《改行表示》28.《ネタバレ》 スタンリー・クレイマーは「渚にて」や「真昼の決闘(フレッド・ジンネマン)」がダメだったけど、この映画はとても見応えがあって面白かった。 冒頭でナチスのマークを吹き飛ばすシーン!ここからもクレイマーの凸精神?を感じられる。 物語はナチスの首脳陣を裁いた後、残った法律学者やナチスと関わった複数の人間の関与する占領した側と占領された側の法廷“闘争”。連合国にとっての残党狩り、ナチスいやドイツ人にとっての最後の抵抗戦。 アーネスト・ラズロのカメラは短いショットを繋げた映像で法廷特有の緊張感を生み、退屈を感じさせない。 でも、360度パンはちょっとクドいと思った。 同じく密室劇の傑作「十二人の怒れる男」が面白いのも、ボリス・カウフマンのカメラが退屈を感じさせないショットだったからだろう。 ドイツ本来の法を捻じ曲げて国民を苦しめた罪、だがそれを防げず逆に服従を選んだドイツ国民にも罪があるという意見のぶつけ合い。 その理由となる「ホロコースト」の惨状をドイツ国民も、ナチスの人も“心”に焼き付いているからだ。 ホロコーストの映像は人間の眼、耳、そして魂に訴えかける。 それに顔の表情の細かい変化や夕食のジョッキから法廷のハンマーへと繋がる演出、終身刑を言い渡される時に銃声のように響くハンマーが印象的だった。 リチャード・ウィドマークの、マクシミリアン・シェルの、そしてバート・ランカスターの叫び、叫び、叫び。 まるでヒトラーが演説するように時にはオーバーな叫びをあげてまくしたてるシェルの様子は恐怖すら感じさせる。 あっと言う間に過ぎ去っていく時間は3時間という長さを感じなかった。傑作です。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-11-09 22:10:34) (良:2票) |
《改行表示》27.《ネタバレ》 一寸の隙も無く全編を貫く緊張感、法廷劇として完璧と思います。私は「戦勝国が敗戦国を裁く」ことに異議を覚えるのですが、そんな個人的な歴史観を差し引いても、論戦の火花散る展開は見ごたえがありました。 なにしろ、判事、検察、弁護人それぞれの放つ論旨がみな言葉に重みがあって圧がすごいのです。おまけに被告とされる側までが元判事という、論戦の迷宮のような高度なやり取りが繰り広げられる。口角泡飛ばして絶叫調のマクシミリアン弁護士が、異様なまでに熱を帯びてます。元判事を裁くとは即ち、ドイツ国民全員を裁くのか。かつてヒトラーを称賛してみせたチャーチルに非は無いのか。証人への個人攻撃ともとれる激しさを増す弁護士を制するように、ついに口を開くランカスター演じる元判事の訥々とした告白はさらに深かった。この裁判そのものを否定していたヤニング元判事、彼は自らを有罪と認めます。ユダヤ人に対するナチスの行為を知らなかったとするのは無理がある。我々には目も耳も無いのか、と。法に則り、職務を遂行した徳の高い元判事の苦しげな目、バート・ランカスターも見事なら、アメリカ人判事のS・トレイシーもまた激渋。ナチ高官の妻、マレーネ・ディートリッヒは妖しく危うい存在感を放つし、J・ガーランドの必死の抗弁は痛々しい。名優らの重厚な演技にすっかり圧倒されて、くらくらしました。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2018-06-04 00:13:46) (良:1票) |
26.《ネタバレ》 バート・ランカスターって僕は『かサンドラ・クロス』くらいしか印象なくて、いろんな作品に出て有名だけどあまり存在感ある役者だとは思ってなかったんですが、この作品での寡黙ながらじっと見据えるような底力に印象を強く残しました。彼が裁判で演説してから釘付けでした。ヒトラーがなぜ持ち上げられて行ったかを語る下りは静かに恐ろしさを感じました。その後のロルフ弁護士の演説も、世界がいかに目をつぶってきたかを問う内容に寒気がしました。これが一番の山場と思っていたら、「ドイツ国民の力が必要だ」「大切なのは生き延びることだろ」と抗議される検事のエピソードも重い。「刑法の原則とはどの文明社会でも共通しています」のあとに語られ「何のための生存か?」と流れていく裁判長の弁は厳か。