息もできないのシネマレビュー、評価、クチコミ、感想です。

Menu
 > 映画作品情報
 > 映画作品情報 イ行
 > 息もできないの口コミ・評価
 > (レビュー・クチコミ)

息もできない

[イキモデキナイ]
Breathless
(똥파리/Ddongpari/糞蝿)
2008年上映時間:130分
平均点:7.37 / 10(Review 59人) (点数分布表示)
公開開始日(2010-03-20)
ドラマバイオレンス
新規登録(2010-03-04)【Carrot Rope】さん
タイトル情報更新(2010-05-12)【Carrot Rope】さん
Amazonにて検索Googleにて検索Yahooにて検索
Twitterにて検索
ブログに映画情報を貼り付け
監督ヤン・イクチュン
キャストヤン・イクチュン(男優)サンフン
キム・コッピ(女優)ヨニ
脚本ヤン・イクチュン
製作ヤン・イクチュン
配給ビターズ・エンド
編集ヤン・イクチュン
字幕翻訳根本理恵
あらすじ
高利貸の金を回収するヤクザさんとふとしたことで知り合う高校生を巻き込んで進んでいきます。彼のドツキの早業、乱暴さ、そして、彼の家族への思い、繊細さ、「息もできない」展開で物語は進みます。最後までみて彼の心を考えてあげてください。ありえない結果となり終焉を迎えます。映画をお楽しみください。
ネタバレは禁止していませんので
未見の方は注意願います!
(ネタバレを非表示にする)

