68.《ネタバレ》 以前見た時は期待しすぎたせいかイマイチな感じがしたのだが、15年ぶりに改めて見てみるとそこまで悪くなかった。妻を殺した過去を持ち、仮出所後も刑務所で服役中に飼っていたうなぎにしか心を開かなくなった人間不信の男と、彼が偶然助けた自殺未遂の女の「人生の再生」を淡々と描いているのだが、やはり昔見たときはこのテーマが少々わかりづらかったのかもしれない。シリアスなストーリー展開だが、ところどころにあざとくない程度に笑えるシーンが盛り込まれていて見やすくなっているのもよかった。(人間不信の男が客商売の床屋を開くという矛盾も考えてみれば笑える発想だ。)今村昌平監督のカンヌでの最高賞受賞作といえば本作と「楢山節考」だが、個人的には本作のほうが「楢山節考」よりも好み。とはいえ「復讐するは我にあり」のようなギトギト感はなく、これはやはり今村監督の演出が丸くなっているのだろうなあと感じられる。(直球勝負の映画だった「黒い雨」よりはギトギト粘りのある映画だとは思うが。)冒頭の主人公が妻を刺殺するシーンは緊迫感とインパクトがあり、このシーンは印象に残った。今村監督の映画はあまり見ていないのだが、また機会があれば日活時代の若い頃の監督作も見てみたい。(2013年10月8日更新) 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 6点(2023-10-17 17:58:39) |
《改行表示》67.《ネタバレ》 ハッピーエンドに向かうのか、はたまたバッドエンドへと向かうのか、不安な状態続きましたが、時の経過が無駄に感じない。男と女の行方を気にしつつ、じっと見ていられるドラマです。 今さらですが、役所広司、今まで見てきた中で一番良いと思える役柄でした。 ただ彼に関しては、ここ最近では、ガソリンスタンドの店員や交通誘導員など一般労働者になりきった気安いオッサン役で、そう、ソニー損保のCM、あれが意外とお気に入り。 ところで自分も一生に一度でいいいから清水美砂をジャイアントスイングしてみたい。 【3737】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2022-03-13 12:50:32) |
66.《ネタバレ》 山下が妻をめった刺しにしたのは、嫉妬、と言うよりは、瞬間的な怒りに任せた激情だろう。そこから自首するまで、彼はうなぎのように表情に乏しくて、何を考えているのかまるで心のうちが見えない。そんな彼が出所してから、多くの優しさにふれて、憑物が1枚1枚剥がれていくように表情が宿っていく姿に、感動と言うよりは、こいつも人間なんだという安堵感を覚えた。 大胆なことを言ってしまえば、山下は妻を殺したが、桂子の命を救ったわけだし、帳尻合わせではないが彼は罪の大半は償ったのではないか。水門の長い階段を一段一段上る彼の姿は、まるで絞首台の階段を上る死刑囚のように見えたが、無事に階段を下りたということはやはり、この映画は彼を赦したということだろう。 うなぎのような生き物と人間の生涯を照らし合わせるのは、いかにも今村昌平監督らしい。しかし、過ちや業を何度も繰り返して、犯した「罪」を知りながらも生きていこうとするたくましさ、そこに人間にしかない美しさがあるのかもしれない。 ちなみに、本作を観てなお、私は今後も平然とうな重を食うだろう。うまいから食う、生きるために食う、ただそれだけ。もしかしたらそのうなぎは、この映画のうなぎの遠い子孫かもしれん。 なんと罪深いものだ、人間なんて。 【タケノコ】さん [DVD(邦画)] 7点(2020-11-17 10:42:39) (笑:1票) |
65.《ネタバレ》 黒い過去を持つ孤独な理髪師、愛しき友はうなぎちゃん。水槽に向かってニンマリ、そっと語りかけるのが日課なのだ。そんなおいらを慕う訳ありオンナ。幸福と不幸を運んできた。子を授かったけれど、頭に痛恨のとばっちりがパチコ~ン。何とも不思議な作品。音楽は「うなぎ」のイメージにピッタリ。感情と発情に身をまかせ…アキラくん怪演。 【獅子-平常心】さん [DVD(邦画)] 6点(2019-07-15 04:49:32) |
《改行表示》64.《ネタバレ》 主人公はモテる外見で、社交性もあり、妻を愛していた。しかし、自宅で妻と愛人の激しいプレイ(浮気)を観て逆上し、刃物で刺し殺す(何度も何度も刺しまくる!)。人間だもの、浮気をするのは仕方ないかもしれない。だが妻が、自宅のベッドでやるなんて、夫を馬鹿にしてる以外に有りえない。 主人公は血まみれのまま自首し、刑務所に行って8年後に出所するが、それがスピーディな描き方で素晴らしい。 色んな人が関わってきて、主人公は再生する。 とても良い映画だと思う。 ところで、私はこの映画を女性蔑視と全く思わない。妻が浮気したいなら、妻と愛人がラブホに行けばいい。愛人の男には自家用車もあるし、ラブホに週一で行く程度の金だってあるはずだ。つまり、妻と愛人は二人して夫(主人公)を思い切り馬鹿にしていたのだろう。思いっ切り強く殴ったら、それ以上に殴り返されることがある。それだけのことである。主人公は全く悪くない。ただ法律上、主人公が刑務所に行くのは仕方ない。日本は法治国家だから。 余談(バグ報告?)。 10回くらいやっても「この感想」が書けなかった。だから試しに、旧デザインにしたら書けた。バグだと思う。サイト側か、私の側か、何が悪いか知らないが。 【激辛カレーライス】さん [DVD(邦画)] 10点(2018-07-09 13:09:02) (良:1票) |