「世界中の人々に記憶してもらいたい、この法廷が必要だと思うのは…正義、真実そして…」三つ目に示される答えに重みが増す。判決が出てからも映画は終わらず、長い余韻の最後の最後にグサっと突き刺さる言葉。うーむ、考えさせられます。たとえ「みんなバカばっかし!」と思ったとしても、そのバカが社会の主流を作っているなら、自分もその流れの中で少なくとも逆らわずにいた方が生きやすいと思っている僕は、正義と生きやすさが比例しないから難しい。けれど、駆け引きだの場の空気だのに振り回されてグラついたりしない検事と裁判長に憧れるし、あんな風に生きられる自信が欲しいなと思う。 ところで、最期に残った疑問…『どの文明社会でも共通する刑法の原則』とやら「殺人を行わせたる者」ってのは戦争での殺しは原則外なんでしょうか? 戦争することが許される社会においての『人間の命の重さ』ってどういうものなんだろう? 【だみお】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-11-29 01:19:28) (良:1票) |
25.《ネタバレ》 これは何もかもが素晴らしいと言わざるを得ません。三時間という長さをものともさせない息詰まる展開。緊迫感溢れる一方で、主演のスペンサー・トレイシーの人柄の良さも感じさせる。バート・ランカスターの威厳に満ちた演技、リチャード・ウィドマークとマクシミリアン・シェルの対決、そして華のあるマレーネ・ディートリッヒ。その他証人役として登場するジュディ・ガーランドやモンゴメリー・クリフトも、出演シーンが僅かながら流石名優というだけあって強烈な存在感を放っています。また撮影のアーネスト・ラズロの緩急を巧みに利用したカメラワークが素晴らしく、特に法廷シーンでの迫力は相当なものです。映画は最後にナチスの悪行から話を乗り越え、世界の"正義と悪"の本質に迫る。非常に意義深い作品です。 【かんたーた】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2005-12-26 19:03:56) (良:1票) |
24.一言で表現すれば、重く、鋭い。裁判官、被告、検察官、弁護人、証人、そして市井の人々、彼らのセリフ一つ一つが見る側に重くのし掛かり、鋭くえぐる。たしかに今作の表現、考え方を古くさいと見ることもできる。しかし、ナチズムというものが近代の一つの帰結であったとすれば、この映画は現在の私たちにも、その鋭い切っ先を突きつけているといえよう。 【Gloria】さん 9点(2003-10-20 01:10:18) (良:1票) |
23.ヒトラーの大量虐殺により犠牲になった何百万もの命、いったい誰が責任をとるべきなのか。この映画のテーマは実に深く、難しい。司法に携わった者を罰するのは、もっともかもしれない、だがヤニングの言うように、それにより私欲を肥やした者(武器を供給したアメリカの企業など)は同罪というのも理解できる。そもそも戦勝国が戦敗国を裁く矛盾さが自体を複雑化している。本来、人間の尊厳に重点を置き、議論すべきなのにアメリカはドイツとの友好関係が必要と政治的見解を法廷に持ち出し、ドイツは、真実を隠し自国の誇りのために戦う。言葉少ないヤニングだけが法廷のあるべき姿を指し示した。最後のヘイウッド判事がヤニングに言った言葉「始まりは、無実の人へのあなたの最初の死刑宣告です」が重く胸に突き刺さる。 【ゆたKING】さん 9点(2003-04-14 09:06:44) (良:1票) |
《改行表示》22.《ネタバレ》 検察側の人物を背後からカメラが正面に回り込んで映していくと、リチャード・ウィドマークである。 これはケレンを表現するカメラだ。 弁護士役マクシミリアン・シェルの長い熱弁を、法廷内の様子を見回すように旋回しながら収めたロングテイクは、 カンペ無しというアリバイを誇示しながら、彼の長広舌を印象付けるカメラといったところか。 そのカット尻で、彼と被告席のバート・ランカスターの二人をピタリと構図に収めるのなどは、 スター俳優達が別撮りではなく紛れもなく共演しているとアピールするカメラワークでもあろう。 これが、物語も佳境となるランカスターの弁論あたりまで続くとさすがに鼻についてくる。