【クチコミ・感想】

別のページへ
新規登録順】 / 【変更順】 / 【投票順
123
>> お気に入りレビュワーのみ表示
>> 全レビュー表示

>> 改行表示 ※《改行表示》をクリックすると個別に改行表示致します
※ 「改行」や「ネタバレ」のデフォルト表示のカスタマイズは「カスタマイズ画面」でどうぞ
《改行表示》
59.《ネタバレ》 暴力的で不器用でそれでいて繊細。 その暴力には楽しさも快感もない、誰かに苦しみを分かって欲しい叫びである。  貧困と格差の固定によって生み出される負の連鎖の中、 サンフンがヨニと出会わなかったら、ここまで変われなかったのだろう。 上手くいけば足を洗えたかもしれない。  もちろん、映画は彼の境遇をしっかり描いていて根っからのワルではないことは分かるが、 現実は一度根付いたイメージを覆すのはあまりにも困難だ。 誰だって悲惨な現実の中、歯を食いしばって生きているで片づけられるだろう。  結局、サンフンは悲劇的な最期を遂げ、 彼に止めを刺すのが最初は大人しかったヨニの弟なのだから皮肉すぎる。 因果応報だがそれで済ませたらいつまでも問題は解決しない。 それでも自分が被害者だったら… ヨニが母を死なせたのがサンフン一味だと分かったら… いつまでも虚しい。  互いの家族が団欒で焼き肉を食べる温かみのある結末と、 不毛な暴力に突き進むヨニの弟の行く末の対比が余韻を残す。 低予算で荒削りを通り越して、汚さすら感じてしまう部分を補い余るエネルギーで圧倒される。 魂の映画。
Cinecdockeさん [DVD(字幕)] 8点(2024-08-10 10:44:50)
58.《ネタバレ》 なぜだか惹かれていく、チンピラと女子高生。おそらくお互いの不幸の匂いで惹かれたのだと思うが、実はお互いの不幸のことをあんまりわかってはいないという心許ない風情。また、主役のヤン・イクチュンの、とんぼの頃の長渕剛みたいな息苦しさ。それらが魅力の本作なのだとは思うが、しかし。暴力がヒリヒリしすぎで見てられなかったなあ。どうしようもない嫌悪感。切実なものを見ているような気持ちにもなっていましたが、おそらく切実なのは「貧困」だったのだろう。オラは好きじゃない。
なたねさん [DVD(字幕)] 3点(2023-07-29 21:01:44)
《改行表示》
57.《ネタバレ》 膝枕で泣くシーン。 互いに何故泣くかの説明がないのがすごい。  サンフンがどうやって死んだのか、ヨニへの説明もないからすごい! いつも説明できないことばかりなんだ。  ただ、学芸会に行く約束ってのは急に日曜ドラマっぽい。
LOISさん [インターネット(字幕)] 7点(2022-02-12 21:53:23)
56.《ネタバレ》 多部未華子にそっくりなキム・コッピのキャスティングがばっちりはまっている。多部よりも線が太く勝ち気で意志が強く母性も強いヨニの役をしっかりと演じている。暴力シーンがこれでもかというぐらい溢れているが不思議と過剰だとは感じられない。オールドボーイとかの方がむしろ狙った感が透けて見える。設定としてはよくある優等生女子と不良男子の恋愛ものカテゴリーにもみえるが、この映画の独自性は暴力性ではなくむしろ「家族」という人間関係にこだわっている点だと思う。父の虐待により家族が解体し、母も亡くし彼を憎悪し、家族というものを忌避するようになったサンフン。しかし腹違いの姉の息子ヒョンインを不器用な表現でかわいがり、やはり家族を希求しているサンフン。一方ヨニの家族も母は既に亡く、父親は呆けており、兄もグレて金の無心しかしない状態で完全に崩壊している。彼女も孤独であり、家族のぬくもりを求めている。物語が進むうちにサンフン、ヨニ、ヒョンインの3人の疑似家族が醸成されていく。そしてサンフンが変化するのは父親を殺そうとしたのにすでに自殺を試みていた彼を見つけ、必死で救おうと病院に担ぎ込み輸血までする。自分の中にあれだけ遠ざけようとしていた拭い難い家族への愛情をはっきりと確信したのだろう。そして夜河原でサンフンがヨニに膝枕をお願いするシーンは互いの心境の変化と心情の接近が非常に過不足なく甘ったるくもなく抒情的に描かれたいいシーンだと思う。サンフン亡き後のマンシクも含めたヨニ、姉、ヒョンインの疑似家族的な温かい交流シーンが描かれるが、そのあとすぐにそれをを打ち消すかのようなシビアなラストシーンはヨニにとっては救いがない残酷なシーンでこれも監督の甘ったるくしないぞという意思が感じられなかなか良いと思った。そういう意味ではこの作品は人間の残酷さと愛情深さという両極の要素のバランス配合が非常に優れた良い作品だと思う。
