2.世界のロック史を振り返る時、避けては通れない偉大なグループ、ミュージシャンがいる。
ビーチ・ボーイズ、そしてその中心人物であったブライアン・ウィルソンも間違いなくその中に含まれる。
しかし本作で描かれるブライアンの60年代から80年代はとても辛い時代でした。
若くして成功を手にし、天才の名を欲しいままにした音楽の才能。
しかし様々なプレッシャーに押し潰されるように長い長い低迷期に入っていく。
それだけに、その陽気でノリのいいメロディ、美しいハーモニーとは裏腹に、
辛い内容が含まれることは見る前から想像はつきましたが、
この間のブライアン・ウィルソンの日常に何があったのかを初めて知ることが出来ました。
もう少し彼らの音楽が聴けると思っていましたが、あくまでもブライアン個人の物語であり、
メンバーとの関係、特に彼の弟との関わりももう少し見せて欲しかった。
それでも代表曲の1つである”good vibrations”が完成していく過程はとても興味深かったし、
今ではロック史に残る名盤と称えられる”pet sounds”前後の彼の苦悩もまた伝わってきます。
80年代の彼はジョン・キューザック、60年代の彼はポール・ダノが演じましたが、
特筆すべきはポール・ダノです。彼の風貌や醸し出す雰囲気は確かにブライアンを髣髴とさせるものがありました。
2人の弟、デニスとカールは若くしてこの世を去りましたが、立ち直ったブライアンは精力的に音楽活動を続けます。
会うこともままならなかった2人の娘もウィルソン・フィリップスとして大きな成功を掴みました。
今がブライアン・ウィルソンにとって本当にいい時期なのかもしれません。
本作で描かれている時期以降の、復活した彼の姿で作品を締めくくってくれたことも良かったです。