210.《ネタバレ》 冒頭、ヴァージニア・ウルフの自死から映画が始まるが、このシーンがこの映画を象徴するシーンだ。なぜならこの映画は「なぜウルフは自死を選んだのか?」という問いのダルドリー監督流の「答え」だから。ウルフが入水自殺する直前の「走馬灯の絵」であるといってもいい。この映画が難解にみえるのは、3人とも全然別人&別の時空に生きている存在であるかのようにみせて、現実に存在するのはヴァージニア・ウルフ1人だけ、あとの2人は実はウルフの想像中の人物であるという凝った脚本になっているからだ。同時に目覚める朝・花・卵・レズビアン・つきまとう死のイメージ・場面転換の連続性はが3人が同一人物であることの暗示である。他にもそう思う根拠は沢山あるが、とりあえずウルフの姉が言った「ヴァージニアは、複数の人生を生きているから幸せ」というセリフが、この映画の骨格をズバリと表現しているのではないか。この映画は要するに「ウルフの自叙伝+ダロウェイ夫人"現代版"」という構成であり、ウルフは「ダロウェイ夫人」を"書く"ことで時空を越えた"3人分の時"を生き、人生に満足したからこそ死を選んだ、というのがウルフの死に対する監督の解釈だろう。"The Hours"という原題も、"めぐりあう時間たち"という邦題も、そう考えてみれば実に見事なタイトルだと思う。傑作。 |
209.《ネタバレ》 この映画は核となるヴァージニア・ウルフと彼女の書いた小説「ダロウェイ夫人」を読んでいるかどうかで、大きく印象が違う映画だと思います。映画を鑑賞した時には読んでいませんでしたが、読んだ後は、脚本の素晴らしさに感嘆いたしました(可能なら読書後の鑑賞をお薦めいたします)また、役者さん達の演技が素晴らしい。ヴァージニア・ウルフは13歳の時に母親を亡くしてから精神的に不安定になり、父、兄、を失っていく中、生と死の間を揺れ続け、最後に入水していまいますが、その揺れ続けながらも生の素晴らしさを愛し続けた彼女の生き方を二コールが見事に演じている、と思いました。夫の「最高の人生」の為に生きるではなく、「自分の為」に生きたいと願い、家族を捨ててしまう女性の苦悩や、「彼の為だけ」に生きる女性(自分の為ではない)「彼女の為に生きる」のではなく「自分の生」を生きたいと自ら死を選ぶ詩人、どの役者さん達も見事に演じていました。すごい高水準の映画だと思います。一度は観ておくべき映画だと感じました(ある程度、大人になってからの方が良いと思いますが)邦題の方が原題より数倍素敵ですv(つけた方、GJ!) 【果月】さん [DVD(吹替)] 9点(2009-03-01 17:20:50) (良:3票) |
《改行表示》208.女が自分らしく生きることの難しさをレスビアンに 絡めて描いている。 世間の求める女性像と折り合いを付けられない女は バージニアの時代には死を選ぶしかなく、 ジュリアンの時代には家を出るしかなかった。現代に 生きるメリルは苦しみながらも自分の境遇を生き延びている。 それにしてもメリルの演技が暑苦しすぎ。ジュリアンの 抑えた表現を見習って欲しい。(DVD) 【なみこ】さん 7点(2004-08-14 22:25:52) (良:2票) |
207.3人の女性を中心とした、宿命にも似た異なる時代の1日を描いた人間ドラマ。それぞれのストーリーを途切れなく、過不足無く、くどくなく描くその様は美しく、鮮やかで、また詩的だが、しかし残酷である。その映像美と残酷さのコントラストにまず、舌を巻いた。たとえ例えば同性愛が許容される時代であっても、人生は表層的な自己満足の連続に過ぎない。そのことを悟り、自分の為ではなく、生死を超えて本当に自分らしくあることを望むとき、過酷な選択が待ち受ける。ヴァージニアやローラやリチャードの選択を自己中心的であると責めるのはたやすい。しかし、この映画を見終わってカタルシスにも似た感覚を覚えるのは、彼らの選択に誰しもが心に秘める部分があるからではないか。ジュリアのようにローラを抱きしめてあげたいと思ったのは、僕だけではないはずだ。逆に言えば、静寂を覆い隠す為にパーティーを繰り返すダロウェイ夫人にも、誰もが自分自身を投影する部分があるだろう。そして、意識的であれ無意識的であれ、誰かを”殺している”のかもしれない。ストーリーや演技は言うまでもないだろうが、それを支える演出、音楽の完璧さ(確かに音楽はややでしゃばり感が否めないが、それによって醸し出されている統一感は特筆すべきだろう)。この映画の見事さには、溜め息が出た。文句なしの満点。 |
