6.《ネタバレ》 全盛期のマキノと比べると落ちるという人もいるかも知れないが、俺はマキノが晩年に咲かせた傑作の一つだと思っている。
高倉健にとっても、健さんの生き様が鮮烈に刻まれた1篇だ。
夜、ヤクザが賭博をする場面から映画は始まる。若い男が博打の不正を“眼”で訴えるが、話は入れられず男は後を去り、道端で先ほどのゴロツキが男を袋叩きにし“警告”をして去っていく。
雨が降りしきる中、傷ついた男を若い乙女が手当てをする。傷ついた心に、暖かい酒と優しさが染み渡る。この場面がキレイでさあ。
そっから3年後、どうしてこうなったヤッパ片手に不正ごとをブッ刺し、賭博をブッ壊してブタ箱行き。見破ってこそイカサマなんて言うから・・・。
健さんは、一体何度映画の中で捕まっているのだろうか。
「ヤクザもここまで落ちたら一人前の馬鹿だ」
菅原文太「サーセン」
地震で絶たれる想い、家族の帰りを待ちわびて死んだ人々への申し訳なさ・・・。
「“きらく”って宿知っているか?」
「きらくきらくと言われても・・・」
ツマんねえギャグ言ってんじゃねえよコノヤロウ。
震災後の混乱がヤクザも追い込む。
出所後はまっとうになろうと振舞うが、惚れた女の危機には黙ってられねえ人情、その女のためにひたすら耐えて、耐えて、耐える。
二人っきりで本音を洩らす男気、それに応える侠の精神。
料理人の腕前もまた“血”で決まってしまうのだろうか。俺も健さんの玉子焼き食いてー。
松っちゃんのスタイリッシュ面接。
ただ、彼自身が変わっても、それを知らない人間は絶えず追いかけてくる。今まで流した血や体に刻まれた傷、犯してきた罪はどんなに洗っても拭われない。
そして、たった一枚の紙切れのために死んでいく人々の無情さ。
積もり積もった怒りは、爆発させるしかない。柳の木が連なる長い道を、ゆっくりと歩いていく漢たち。
抜刀、血しぶき、凄絶に散る侠たちの生き様、死に様。
馬鹿は死ななきゃ治らねえ・・・「死んで貰うぜ」・・・!