例によって旋回したカメラは彼を真正面に置くと 上昇して、決め台詞直前でいきなり高速ズームで彼を大写しにする。 金さんの桜吹雪や、水戸黄門の印籠じゃないんだから。 途端に映画自体が段取り臭く、様式的・誘導的で、押し付けがましいものとなってしまう。 様々な小道具を介しての場面繋ぎなど、細やかな工夫も随所に凝らされているし、 大戦の犠牲者として登場する二人の女優のキャスティングもいいのだが。 【ユーカラ】さん [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2015-10-21 22:37:44) |
《改行表示》21.《ネタバレ》 ナチスドイツの戦争について戦争の余韻の残る中で過去のものとして捉えている感じが新鮮で、特に一般的なドイツ国民の様子には興味を惹かれました。印象に残ったのはヤニングが最後に「本当に知らなかったのです」と裁判長に告げ、「あなたが無実と知りつつ死刑にしたのが始まりなのです」と返される場面。被告人の弁護人の誰もが有罪じゃないのかの言葉がフィードバックし重く心に響きました。 アメリカの戦争映画ですが非常に見応えがあり、また正義や責任について考えさせられる作品です。 【さわき】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-10-05 22:31:22) |
《改行表示》20.史実をベースにした裁判劇。戦勝国が敗戦国の責任を追及した裁判ということで、 中立という点では問題もあったんだろうけど、そこを逆手に作品のテーマとした、 見応えのある裁判ドラマに仕上がってます。どの役者さんも演技がうまく、緊張感はたっぷり。 裁判長役のスペンサー・トレイシーはもちろん、被告の弁護士役の役者さんが非常に素晴らしく、 ラストまでグイグイと引っ張られた。マレーネ・ディートリッヒは相変わらずの存在感だけど、 モンゴメリー・クリフトも出演してたんですな。最後まで全然気づかなかった。 お薦めのクラシック映画。 【MAHITO】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2011-09-04 13:12:22) |
19. 題材を考えると、面白いというコメントは不謹慎かもしれません。が、見る人をひきつける良い作品だと思います。こういう映画のことを考えると、CGであるとか、3Dであるとか、そういう最新の技術などは、些細なことだということがよくわかります。 【海牛大夫】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-08-10 20:44:01) |
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18.考えさせられる3時間だった。この映画の中で語られる事は立場は違っていても重いものばかり。さらに1961年なら当時を生きた人もかなりの数健在だったと思うから尚更重い。直接関係はないが、ロルフ弁護士を演じたマクシミリアン・シェルがオスカーを受賞したのも良い。なにせアメリカや他の戦勝国にとっては触れられたくないであろう部分をズバッと突く役だったわけだから。 【リーム555】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-08-02 20:06:49) |
《改行表示》17.3回目の鑑賞。50年近く前の作品も歴史の重さ故か全く古さを感じない。堂々たるキャストで裁判で渡り合うシーンの迫力は満点。あっと言う間の3時間。 【ご自由さん】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2009-12-19 23:08:00) |