206.最近、「リトルダンサー」を観たこともあってとても大きな期待を持って観にいった。観終わった直後は正直、感想としての言葉をうまく出すことができなかった。脚本、演技、演出、映像、音楽とすべてが素晴らしくこの映画が間違いなく傑作であるということは容易に感じることができたけど、そのストーリーの深遠さは容易に「感動した」とか「面白かった」などと言葉にできるものではなく、非常に濃密で難解だった。話自体が極端に難しいということではない。この映画の難解さは人間そのものの難解さであろう。すべての人間は本質的な欲望と自制心の間でもがきながら生きている。簡単に言えばこの映画は自分の抑え切れない欲望に対してあるがままに生きた3人の女性を描いていると言える。それは必ずしも賞賛されるものではなく、むしろ世間から疎んじられ反感をおおいに買う場合が多い。そんなことは3人とも百も承知なのだ。それでもそういう生き方でしか人生に「生」を感じられない彼女たちの苦しみをこの作品は悲しく、切なく、濃厚に斬新に描ききっている。この映画の好みや感じ方は観る人間の「欲望」に対する価値観によって大いに左右すると思う。でもきっとすべての人間が多かれ少なかれ彼女たちと同じように悩み苦しむことがあるはずである。世の中のほとんどの映画は人間を描いている。しかし、この映画くらい人間の本質をリアルに描いた作品もなかなかない。とにかく3人の女性、3つの次元を巧みに絡み合わせた脚本の構成力が素晴らしい。その脚本に集った演技がまた素晴らしくジュリアン・ムーアとエド・ハリスについてはなぜオスカーが獲れないのかと本気で疑問になる。すべてにおいて見事だった。人生経験の浅い僕がこの映画を1度観ただけで感じられることはこの程度だろう。しかし再びこの映画を観た時には必ず新たな発見と感動があると確信する。 【スマイル・ペコ】さん 9点(2003-06-02 12:25:42) (良:2票) |
205.言葉ではとても表現できない、感動とは違う何か特別な感情が湧き上がってくる。この作品を見た後の自分の素直な気持ちは、こう言ったところだろうか。これほど濃密なドラマを見たのは久しぶりの感がある。オムニバスともフラッシュバックとも違う、三つの異なった時代を生きる女性たちを交互に描いていく演出方法は、斬新で極めて効果的でもある。本作の彼女たちは何らかの形でリンクしていて、人生そのものが謎めいているという共通項をも併せ持っている。そして、ありのままに生きようとする彼女たちを通して、愛することとは何か。本当の幸せとはいったい何なのか。そして生きていくとはどういう事かといった、人間の根源的な在り様を問いかけてくる。壮絶な生き様を見せつけたE・ハリスの凄味は言わずもがな。さすがに名女優たちの演技も三者三様で上手いが、とりわけJ・ムーアは、個人的には今まであまり買っていなかった女優さんだっただけに、彼女の素晴らしさには目から鱗の思いだ。さらに、心の揺れ動きを要求する演技者に対しては勿論のこと、部屋の隅々にまでも計算され尽くしたS・ダルドリー監督の演出は、品格さえ漂わせて見事と言うしかない。(彼の手に懸かれば、卵さえ演技するのだ!)そして、ヒアリングのお手本になるような英語のセリフの明瞭な美しさは、特筆に価することも付け加えておきたい。 【ドラえもん】さん 10点(2003-05-23 00:22:25) (良:2票) |
204.《ネタバレ》 1923年、英国、精神の病を患う人妻ヴァージニア・ウルフは閉塞感漂う田舎で「ダロウェイ夫人」という小説を執筆していた。1951年、ロサンゼルス、郊外の一軒家で一見幸せそうな生活を送る一児の母ローラは何もかも捨てて逃れてしまいたいという抑えきれない欲求に苦しんでいた。2001年、ニューヨーク、長年出版社で編集の仕事をしているクラリッサはエイズを患う初老の作家であり自らの私生活でも因縁浅からぬ関係があるリチャードの文学賞受賞記念のパーティーを開こうと奮闘していた。そんな時間も空間も超えた全く関連性のなさそうな3人の女たちの、人生の転機となったとある苦悩の一日を重層的に描く文芸作品。かつて文学青年だった時代に、世界の有名な文学はだいたい読んだつもりになってましたが、この「ダロウェイ夫人」はその名前はもちろん知っていたのだけど恥ずかしながら未読のままでした。確かに、そんな原作を読んだことのない僕のような人間でも、この綿密に考え抜かれた編集や、実力派の役者陣が織り成す熱演、全編に漂う上品で静謐な雰囲気とで、ちゃんとこの暗鬱な世界へと惹き込む監督のセンスはなかなか秀逸だと思います。