86.《ネタバレ》 これはジャッキー主演映画の中でも、五指に入るくらい好きな作品。
もう設定の時点で白旗を上げちゃうというか、とにかく好みなんですよね。
兄弟のように仲の良い男友達と二人暮らしで、朝起きたら武術の稽古。
それからシャワーで汗を流し、牛乳を飲んで出掛ける。
この一連のシークエンスを眺めているだけでも、楽しくって仕方ない。
お隣さん夫婦に、階下の店主と、近所の人々も魅力的で(良いなぁ、こういう暮らしをしてみたいなぁ……)って、憧れちゃうものがあります。
彼らの愛車「スパルタン号」のギミックにも痺れるし、出張屋台で働く姿も楽しそうで、おまけに謎の美女との三角関係まで付いてくるんだから、もう言う事無し。
子供の頃、何度となく「ジャッキー・チェンになりたい」と思ったものですが「じゃあ、どの映画のジャッキーになりたいの?」と問われたら「アジアの鷹」か、本作のトマスの名前を挙げていた気がします。
ジャッキー自身もベストバウトに選んでいるという、ベニー・ユキーデとの戦いも、本当に素晴らしいですね。
緊迫した空気の中に、適度なユーモアが漂っており、彼だからこそ醸し出せる魅力がある。
飄々として、惚けていて、でも強くて恰好良いという「理想の男性像」「理想の主人公像」を、そこに感じ取る事が出来ます。
対する敵の「アメリカン・ギャング」ことベニー・ユキーデの存在感も抜群であり、この戦いがベストバウトであるという以上に、彼が「ジャッキー映画最大の強敵」である事も、はっきりと感じられますね。
ラッシュの勢いが凄過ぎて、防戦一方のジャッキーが押されまくり、背中に当たったテーブルが、そのまま音を立ててズレ動いてしまう描写。
蹴りの風圧が凄過ぎて、幾つもの蝋燭の炎が、一瞬で消えてしまう描写。
どちらも印象的で「こいつは強い!」と確信させるだけの力がある。
そんな二人の戦いが「窓から落ちそうになった敵の脚を掴み、引き上げて助けてみせる主人公」という形で決着するのも、実にジャッキーらしくて好き。
彼には「相手を殺す」倒し方よりも「相手を救う」倒し方の方が、ずっと似合うと思います。
それと、本作はジャッキーがアクション面で一番目立っている訳だけど、共演のユン・ピョウはヒロインの本命となっているし、サモ・ハン・キンポーはコメディリリーフに徹して良い味を出しているしで、この三大スターのバランスが非常に良かった事も、特筆に値するかと。
思うに、監督兼任のサモ・ハンが「一番情けなくて、散々な目に遭う」という探偵の役を率先して引き受け、兄貴分としての度量の広さを示してみせたのが、成功の秘訣だったんじゃないでしょうか。
弟分の二人には、それぞれ「アクションの主役」「ロマンスの主役」を割り当てて、綺麗に纏めてみせたという形。
ラスボスも「一心同体、三銃士」という合体攻撃で倒してみせるし「三大スター夢の共演」を楽しむならば、この映画が一番だと、胸を張ってオススメ出来ます。
「三菱の宣伝が目立つ」「精神病院の患者で笑いを取る件は、ちょっと浮いているし、テンポが乱れる」などの不満点も、あるにはありますが、まぁ御愛嬌と笑って受け流せる範囲内。
それと、本作についてはDVD版やBD版も観賞済みですが、個人的には一時間半ほどでテンポ良くまとめ、BGMも素敵なTV放送版が、一番お気に入りですね。
色んなバージョンを見比べ、音楽や翻訳の違いを楽しむのも良いものですが「どれか一本だけ選んで欲しい」と言われたら、これを選ぶ事になりそうです。