《改行表示》63.《ネタバレ》 ショッキングなはじまりから、ゆるーく描かれる人間ドラマ。 じーっと観てられるのは、監督や演者のうまさか。 佐原という土地柄も作品に良い影響を与えてる気がしました。 20年前の作品ながら、古いんだか新しいんだかわからない不思議な作品でしたね。 【ろにまさ】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2017-08-26 15:11:45) |
62.《ネタバレ》 誠実な夫を裏切り、不貞を働く妻。そんなショッキングな冒頭から始まる。この夫婦に何があったのかは描かれてない。しかし、夫の役所広司にしてみれば、この妻はつかみどころのない(理解できない)うなぎのような存在だったのだろう。だから、この劇中のうなぎは、元妻である。しかし、そんな現実逃避を周囲がほっとくわけない。やがて幸せが手の届くところに来たところで、主人公はうなぎ(元妻)を河に離す。そんな話である。この映画で、ラスト刑務所に行く役所に弁当を渡す清水美砂。この二人がその後、幸せになったことを今村昌平監督の中で整理するために遺作「赤い橋の下のぬるい水」をこの同じカップルで創ったのかもしれない。本作は大人のラブストーリーである。しかも人間ドラマが重厚で見ごたえのある作品である。カンヌ映画賞受賞もうなずける。つまらない男の、子どもを宿した清水美紗の幸せを祈る映画観客のハートを掴んだからだろう。どこの世界も、いい人は幸せになってほしいという気持ちでいっぱいなのだ。そして映画というものもそういう祈りからできた総合芸術なのだと思う。 【トント】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2016-10-01 20:10:32) |
《改行表示》61.1997年の作品と思えないくら、もっと古臭く感じられましたが、、台詞回しとか、棒読みなところとか、少しわざとらしいのです、でもこういうのが海外ではうけるのでしょうか。。 【HRM36】さん [インターネット(字幕)] 5点(2013-08-12 17:09:36) |
《改行表示》60.《ネタバレ》 妻が自宅で不倫中に踏み込んで殺害した男だが、その後は人間不信でうなぎが話し相手。 なんとベタな心の閉ざし方の表現だろう。 その男の前に、妻子ある男との恋愛が原因で自殺未遂をした女が現われる。 よくあるパターンで二人は惹かれていくが、うなぎと重ねて描いているのが切り口として変わっている。 赤道まで旅をしたウナギは、そこで誰の子かわからない子を産み落とす。 そんなうなぎの話をする男には、女の腹の中にいる他人の子を育てる覚悟が見える。 しつこく付きまとうムショ仲間の柄本明が、思わず主人公に肩入れしてしまうほどのウザさ。 【飛鳥】さん [ビデオ(邦画)] 5点(2013-06-07 00:11:18) |
《改行表示》59.《ネタバレ》 序盤のシーンは、物凄くハラハラドキドキ且つショッキングでした。 何故こうもハラハラしたかと言うと、丁度タイムリーに元アイドルグループの娘が、旦那の留守中に男を連れ込んだ所、旦那と鉢合わせ・・・なんてニュースが世間を賑わせているもんだから・・・(この元アイドルグループの娘も、そしてマディソン郡の奥さんも旦那帰って来て、殺されんで良かったね・・・) この映画自体は、シリアスな中にもゆる~い笑わせ所があったりして、印象に残るシーンも結構あるんだけど、何とも掴み所がなくて・・・そういった意味では『うなぎ』でした。 【ぐうたらパパ】さん [インターネット(字幕)] 6点(2013-05-28 11:53:41) |
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58.《ネタバレ》 ディレクターズカット完全版を見ました。最初観た方の作品の疑問を解決するシーンも多く盛り込まれていましたが、逆に作品そのものが安っぽい感じなってしまったような気がします。特に役所広司のイメージが変わってしまうような編集はやめてもらいたかったです。 【ramo】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2012-08-26 00:33:07) |
57.《ネタバレ》 なるほど「うなぎ」なのですね。わかったようで、わからないようで、妙に納得。幸福の黄色いハンカチや遙かなる山の呼び声のように、わたし待っていますとか待っていていいですか言われると弱い。お子様にはちょっとというシーンもあるが、良い映画というか好きな映画だ。 【ESPERANZA】さん [DVD(邦画)] 8点(2012-03-27 17:21:51) |