ただ、この女を家庭という牢獄へと縛り付ける男社会の論理に必死に抗おうとする三者三様の女たちという、この全編を覆ういかにもなフェミニズム臭には若干辟易させられましたけどね。20世紀初頭のウルフは入水自殺し、近代を生きるローラはなんとか死なずに逃げ出し、そして現代を生きるクラリッサは逆に男を自殺に追い込む…。この、時代の変遷と共に強くなる女たちという、フェミニズムの戦いとそれがもたらした功罪を充分勉強させてもらいました。だからといって、映画として良かったかというと、まあ6点かなってのが正直な感想ですけどね。取り敢えず、こういう映画を観るとやっぱり結婚は人生の墓場だって思い知らされるんだよね~。うーん、やっぱ、いつの時代も女って面倒臭い(笑)。ただ、結婚しない人生はもっと墓場だったかもって、最近思い知らされることが多くなった独身生活38年目の僕なのでありました(泣)。 【かたゆき】さん [DVD(字幕)] 6点(2014-06-03 00:29:20) (良:1票) |
203.ビッグ女優の豪華共演、絡み合う複数のストーリー。そういうの大好き!と思って期待して彼女も誘って劇場へ足を運んだが、絡み合ってんだかバラバラなんだかよく分からない進行。淡々としていてひたすら眠い。ハズレか。。。と落胆した頃に隣を見れば、珍しく映画でボロ泣きしている彼女。え?え?ここ泣くとこなのか?・・・劇場を出てからどこが面白かったのか尋ねるが、彼女は長考の末「言葉では表現できない」とのこと。女にしか分からん映画なんだなと思った。 【えいざっく】さん [映画館(字幕)] 3点(2007-03-22 17:29:08) (笑:1票) |
【Michael.K】さん [ビデオ(字幕)] 4点(2007-01-23 10:02:36) (笑:1票) |
201.心が弱った時に見るととても共感でき、元気づけられる映画。といっても決して大きな声で「がんばれ!がんばれ!」と励ましてくれたり、楽しい話をして気分を紛らわしてくれる映画という訳ではありませんが…。この作品は主人公達が悩み戸惑う姿を丁寧に描いてます。決して彼らがとった行動を正しいとも間違っているとも決めつけず、ただただありのままを描いています。なのになぜ癒されるのでしょうか?それは恐らく彼らを見つめる視点が終始優しいものだからだと思います。例えるならばもし何か悩み事を抱えてカウンセリングにかかった時にカウンセラーから「そう、とても辛い思いをしたのね。でもあなたは強いんだから負けずに頑張らないとダメよ。」って言われるのと「そんなに辛いのなら思いっきり泣いていいんだよ。」って言われるのとどちらがあなたは救われるでしょうか?この映画は後者です。彼女達の心の弱さを描きつつも決して頭ごなしに糾弾はしません。(そんな事をせずとも彼ら自身が自分の弱さに十分気づいているのだから…。)確かに作中で主人公達のとる行動には迷いが多いですが、この映画はそんな主人公達を決して拒絶したり冷たく突き放す事はせず、弱さを曝け出す彼らを優しく見守っています。だから最後の場面でクラリッサ(メリル・ストリープ)を訪ねて来た年老いたローラ(ジュリアン・ムーア)をジュリア(クレア・デーンズ)が優しく抱擁するシーンはほんのさりげない場面なのにとてもジンときます。(余談ですがこのシーンのジュリアン・ムーアは本当に素晴らしい演技です!)身近な人々との関係に悩み、彼らとのポジションを上手く築けない自分に傷つき、苦悩の果てに愛する人々を捨ててしまった事を終生後悔し続けてきたであろうローラの人生の最後の局面で、初対面だったジュリアが見せてくれたほんのさりげない共感がどんなに彼女にとって救いとなった事か!このクレア・デーンズの存在がこの映画にぬくもりを与えていると思います。この映画は自殺を肯定していると一部で揶揄されたりしますが決してそうではなく、むしろこのシーンこそ製作者が本当に訴えたかった主題なのではないでしょうか?印象に残る場面が多いこの作品の中で、とびきり温かく優しさに満ちた素敵なシーンだと思いました。 【MEL】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-05-07 04:22:09) (良:1票) |