エリア加算さん [インターネット(字幕)] 8点(2021-10-16 22:02:57)
《改行表示》
55.《ネタバレ》 公開当時、見終わった後、普段なら絶対買わないノベライズ本を買って帰りました。何か手元に残したくて。  その後何度か見返してますが、何度見ても胸が詰まります。 サンフンの暴力でしかコミュニケーションが取れない哀れさ。 ヨニの辛い環境でも無くさない自尊心と母性の健気さ。 どちらも、やり場の無い気持ちをもてあまして自分がつぶれそうになってる。  言葉で表現できたり人に伝えられたりできれば、少しは気持ちが軽くなるけど、 二人ともそれができません。 サンフンは言葉を持たず、ヨニは高校生には抱えてるものが大きすぎて、できません。  サンフンの末路は予想できるものだし、ラストにも救いがありません でも、生育環境や生活環境が、いかに子供に大きな影響を与えるかとか、暴力の連鎖や因果応報とか、この作品はそんな教訓めいたことを言ってません。 何も分からせようとか教えようとか、そんな意図が無く、あるがままをぶつけてくるから見てて苦しくなります。  ただ見る者に何かを感じさせ、振り返ったり決意させたりする。 救いが無いからこそ、何とかしないとけいないと思わせてくれる作品だと思います。
nanapinoさん [DVD(字幕)] 8点(2019-02-19 19:25:36)(良:2票)
《改行表示》
54.《ネタバレ》 舞台は現代の韓国。幽霊も怪物も超能力も魔法もない世界。 それはつまり日常で、そして暴力男が主人公の映画。  徐々に主人公の男の生い立ちや現状がわかる。 毎日の生活、行動の裏側がわかり同情してしまう。 同情できる面があるように撮られてるから、当然だ。 しかし主人公の男はクズだ。 関わりたくない。  ヒロインの容姿はかわいい。 もしデブでブスの役者が演じたのなら、映画の印象は大きく変わる。 ヒロインに友人は一人もいない。家庭でも学校でも、どこでもいつでもヒロインは孤独だった。 そう見えるのは、そう描かれてるから。 そう描かないと、この映画が成立しないのである。つまりこの映画のヒロインには根本的に矛盾がある。大嘘なのである。誰もが同情してしまう、勝気で、実はとてもやさしくて聡明で薄幸な美少女なんて実在しないから。  さて、ヒロインの弟の視点でこの映画を観ると、印象は大きく変わる。 主人公は殺した方が良い、憎むべきクズ男にしか見えない、かもしれない。  ところで、なぜヒロインはツバ吐きかけられたのに、主人公のおっさんに電話番号を教え、何度も会ったのか。「不良が好きになる女子の心理」か。もし主人公を演じたのが、デブで臭そうでブサイクで暴力ふるうオタク青年っぽい容姿だったら? 成立しない映画かもしれないし、逆に(一部の)オタクに大絶賛される映画になるかもしれない。  高評価の映画だが、もし初めて就職した会社の上司が主人公のような男だったら? 感動のストーリーに作られてるが、実は全然いい話じゃない。大嘘の作り物である。  この映画には金持ちが一人も出てこない。 スーパーヒーローが一人も出てこない。 幽霊も怪物も超能力も魔法も巨大ロボットもない世界。 だが、思いっきりファンタジー映画だ。 しかし、良いファンタジー映画だ。 ということで7点。
激辛カレーライスさん [DVD(字幕)] 7点(2018-12-11 13:56:08)
《改行表示》
53.暴力シーンの連続から一転、漢江での膝枕のシーンは泣ける。 女子高生ヨニの泣く演技が秀逸。 愛とは何か?とても考えさせる深い深い作品。
tonaoさん [DVD(字幕)] 8点(2018-05-12 12:18:53)
《改行表示》
52.主人公が最後はお約束通りなんですけどね。暴力的でコミュニケーション能力が低く、それでいて繊細で傷つきやすい主人公をうまく演じていたと思いますね。 みなさん言われているように、フジモンの上位互換で社長は渡辺いっけいクリソツ 切なく救いようのない物語ですけど味わいもある良作だと思います。
東京ロッキーさん [インターネット(字幕)] 7点(2018-01-23 17:09:19)
《改行表示》