56.《ネタバレ》 前作未読。前科持ち、しかも殺人となれば後ろめたさは当然であろう。理髪店を始めた場所はのどかだし、周りも面白くて良い人が多いのだが、やはり心を開く事はできない。自分を愛してくれる人もできたが、彼女にはなおさらといったところだろうか。この日々を打開させたのは意外にも嫉妬に狂った高崎の嫌がらせや、金をめぐる醜い争い、そして暴力だったというような感じで、タイトルのうなぎも上手く絡めているし、まずまず見られる内容ではあると思う。俳優陣では佐藤允さんが印象に残った。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2010-12-08 23:35:12) |
55.カンヌ映画祭グランプリ受賞で、日本映画史に残る作品となりましたが、いささか高評価されすぎたかなと思います。どろどろした映画で、今村昌平らしさを堪能できます。役所広司、清水美砂ががんばっていました。 【ジャッカルの目】さん [ビデオ(邦画)] 5点(2010-09-05 02:00:37) |
《改行表示》54.《ネタバレ》 “男の性” というか..人を殺してしまった “男の生き様” というか..しみじみと哀愁漂う作品です... 【コナンが一番】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2010-06-09 12:51:47) |
《改行表示》53.やっぱり今村監督っていう方は、人間の怖いところも綺麗なところもことごとくリアルに描きますね。 素直に面白いといえる作品でした。 【タックスマン4】さん [DVD(邦画)] 7点(2009-10-22 01:21:30) |
52.《ネタバレ》 まさに「うなぎ」のようにヌルヌルとつかみ所の無い作品。素晴らしい演出、シーン、脚本と感じさせる箇所もあれば、所々に現実に引き戻されるほど興ざめする箇所もあって、良い映画なのか悪い映画なのか自分でも点数に迷います。総じて演出と編集などが…微妙でした。テンポの良いコメディというよりは、ブツブツ切れてて違和感があった。2時間以内に収めたかったのかな・・・。冒頭の殺しのシーンで血しぶきがレンズに付着するシーンとかも、第四の壁を意図的に破る必要性があったのか疑問。中身の方は、一種の桃源郷を表現したらこんな映画になるのだろうし、ファンタジー的な映画だと思うので、シナリオの整合性はツッコムだけ野暮なのかもしれません。しかし、この監督の作品が持つ、土臭さ、人間のにおいがする所はとても好きです。そして、随所に描写される水面の美しさが際立ってました。個人的には、役所さんの演技はこの役にはあってないと思ったので感情移入しにくかった。頭に包帯巻いてパイナップルぽくなった箇所は笑えました。清水美砂が柄本明にジャイアントスイングされて、あられもない姿をさらしているところも大笑いしてしまいました。 【Nujabest】さん [DVD(邦画)] 6点(2009-10-14 12:26:58) (笑:1票) |
51.タイトルに似合わず冒頭の衝撃的な展開にまず引き込まれた。淡々とした展開の中に見え隠れする人間の滑稽さが興味深く描かれている。この人間の本質を気取らずに描き連ねるあたりが、今村昌平の巧い世界観なのだと思う。 【鉄腕麗人】さん [地上波(吹替)] 6点(2009-06-20 17:28:59) |
50.男たちがダラダラと床屋に集まっているあたりに味を感じたが、これは今村のものだろうか。男たちの集団は『果しなき欲望』とか『豚と軍艦』とかで描かれてるけど、それらはもっとギトギトしたものを持っていた。今回はサークルのような寛ぎの場で、船大工、やくざもん、UFOきちがいらによる浮世床の世界。この場を提供している役所は一歩退いていて、心的には外部の柄本明に近いのかも知れない。だからギトギトと煮詰まってはいかない。もちろん監督には自分の作品のトーンを定着させない権利があり、こっちに勝手に決められても困るだろうけど、うなぎと言えば『復讐するは我にあり』のドローンネチャネチャとしたカットが印象に残っているので、ついネバっこいものを期待してしまったのだ。人を見る目が優しくなったぶん、ドキッとさせる時間は減ってしまった。昔だったら、柄本明がもっと膨らんだだろう。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 6点(2009-04-13 11:57:26) |
49.《ネタバレ》 今村さんの晩年の作品は、よくも悪くも一般的なストーリーラインに乗っ取った、まとまった映画になってるけど、これはやっぱり息子の天願さんが脚本に関わる様になったからなんでしょうね。独特な笑いや、UFO青年なんかにそういうものを感じます。こういう、過去に影を持った男が再出発を図るも、その呪縛からうなぎのごとくもがいて逃れようとしながら、いろいろあって前進していくという、そういう生き様に私はシンパシーを感じますし、また、どれだけ泥にまみれようとも、その姿を慈愛溢れる目で見つめ続ける今村さんの一人の作家としての寛大さが見て取れる様な気がします。それにしても、今村映画に出てくる女性というのは、やっぱり「男の目から見た女」という印象が強い、いわば古風なタイプですよね。こういう風な古風な女性像というのは、もう今の映像作家が作る作品にはまずお目にかからない。なんだか時代の違いみたいなものを感じてしまいました。 【あろえりーな】さん [DVD(邦画)] 8点(2008-12-29 22:44:03) |