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200.出だしは快調でした。キッドマンの容姿にまず驚き、3つの物語が静かに進行していく。ニヤニヤ(トラフィックみたいだなあフフフよおし集中するぞっ)・・・役者達の演技力は申し分ない。いや完璧に近い。映像も綺麗だ・・・1時間経過、軽く足組みなんかしてみる。はて?そろそろだろ?そろそろくるころだろ?移入させてくれ、やばい睡魔が襲ってくる。だめだ暗すぎてつまんない。あっ終わっちゃったYO!。どうやら重いようです |
199.これは俳優達の名演技を堪能する作品でしょう。まずメリル。相変わらず、主役を意識した誇張気味の鼻に付く演技で名演をアピールしているが、エド・ハリスとの絡みでは、これぐらいしないと記憶に残らないかもしれないからしかたがないか。ジュリアンは言葉が少ない分、表情と目の演技が素晴らしかった。老け顔も本物みたいで、演技派女優の仲間入りだ。そして、一番演技が光っていたのは、鼻の大きい新人の女優さんだ。ところで、二コールは、何処で出てきたのだろう? 【パセリセージ】さん 8点(2005-03-20 00:33:43) (笑:1票) |
198.3人の芸達者な女優にアカデミー賞がらみの映画ってことで、苦手分野と思い敬遠していたけどTVで放映してたのでまぁヒマだから見るかと見始めたら、いきなり物語に引き込まれました。3人の女性達がそれぞれの人生をどのように受け止めるかって言うのを物語りをシンクロさせて表現しているのが面白いですね。人によって違うかも知れないけど、私にとってはシアワセとは突然やって来る「なんでもないある瞬間」の事です。瞬間だから起こった時点でそれは即座に過去になってしまうワケです。その喪失感。年をとればとる程に輝きを増すあの一瞬の思い出と、もう二度と手に入らないのではと思う漠然とした予感。そんな失い続ける人生の悲しみとどう折り合いを付けて行けば良いのか?果たしてそれを上手く引き受ける事ができるのだろうか?分からない。まだまだジタバタともがいている今の自分には身につまされるような作品でした。 【黒猫クロマティ】さん 7点(2004-12-24 15:29:20) (良:1票) |
197.いい映画だと思います。一回しか見ていませんが繰り返し見てみようかとは思いました。何となく自分の妻との会話を感じてしまいました。女の人は難しいですね。 【かじちゃんパパ】さん 7点(2004-11-08 17:13:36) (良:1票) |
196.《ネタバレ》 この映画を観終わった後、価値観の転換に迫られるようなことはない。しかし、上手い映画だと思う。まず演技。三人の女優から子役まで俳優陣の演技はしっかりとして見応えがあります。中でもローラ・ブラウンを演じたジュリアン・ムーアは静寂が孕む危うさを自然に演じている。彼女の生きながら死んでいるというような、その悲しい表情は夫の与えてくれる幸福には満たされない不幸な女性像をよりリアルに際立たせている。そして、異なる三つの時代を生きた三人の女性の、人生の1ページを『ダロウェイ夫人』を軸に上手く絡み合わせ、そして切り取った脚本が素晴らしい。花や目覚め女同士のキスなど時代を越えて三つの物語は交差する。伏線を示してはいるものの、物語がつながる、二人の女性が出会う場面はやはり驚かされる。愛する者と愛される者、死を選ぶ者と残される者、そして死と生の対比が、抑えながら描かれている映画。この作品自体が観る者に一つのテーマを投げかけるのではなく、観る者がそれぞれ感じ取るという形の映画であると思う。演技や脚本という器としてはよく出来ている。器の中身となるのは観る者自身を映したものだろう。 【はざま職人】さん 6点(2004-06-17 02:50:05) (良:1票) |
195.《ネタバレ》 「同性愛」という爆弾をかかえた3人の女性の物語として見た場合。バージニアの場合、最後には死ぬしかなかった。ローラの場合、逃げ出すことを選んだ。クラリッサは、人工受精という方法で恋人との間に子供をつくることもできた。こうしてみると時代につれてなんと進歩してるんでしょう!でもこの映画はきっと「同性愛」だけを語っているわけではないのですね。リチャードのセリフ「ぼくたちほど幸せな二人はいない」というようなことが、冒頭のバージニアが夫にあてた遺書にもあった気がするんですが、そう死ぬ真際に言い残している相手はどちらも、けしていっしょに幸せになれない「他者」のような人に対して。だから、空虚とも見える夫婦生活を送った夫や、やはりゲイであるリチャードとの関係にこそ、大事な大事なものがあったんじゃないかなと。同性愛者じゃなくても常に追い求める「ここではないどこか」がみんな心のなかには多かれ少なかれあると思う。それを追いかけることは素晴らしいけれど、一生完全には理解しあえなかったり結ばれなかったりする「他者」とのつながりでできてたりするのが人生なのかな、って思ってしまいました。とっても勝手な見方だと思いますが、いろいろなことを考えさせてくれる映画だと思います。ピアノがバックに流れる冒頭何分かの緊張感にすんなりとひきこまれてしまいました。最後に、ニコール・キッドマン、彼女はイカれている役がとってもうまい。あまりに自然でした。「誘う女」と本作がいちばんはまってる気がします。 【ETNA】さん 7点(2004-06-08 22:11:33) (良:1票) |