《改行表示》16.《ネタバレ》 裁判(法廷)ものって、集中して見てしまいますね。証人の証言、それに対する尋問、検察側と弁護側のやりとりと、見るべきところがわかりやすく、気をそらせるものがないので、ついつい引き込まれてしまいます。この映画ではそれに加え、戦争犯罪者をどう扱うのかという点が問題があり、白熱した議論が交わされるのですからなおさらです。 ただ、いわゆる三権分立、つまり司法の独立という観点からすると、国家のために行動した被告人たちは、初めから有罪が確定しているようなものです。ところがなにしろ冷戦時代、ドイツ国民を味方につけるため無罪にしろと軍から横槍が入る……。やはりここが、この映画のキモであると思います。こんな状況で判決を下す判事。そして文字で語られるその後の経過。判事の下した理想と現実を対比させ、静かに問題提起したラストはすばらしい。 この映画については予備知識もあまりなく、さして期待せずに見始めたのですが、大いに裏切られました。このような名作にめぐり会えたことに感謝。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2009-09-30 11:27:30) |
15.これはすごい。全然古臭さを感じない。世間の誰もが認める法曹界の偉人ヤニングに対し、有罪か無罪かを問うのですが、その結末たるや…。公平な目線で裁判を進行していくヘイウッド判事と、若きドイツ人弁護士の迫真の演技がうまく強弱をつけてピッタリ合っていて、どんどん引き込まれた。裁判ものでは自分の中ではダントツの映画に躍り出ました。もっと多くの人に見てもらいたい、名作中の名作。 |
14.前半はちょっと退屈に感じられてしまいましたが、映画が進むに従って緊張感が高まっていき、長編であるにもかかわらず 早く終わらないかなあという思いなしに 最後まで見ることが出来ました。肩の凝る映画ではありますが、一見の価値はあると思います。 【くろゆり】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2008-04-22 14:22:26) |
13.《ネタバレ》 なんと、上映時間は3時間だったんですね。見終わって2時間くらいの映画に思えたのに、これはびっくり。全く長さを感じませんでしたね。そう、この作品は文句無しに面白い。事実という混沌とした世界の中で、ある一面一面をチョイスして並べ立てていき、いいかわるいか札をつける。裁判とはそういうものです。絶対的不利な状況下でロルヌ弁護士のあの見事なまでの弁論!終盤、ヤニングは立ち上がり自ら罪人であると認める訳だが、もし彼が立ち上がらなかったら果たして裁判の行方はどうなっていたか、と考えざるをえない。果たして人間にとって普遍的な正義などあるのだろうか、真に公平な立場などあるのだろうか、罪の在処を明確に分け隔て出来るのか、この法廷劇で繰り広げられる様を見てると、人間とはつくづく根本誤謬な生き物であり、だからこそ完全なもの、正当なるものを追い求めるのだなぁという気がします。 【あろえりーな】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2008-04-20 01:14:11) |
12.《ネタバレ》 前の作品「渚にて」は観ていたけれど,この映画は見逃していました。やっとBS録画で3時間の作品をゆっくり観る機会が得られました。しかし冷戦の最中の当時と現代ではかなり見方も変わらざるを得ないようです。冒頭の屋上に飾られたナチスの紋章の爆破は,この都市がナチス台頭の契機となりリーフェンシュタールの作品「意志の勝利」の舞台になった場所を象徴するもので,だからこそ連合国も戦犯の裁判に選んだのです。しかし,この映画の舞台は先のゲーリンク達の裁判の終了から2年を経過した後で,そこでの戦争協力者としての司法関係者の責任を追及しようと米国主導(ソ連は参加せず)で行われたものです。法学の泰斗でもある旧ドイツの司法相の責任をどのような形で追及しようかと焦る検事側が断種事件の証人として引き出した男が代々の精神薄弱家系であることを暴露して,米国の州法まで引用して弁護する気鋭の弁護士。これには社会福祉と,それへの代償と言う現代にも通じる問題が提起され,落ち込む検事側。そして当時少女だった証人とその亡父のユダヤ人の友人との事実関係の証言を告白させようとする弁護人に遂に無関心を装っていたのをかなぐり捨てる元司法相。社会を護るためには一時の犠牲には目をつぶる理論がそれの拡大を助長する結果になったことへの自責ですが,これはチェコを犠牲にすればナチスの欲望に妥協できると考えた先の英仏などへの痛烈な批判にもなっています。