《改行表示》 4.《ネタバレ》 これほどまでに美しいモノクロ映像は滅多に出会えない。 1960年代だからこその完成されたモノクロ映像と自然な美しさ。 そしてそういった技術的な意味だけでなく、本作の寓話的でどこか現世離れした雰囲気が、本作をより一層、神秘的な美しさへと押し上げている。 主演の女優は当時17歳であったらしいが、単なる美人ということではなく、儚げで世を憂うような不思議な魅力を発揮している。 薄幸の美人、いや、少女というか感じだろうか。 カメラは執拗なまでに少女のスラリとした脚を映し出す。 これが何ともエロティック。 そんな映像を見せ付けられていると、見てはいけないものをじっと見せられている感じがしてきて、なんか気まずくなってくる。 しかし、じっと見てしまう。 眼が釘付けになる。 画面いっぱいに発散される厳粛な雰囲気、そして、少女の危うい魅力。 ブレッソンのカトリック的な表現手腕が遺憾なく発揮されている。 少女の可愛がるロバも、また印象的。 特に最後の息を引き取るシーン。 なんとも切ない。 涙が出そうだ。 欧州独特の優美な雰囲気が画面に現れ、そこにカトリック的な厳粛さと悲劇、人間が持つ残忍性、そして何より少女の肢体が放つ自然の美たるものが複雑に絡み合い、本作を奏で上げている。 本作はそういう意味で、完成された総合芸術品だといえるだろう。 とにかく何度も観てみたいと思わせる、息をのむ美しさを持つ作品である。 【にじばぶ】さん [DVD(字幕)] 9点(2008-10-25 13:20:01) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 ロバの視点から、次々と現れては消えていく人間たちの愚かさや残酷さを描いています。己の欲望が満たされることばかり考える人間たちは、何も言わないロバを甚振り、いいように扱います。その姿を見ていると、腹立たしくなり、自分自身も同じ人間かと思うと、悔しくなります。ロバの目は、どんなに酷い扱いをされようとも無表情で変わりなく人間たちを見つめます。どことなく人間を哀れむようにも見え、また罪深き人間たちを赦しているかのようにも見えます。どうとも取れるロバの眼差しに、様々な考えがよぎりました。悲しいのだろうか。苦しいのだろうか。あるいは憎いのだろうか。言葉にすることなどできないロバの感情を、ある意味描いている作品。人間は人間でしかないが、あのロバの眼差しを見ると、そこにいるのは宗教的な赦しにも思えてくる。とにかく、凄い作品。 【ボビー】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2008-08-13 18:38:51) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 人間の「罪」を見つめながら最後は羊の群れの中で生涯を閉じるロバの姿に、殉教したキリストの姿が重なり静かな感動を覚える。人間と言うものは元来「性悪説」的な生き物だけど、だからこそその中で行う「善意」の行動に胸打たれるのだ、と思う。このロバもそんな愚かしい人の行動を見据えつつ、その罪を背負い人間の持つ「愛」(としか説明できん)の可能性に殉じたのではないか、という感想をもちました。ただこの映画、非常に厳しい。またキリスト教徒でない私には本当の意味をわかってないかもしれません。よってこの点数。 【Nbu2】さん [映画館(字幕)] 9点(2007-02-11 18:13:54) (良:1票) |
1.乾いてると思えるほど何の感情も感じさせない淡々とした撮影が、最後に捉えたロバ(僕の事ではありません)のバルタザールの瞳をとても情感深く映していたように思えたとき、清々しいほどの突き抜けた虚無感を感じました。功罪や愛憎なんてものですら、人間のちんけな部分のエゴにすぎないのかもしれません。観終わった後しばらくは爽やかに鬱生活を送れる方が多いと思います。 【ロバちゃん】さん 8点(2002-10-16 21:11:33) (良:1票) |