51.《ネタバレ》 お話としてはよくできているが、良くも悪くも韓国映画によく見られるあざとさで、ストーリーの先が見えてしまう。 サンフンは因果応報の殺され方をすると前半でもう予想がついてしまうが、彼女と一緒に歩んでいくためにも今日で仕事を辞めると決めて最後の取り立てに行く時点で、悲劇のフラグがはっきりと。 幸せを掴む直前でぶち壊しにされるのは、あまりにも王道すぎるパターンだから。 そんなわかりきった展開でも退屈しなかったのは、演技が上手いからか。 特に、ヨニ役のキム・コッピが良かった。 サンフン役で監督・脚本も兼ねているヤン・イクチュンも良かったけど、フジモンにそっくりと感じてしまったのがずっと尾を引いて…。 日本でいうなら長渕剛がよくやっていたような役なのに、フジモンが浮かんでは微妙な感じに。  主人公のチンピラに感情移入できれば感動もできたかもしれないが、哀れな奴だとは思えてもまったく同情はできず。 こういう人間は好きになれないし、主人公に惹かれないとどうしても作品の印象は下がる。 不幸な生い立ちなのはわかるが、恨みを晴らすのなら自分を酷い目に遭わせた相手にだけすればいい。 激情的で恨みがましく、八つ当たりのようにだれかれ構わず暴力を振るいまくるさまは、迷惑なクズ以外の何ものでもない。 よくある凶悪犯の弁護で不幸な環境のせいにするのと一緒で、甘ったれるなと反吐が出る。 そんなものは被害者には何の関係もないし、不幸な身の上でも歯を食いしばって真面目に生きている人は山ほどいる。 いい年をした大の男が、いつまでもグレた中学生のようでは情けない。 その点、同じような息もできないほど閉塞的で劣悪な環境にありながら、女子高生の真っ直ぐに澄んだ瞳と健気さが眩しくて、彼女にだけは同情してしまう。 心はボロボロになっているのに、荒みきった男の心を溶かすほどの芯の強い優しさは、聖母のようだ。  そんな心優しき女子高生が呆然と立ち尽くすラストはやりきれない。 ヨニの母に暴力を振るって殺した取立て屋が実はサンフンら一味だと、最後まで気が付かなかったのが救いだろうか。 暴力は新たな暴力を生む。 戦争が止められないのと同じ類の虚しさが、余韻として残る。 同時に、韓国社会や国民情緒の負の一面も感じてしまう。  ※追記 二度目に見ると、フジモン似は気にならなくなって映画の内容に入り込めたので5→7に印象アップ。 サンフンは嫌いだが、やっぱりヨニが健気で良い。
飛鳥さん [DVD(字幕)] 7点(2017-12-31 07:21:26)(良:1票)
《改行表示》
50.上のあらすじが非常に簡潔で良いね! でも、私には「息もできない」ほどの緊迫さは感じなかった。その理由は・・・。 他のレビュワーさんも仰ってましたが、ヤン・イクチュンがフジモンにしか見えなくて・・・(笑) ほんとに粗暴で迫力のあるチンピラなんだけど、どれだけ殴ったり罵倒したり暴れまわっても、やっぱりフジモンに見えて吹き出してしまった。 でも、演技は凄く良くて引き込まれた。 あと少女役のキム・コッピ(ちょっと多部未華子に似ている)も素晴らしい演技だった。 物語は期待したほど面白くない。キム・ギドクの映画などによくあるキャラ設定だし、先も読めてしまったので。
ヴレアさん [DVD(字幕)] 6点(2017-10-24 18:26:52)
《改行表示》
49.《ネタバレ》 サンフン。愛されてるじゃん。たくさんの人に愛されてるじゃん。お前の愛はわかりにくくて伝わりにくいんだよ。お前が破滅的な人間なのならもっと早く破滅しないと。多くの人間の心に通うようなマネをしないで。逆に…、家族や仲間との愛に生きることを選んだのなら最後まで愛さないと。息もできなくしてるのはお前自身だけでよかったのに。ヨニの弟への責任も果たせず、暴力が暴力を生み出す構図の頂点にお前がいるよ。   サンフン。孤独な男。雇われヤクザ。今日も暴力ですべてを片付ける。ヨニ。孤独な女子高生。サンフンとの出会いは最低だが、サンフンとヨニは互いの境遇が似ているためか、交流が始まる。そんなサンフンにも姉や甥に対する彼なりの愛情が。刑務所から戻った父を憎みきれず。葛藤する暴力破滅男。原題曰く「糞蝿」。 サンフンのヤクザ事務所に新入りが。ヨニの弟。物語の展開はここから激動する。   主人公のサンフン演じるヤン・イクチョンが監督・脚本・制作・編集。各国で絶賛を受けた本作は本当に殴るし叫ぶし泣く。うるさい。好きな人にはたまらない韓国の傑作。あくまで好きな人にだけたまらない大傑作。
JFさん [DVD(字幕)] 8点(2015-07-29 22:42:59)
《改行表示》
