語りの中々よかったです。ただこの作風の時間軸に乗れない人は少し眠気を誘うかもしれませんね。 【さかQ】さん 6点(2002-05-28 03:35:08) |