4.《ネタバレ》 ドイツが生んだ奇人監督ヴェルナー・ヘルツォークと、彼の作品に何度も出演した“映画史上に残る怪優”クラウス・キンスキーの愛憎渦巻く人間関係を、怪しげに描いたドキュメンタリー映画の傑作。
本作の中でヘルツォークはこう語る。
「私は変人ではない」と。
自身が作成したドキュメンタリーの中で、真面目な顔をしてこんな言い訳を淡々とされると、思わず噴出してしまう。
やはり、このドキュメンタリーは傑作中の傑作。
その他、いたるところでヘルツォークが「自分はマトモ」的な立ち位置でこちらに語りかけてくる。
しかし、ヘルツォークが自身のことをマトモと主張すればする程、逆に「本当かなぁ・・・」という気持ちにさせられる。
キンスキーが奇人であることは映像が雄弁に語るが、ヘルツォークもそれに負けず劣らず奇人であることは明らか。
これは彼ら二人も本ドキュメンタリーの中で認めていることだが、彼ら二人は“似た者同士”なのである。
それにしてもキンスキーは常にキレている。
少なくとも、ヘルツォークが撮ったこのドキュメンタリーの中では。
特に冒頭のキンスキーがキレながら大衆に向かって演説をするシーンが興味深い。
迫真の映像で、これを観るだけでも十分楽しめる。
ラスト・シーンは特別に印象的。
こんなに不思議に心温まる映像は観たことがない。
アマゾンの大自然の中に一羽の蝶がいる。
それがキンスキーの体にとまる。
しかし蝶は逃げない。
逃げるどころか、彼に吸い付いて離れないのだ。
彼がいかに常人離れしているかという隠喩がうまく込められた素晴らしいラストの映像だ。
アマゾンの蝶に愛されるキンスキーも凄いが、この映像を撮って最後に持ってきたヘルツォークも凄い。
ヘルツォークの自己中な語りに苦笑させられ、キンスキーの狂った言動に口をあんぐりさせられ、最後に蝶のシーンで心を温められるという、素晴らしいドキュメンタリー。
皆さんに是非オススメしたい。