その折に発生するソ連のチェコへの侵入とベルリン回廊の封鎖で,これは西独の再軍備へと繋がるのですが,それによりドイツ人との協調が急遽要請されて軍人である検事側への上部よりの圧力が加わり,その中で責任の追求は棄てきれない裁判長の全員終身刑の判決となりますが,結局は数年以内に刑期短縮されてしまう。封切り当時のポスターは戦車の前に立ちふさがる男の後姿があった気がするけれどそんな場面はなし。未亡人役のディートリッヒがリリー・マルレーンの一節を口ずさむおまけつき。 【たいほう】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2008-04-02 09:30:37) |
11.この歴史的事件を映画化するにふさわしく、重厚かつ丁寧な作りです。多くは法廷での弁論や尋問のシーンなのですが、シェルとウィドマークは鬼神のごとき迫力で(しかも大袈裟でない演技で)ぶつかり合い、トレイシーはそれを一言でずしりとコントロールする。バート・ランカスターは黙って座っているだけなのに、目の動きだけですべてを語り尽くしている。この緊張感だけで3時間お腹いっぱいです。長台詞の場面でも、それが必然性をもって迫ってきます。さらに、証人や関係者役の人たちも、ここぞというところで主役級の存在感を見せ、作品の重みを増しています。また、当然のことながら法廷という狭い限定空間でのシーンが多い中で、何とか工夫を凝らしていたカメラワークも、必死の努力が窺えて印象的でした。 【Olias】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-03-28 03:46:40) |
10.《ネタバレ》 一回目に見た時は事実をありのままに再現しようとする作品で何の主張もないような気がしたのですが、二回見てこれほど印象が変わった作品はありませんでした。この裁判の勝者はだれかというと・・・誰もいないのです。ロルフ弁護士は大先輩のヤニングに「わたしはもちろん有罪。」と告白されてしまって敗北せざるを得なくなるし、ロースン検事は「ソ連がドイツを勢力下に置こうとしている今、ナチ政府下の法律家を極刑に処すとドイツ人の反感を買ってアメリカの国益に反する。」と言って釘を刺されるし・・・。未亡人の訴えに屈しなかったヘイウッド、そしてロルフ弁護士のイレーネに対する歯に衣着せない執拗な追及を見てようやく人間らしい感情を取り戻したかのように言葉を発したヤニングの二人の、法律家としての気骨と威厳が光っていました。厳罰に処せられるべきなのはやはりロルフ弁護士の言うとおり、戦争を起こしてしまった人類全体の馬鹿さ加減なのでしょう。 【かわまり】さん [DVD(字幕)] 10点(2008-01-14 13:57:43) |
9.《ネタバレ》 東京裁判の前哨ともなったニュールンベルグ裁判を、ダン判事の視点で回想する3時間。長めの上映時間にもかかわらず、戦前、戦時中、戦後のドイツの苦悩を描いた傑作であろう。しかし私は見終わった後、少なからず当時のドイツ国民に対して同情心を抱いてしまった(かといって、決して私はナチス指示派ではないが)。第二次大戦前のドイツでは失業者が激増してるなか、屈折した理論ではあるが(ゲルマン優先、ユダヤ排斥)労働者の救済に活路を見出したのがA・ヒトラーだった。表では労働者の救済、裏ではゲシュタポを利用して恐怖政治をおこなう2つの顔を持つ独裁者。劇中、内情をダン判事の伝えれないドイツ民が出て来る。これはきっと、労働者救済は仮の姿であることがわかり、「第三帝国の設立を目論んでいた」真実のヒトラーを知った絶望感と、自責の念が集約されているように見える。しかし私はその否定が肯定を生み「虐殺の事実は知っていました」と思えて仕方なかった。良心との呵責に悩まされながら、ドイツ国民はヒトラー政権下にいたのだろうと思う。ただひとつこの映画で残念なのは、この裁判が国際法では未確立なものであるという論議が、後半僅かにしか語られなかったことである。戦勝国が起訴した裁判映画を、戦勝国が再現したということで、後々法学界で議論され非難される点が希薄だったのが残念であった。 |