1.《ネタバレ》 心霊を製造する工場の話だとすれば斬新なアイデアだと思ったら違った。
大まかにいえば心霊のいる廃工場を訪れた連中が破滅する話で、いわばスタンダードな邦画ホラーである。全体としてそつなくできた印象はあまりなく、個別の台詞や人物の動作が不自然で引っかかる点もなくはない。ドラマとしては編集者同士の確執と姉妹の情愛の二本立てのようだったが、それ自体が大して心に訴えるところもない。こういう場所にわざわざ行く連中は本当に馬鹿だと思うが、哀れとかとか思わなくて済むので気は楽だ。ただ、こんなことでリーダーシップを求められる会長というのもしょうもない役職だとは思った。
ホラーとしても別にどうということはなく、何かに引きずられる、便所に籠るというのは定番である。しかし内部に夫婦者のようなのがいて、暗いところで密談していたあたりは悪くない。また何か良からぬことが起こっているのを音で暗示する場面があり、クラクションとか固定電話とか救急車などはありきたりの部類だが、たまたま近くにいた男が別件で怒鳴り始めたのは日常に紛れた凶兆の表現のようで面白かった。
登場人物としては、姉役の深月ユリアという人が本物の魔女?とのことで存在感を出している。時々説明なしで呪文を言っていたようなのは何語だったのか(ヘブライ語? アイヌ語? ポーランド語?)。また色っぽい編集者役の大塚麻恵という人は他の映画でも見たことがあったが、現在は結婚して別の方面にも活動範囲を広げているらしい。メイキングで大あくびしていた石原あつ美という人が実質的な主役に見えたが、ほか編集部に残っていた男女や便所ペアの扱いなど見ていると、とにかく若い役者に出番を用意しようという意図をもった企画なのかと思った。