194.《ネタバレ》 2回見てやっと理解できました・・・。この作品を見て『アーサー王物語』の中の「ガウェインの結婚」に出てくる邪悪な騎士がアーサー王に問うた「すべての女性がもっとも望むものはなにか?」という質問を思い出した。喪失感と虚無感に満ち溢れた日々から抜け出すためにヴァージニア、ローラ、クラリッサの3人はこの問いの答えを実行したんだなぁと。そして、この行動を起こすきっかけを作ったそれぞれの訪問者。見れば見るほど味の出るスルメ映画です。リチャードのガウンの生地にはすぐ気づいてしまいました・・・。 【かふぇ俺。】さん 5点(2004-05-17 05:43:14) (良:1票) |
《改行表示》193.この映画は“感じる”映画だと思った。 登場する三人の女性達はみな、喪失感と虚無感にとらわれ苦しんでいる。彼女達にとって、生きることそのものが苦痛なのだが、そこまで追い込まれた理由について作品の中では詳しく述べられてはいない。 ただ“ある1日の出来事”が淡々と、同時にもの苦しい程濃縮された時間として描かれている。そこでは、生きること=苦しみという前提が容赦なく私たちに突きつけられてくる。 朝目覚め、花を買い、忍び寄る死の影を身近に感じる。 彼女達の苦しみの中に自らの不安、苦しさ、疑問を見出した時。 私たちは4人目の登場人物となる。それがこの作品を良いと思うかそうでないかの、境界線になるのだと思う。 【narasuke】さん 10点(2004-05-10 16:19:50) (良:1票) |
《改行表示》192.役柄に合わせて肉体改造をすることに異議を唱えるつもりもないし、特殊メイクにも楽しませてもらってきた。でも、この作品で、キッドマンの特殊メイクに違和感を覚えた。「そんな顔になったからどうだっていうわけ?」な気分。そこに私の焦点が合ってしまったせいか、「めぐりあったからどうだっていうのよ??」と攻撃的なまま眺めてしまった。 いつか、冷静になってから、ストリープとハリスの演技をしっかりと見直してみたい。 【日雀】さん 4点(2004-05-03 18:37:55) (良:1票) |
191.《ネタバレ》 何故か途中まではすごく良いのに、ツメが足りない。原作者と監督が男性と聞いて、少々納得。専業主婦なら誰もが、「私は偽りの人生を生きているのではないか」という気持ちを抱く事があると思う。そしてローラの様に、一線を超え、家族を捨ててしまう人もたくさんいる。だけどローラが何故その一線を超えてしまったのかという所に、説得力がない。例えば全てにだらしない主婦なら、イカン男に引っかかって、簡単に家族を捨ててしまうかもしれない。だがそれなりに良識のある女性が、家族を捨てるには、もっと強大な理由がなければならない。DNAに備わった、子孫繁栄の為、子供を持つ女性に与えられる母性本能を、この作品はナメている。あの時思いとどまったローラが、何故その後家族を捨てたのか。それには強大な何かがなければならないのに、それが描かれず、突然ラストで現れる老けたローラの告白は、とても蛇足に、とても場違いに感じた。また、予備知識が無いとわかりづらいという設定そのものに、とても疑問を感じる。私は「ダロウェイ夫人」既読だったので、同性愛や分身ともいえる識らない誰かの死を受けて、瞬間の愛おしさに目覚めて行く様などが、多少理解出来たが、隣の旦那の頭上には、終止「?」マークが・・・これは映画として明らかに反則技。なにげなく手に取っても楽しめるものこそが映画ではないだろうか。メリル・ストリープのエピソードが個人的にはお気に入りだったし、カメラの美しさ、小物まで細やかに気配りされた演出、役者さんたちの繊細な演技など、良い点も沢山あり、もう少しどうにかならなかったのかと、残念に思う映画でもある。 【ともとも】さん 7点(2004-03-27 01:45:53) (良:1票) |