202.《ネタバレ》 トッド・ブラウニングの傑作「フリークス」を思い出す作品。
「エレファントマン」ことジョゼフ・ケアリー・メリック(ジョン・メリック)の人生を淡々と描いていく。
ファースト・シーンで女性が象に襲われるモンタージュ。この夢はメリックの誕生に関わる重要なテーマだ。彼を妊娠していた母親は事故に遭い、そのショックでメリックは全身に腫瘍が出来る奇形児となってしまった。
子供の頃は腫瘍もまだ大きくなく、普通に喋り一般の学校にも通っていたようだ。
それが成長していく過程で腫瘍が肥大化し、徐々に症状が悪化していく。
人々はメリックの姿を見て「奇人」だの「化物」だと罵り差別し、遂にはサーカスの見世物小屋で「エレファントマン」となってしまう。彼は偏見の目や傷つけられる恐怖で言葉も知識も封印してしまう。
そんな彼を、医者は好奇心と正義感から救おうとする。単眼の袋で覆われた“心の壁”を取り除こうと。
しかしメリックをサーカスに引き込んだオッサンは本当に不器用な人だ。
看護婦ですら悲鳴をあげるメリックの姿、だが婦長の献身的な介護や医者の熱心な語りかけでメリックは普通に喋るようになっていき、人間性を取り戻していく。
医者がメリックから“声”を聞こうとするシーンは熱い。視覚と耳に訴える。
メリックが聖書の件をする場面も良いシーンだ。院長がメリック“さん”と改めるのも。
「彼の人生は誰にも想像できないと思う」
メリックの苦労は誰にも解らない。どんなに解ったつもりになっても。我々は知り、考える事しか出来ない。
時折見せる寂しき横顔。メリックは右腕と外見の変わりに豊かな想像力と心を手に入れたのだろう。
メリックがスーツに身を包んで例の女優と語り合うシーン。彼女はメリックの“心”を見ているのだろうか。遂にはヴィクトリアの女王まで動かしてしまう。
彼の存在が認められる度に看守たちの嫉妬も大きくなる。人助けかエゴイズムか。
メリックはある出来事で再び心を閉ざしてしまう。それでもメリックの理解者でもある子供やサーカス仲間たちの協力。「俺たちみたいなのには“運”がいるんだ」
さらに駅での一件が再びメリックの心を呼び覚ます。「僕は人間なんだ!」
とりあえず婦長がGJすぎる。
再び平和な時を取り戻したメリック。彼が夢の中に見た女性は母親だったのだろうか?
彼は安らかに眠り、母親の元へと行ったのだろう。