48.《ネタバレ》 ヤン・イクチュン。やられました。 荒っぽいけど、ある出来事をキッカケに真人間になっていくが、周りがそうさせてくれない、というよくあるパターンだが、ヤンイクチュンはじめ、役者が良すぎて、ベタにならず非常に良作!
ドクターペッパーさん [DVD(字幕)] 9点(2015-01-12 15:22:56)
47.最初観たときは、なんか汚い…と避けていたのだが、久しぶりに全部観てみたら、こんな内容だったのか、と。あとからじんわりと面白さがわかってきた感じ。途中に流れる携帯の着メロがものすごく切なくて、その曲だけ聞きたくて何回か巻き戻したw
おっちょさん [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-09-15 18:56:29)
《改行表示》
46.《ネタバレ》 今のところ韓国映画で一番 衝撃
aimihcimuimさん [DVD(字幕)] 10点(2014-08-03 19:35:35)
《改行表示》
45.韓国映画と言えば女優のクオリティが異常に高いイメージなんだけど、ヨニ役の娘さんが普通の女子高生っぽくてリアリティを感じられたのが良かった。 サンフンの方も根っからの悪人じゃなさそうな雰囲気がちゃんと感じられて良かったです。 暴力描写とまずそうな食事シーンが続いて吐き気がしたけど、ラストの焼肉が美味しそうだったので、多少は救われた気分です。 それぞれに悩みを抱えた2人が惹かれ合うのも納得できたし、出来れば2人で幸せになって欲しかったけど、この結末は致し方ないところかも知れませんね。 負の連鎖と受け取れば後味は悪いけど、サンフンの姿を重ね合わせることで、更生の余地もあると思いたいところです。
もとやさん [DVD(字幕)] 8点(2014-05-28 15:24:33)
44.《ネタバレ》 暴力シーンが多く、無茶苦茶な部分有るが、いい映画。引き込まれるストーリー。でもやっぱり最後はこうなったかと後味が辛い。
竜ヶ沢中段さん [DVD(字幕)] 7点(2014-02-26 23:23:36)
《改行表示》
43.フィルムノワール。 この言葉の意味はよく知らないが、きっとこれは、韓国のフィルムノワール、のはずだ。きっと。たぶん。そうにちがいない。知らんけど。   以前、バカ売れした韓流映画を観て悪寒が走った。 そんな韓流映画とは一線をかくしている渾身の映画。   伝える気満々で、くどくなるところは表現せず、美しい流れのストーリー。 韓国だろうがアメリカだろうが、いい映画はいい映画。あたりまえのことを教えられた。   ちょっとしんどい描写もあるから、暴力表現に抵抗のある人は観ない方が懸命。 人がいない時間にじっくり時間作って観るべきフィルムノワール。    (フィルムノワールの意味を調べた) 対極だ。ウェットだな。こっちは。うん。 おれ、フィルムノワール嫌いだ。うん。言葉はいみを知らずに吐いてはいかんな。 勉強になった。ありがとうサンソン。
おでんの卵さん [DVD(字幕)] 9点(2013-06-23 23:10:09)
42.《ネタバレ》 主人公サンフンは見知らぬ女を執拗に小突いている男を殴り倒し、うずくまり怯える女の頬を今度は自分が叩きながら「お前は殴られてばかりでいいのか?」と問う。その直後、彼の後頭部めがけて振り下ろされる強烈な一撃。わずか数カットで主人公の生き様を示唆するこの冒頭から以降も、映画は幾度となくこうした「反撃」を繰り返す。反撃とはつまり暴力の連鎖だ。ヒロインたる不敵な少女ヨニとの出会いすら、彼女の勝気な平手打ちへの過剰な反撃として描かれる。だが、ひるむことなくこの暴力男と渡りあうヨニが彼に突きつけ求めるのは、反撃へのさらなる不毛な反撃などではなく、缶ビールの形を借りたささやかな詫びと落とし前だ。石段にならんで座る二人に流れる静謐は、サンフンの凶暴な人生哲学が初めてゆらぐその一瞬でもあっただろう。かつて暴力により家族を奪った父に「反撃」として制裁を加える彼にとって、暴力とは元来憎悪すべきものであったはずだ。殴る男(父)への憎しみから受動的に端を発した彼の暴力が、けれど次第に能動的衝動へと肥大し、かつての父のそれと相似形を描いていく恐ろしさ。その矛先は取り立て屋として訪れた先の債務者や手下の弟分に向かう。制裁を超えた私刑として下される父への「反撃」もまた然りだ。原題が示す「糞にたかる蝿」のように強迫観念にも似た暴力衝動に囚われ、自らこそが怪物となるサンフン。一方そんな彼にとっての菩薩となる、自分自身傷だらけのヨニ。互いの過去を嘆くでもなく胸に秘めたまま、夜の漢江のその畔で、痛々しい膿を搾り出すが如く涙をこぼしあうサンフンとヨニ。だが慟哭するサンフンに膝を貸し嗚咽をこらえるヨニが彼女自身の膿を出し切ることはないのだ。容赦のない連鎖の罰を受けながらも魂を浄化するように息絶えるサンフンと、その亡骸を前にやはり懸命に嗚咽を殺すヨニ。そして膿を吐き出せぬままの彼女が回想する、膿の元凶たる母の死。その余白にちらりと過る男の影がやがてくっきりと焦点を結んだ時、ヨニはサンフンの遺した幸福な光景と、等しく彼の遺した拭い去れぬ糞の痕跡、そのはざまに息を呑んで立ち尽くす。彼らのささくれだった魂がまるで閃光のように強烈に、フィルムにそして私たちの眼に焼きつく。恐るべき傑作だ。
BOWWOWさん [映画館(字幕)] 9点(2013-04-28 01:49:44)(良:3票)
41.ほとんどの観客にとって、この世界は非日常でしょう。けれども距離感を感じさせられないのは何故なのか?それは主人公やヒロインのどうしようもない境遇が、多かれ少なかれ見るものすべての共感を得られる種類のものだからなのでしょう。はっきり言って大嫌いです、こういうチンピラ。もしかしたら単なる小心者の偽善者なのかもしれない。でも、受け入れてしまう。彼の中の「良い面」を見つけようとしてしまう。それは何故なのか?作り手の誠意が感じられるからかもしれない。心を動かされるエネルギーを内包した秀作です。
タコ太(ぺいぺい)さん [DVD(字幕)] 8点(2013-03-30 21:43:25)
40.子供や女性や老人や自分の愛するひとが、”暴力”によって”破壊される”殺される”脅かされる”ことを”目撃”したりまたは、”自ら手を下す”事は、”人間”にとってはどのような感情を起こさせるのか?身がすくむのか!?恐ろしいのか?!悲しいのか!?やるせないのか!?どうしようもないのか!?これは映画であって現実ではない。しかし、観客全員が当然、周知のとおり、現実世界はこんなに生ぬるくない!!!!もっともっと、恐ろしい世界なのだ!!(というか人間そのものが、恐ろしいものなのですが)現実にはいろんなヒトがいるだろう。暴力とは無縁で生きているしあわせなヒトもいれば、主人公たちみたいなヒトもいるだろう。もっと、もっと悲惨なひとも大勢いるだろう。。。。。。。ハンガン川でのつかのまの膝枕の二人の”愛の時間”は”涙の時間”は、この世に生まれてきたすべての人間が持つ、”生命のかなしみ”にも思えた。すばらしい映画だな!名作!観ている誰もが、途中から、この悲劇の末路を想像し始めただろう。悲劇で終わるのは間違いない!しかし、どのような結末を迎えるのか?イヤーーやってくれた!この監督!!主人公兼務なだけに、まったく”最高カッチョエーー”死に様をつくったなあ。”最後の日”の仕事に向かうあたりからもうゾクゾクしたね!気弱になってて、逆に客からハンマーでやられて、手下からもボコボコにやられて、もう、脳なんかもメチャクチャだろうに、鼻血だして、それでもやっと歩いて”こりゃまずいぞ、学芸会に行かなきゃ!”ってよ、、、、もう、オレも涙ボロボロだぜ。最高にカッチョヨカッタけど、、、もう、、、合掌です!ほんっと!生き残ってほしかった。
男ザンパノさん [映画館(字幕)] 9点(2013-02-02 21:41:25)(良:2票)
別のページへ
新規登録順】 / 【変更順】 / 【投票順
123
マーク説明
★《新規》★:2日以内に新規投稿
《新規》:7日以内に新規投稿
★《更新》★:2日以内に更新
《更新》:7日以内に更新

【点数情報】

Review人数 59人
平均点数 7.37点
011.69%
100.00%
200.00%
311.69%
423.39%
523.39%
6711.86%
71525.42%
81525.42%
91322.03%
1035.08%

【その他点数情報】

No名前平均Review数
1 邦題マッチング評価 8.14点 Review7人
2 ストーリー評価 8.57点 Review7人
3 鑑賞後の後味 8.00点 Review7人
4 音楽評価 8.80点 Review5人
5 感泣評価 8.50点 Review6人
chart

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS