16.《ネタバレ》 少し違うけどアガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』を思い出してしまった。んでもって本作を見終わってから読んでしまった。どちらも、自分の認識している「自分」と周囲の認識している「自分」の乖離がもたらす苦々しいドラマ。ラストは違うが。本作のほうが百倍救いがあってホッとなる。決定的に違うのは、やっぱり第三者にズバッと本質をつかれたことだろう。しかも直接言われたわけじゃない。隣室のカウンセリングの会話で自分を客観的に見ざるを得なくなる。面と向って言われれば、むしろ反発して終わりだったかもしれない。『春にして~』のジョーンの場合、嫌味を言われることはあっても、客観視できるような機会はなかったことが悲劇的なラストになる。そして2人の夫も好対照。マリオンの夫は堂々と彼女を裏切るが、ジョーンの夫はそれをしない。気持ちは他の女性に動いていても、行動しない。これには何よりマリオンが経済的に自立した女性だったことも大きいだろう。ジョーンは専業主婦で夫の庇護がなければ生きていけない、というのは、夫にとっても重い枷になるのだということがよく分かる。・・・30歳からシナリオを書くようになったんだけれども、恐らく小説も、いや創造し表現するという作業には須らく共通するだろうが、当然の如くこれらの作業は自分と向き合うことを強要してくる。実にツライ。自分の醜い部分をこれでもかと見せ付けられる。当たり前だが、人には百人百様のモノサシがあり、似通っているものはあっても誰のものとも一致することはないし、立場が違えば同じモノでも形が違って見えるのだ、ということを、案外、自分も含めて人は分かっていないということに気付かされ愕然としたものだ。人間死ぬまで発展途上であると肝に銘じたわけだが、下手すると忘れてしまう。でもこういう映画や小説に接すると、思い出させてくれる。マリオンやジョーンのような志向は人間ならば誰にでも大なり小なりあるはずだが、そのことについて自覚が無いことほど恐ろしいものはない。マリオンは自覚できたから、救われたのだ。もちろん同じことが起きても誰にでも自覚できるわけではない。ジョーンは多分一生あのまま・・・、恐ろしい。 【すねこすり】さん [DVD(字幕)] 7点(2010-12-05 01:07:56) |
《改行表示》15.いやいや・・・。己の人生とは?自分とは何者なのか?周りの友人に自分はどう映っているのか?考えさせられる映画でした。隣人の医師のカウンセリングを受ける患者の女性の告白が漏れ聞こえてくる。その最後の告白。あんな形で「私の中のもう一人の私」を語られると厳しいですね。しかし、マリオンの前に次々と現れる登場人物との関係を通してラストの穏やかな心境にたどり着く過程が無駄なく描かれていて、面白おかしい映画ではないですがこれもウディ・アレンらしい映画でした。本作は50歳という人生の後半戦に入った女性を描いた映画でしたが、素直に「私の中のもうひとりの私」を受け入れ己の人生や自分自身を見つめなおすのに年齢など関係ないということなのでしょう。でも、これがとても難しいことなんですけどね・・・。 【とらや】さん [DVD(字幕)] 6点(2010-10-20 21:16:05) |
【zero828】さん [映画館(字幕)] 9点(2009-05-09 11:27:24) |
13.マリオンの気持ちの変化が丁寧に描かれているのは興味深く、自分の人との接し方を考えさせられた。コミュニケーションを通じて知らないうちに他者を傷つけたり、無意識のうちに心の壁を作って他者に疎外感を抱かせたりしてしまうというのは、まさにそのとおりなのだが、そこの程度が難しい。好きでもない他者と関わるのは面倒だが、避けるのは相手を傷つけることになるし、近づいて相手を批判するのも申し訳ない。そこのバランスが大切なのだとわかってはいても、なかなかうまく行かないのは自分の対人スキル不足のせいなのだろう。 【枕流】さん [DVD(字幕)] 6点(2009-04-30 09:50:24) |
12.《ネタバレ》 なんだか心を揺さぶられる映画だったわ。 小さい頃から感情のままに行動するのを避けて、すべてを頭でコントロールしようとしてきたマリオン(知的な人には多いタイプよね)…なんでも理性で処理しようとしてきたから、感情的なことになりそうな場面(弟の奥さんとの話とか、ラリーからの熱烈アプローチとか)は努めて避けてきた(感情のパワーを制御する自信がなかったから?)。 ところがある日隣の部屋から聞こえてくる会話を聞いたことがきっかけで、自分の人生を振り返りはじめちゃって…すべてをうまくコントロールしてあらゆる成功を収めてきたつもりが、実は見たくない部分から目をそらしてきただけだったってことに気付いてしまう…。 ミア・ファローの「今日とってもかわいそうな女性に会って…」のくだりなんて、ホント胸に突き刺さるようでアタシも聞いてて辛かったわ。 でも、マリオンのような強さのある女性なら、こんな事実をつきつけられて一度は落ち込んでも、この映画のようにまた見事に立ち直れるかもしれないけど、弱い人だと…どうかしらね? 50歳でこの状況に立たされてマリオンのようにしなやかに対応できる人って稀だと思うわ。 アタシは個人的に、本当の自分の姿って見えないほうが幸せだと思うの。 嫌なところも含めた自分の本当の姿を見せつけられて、それでも冷静でいられる人がいたら、その人はもはや人間じゃないわ。 人間知らないほうがいいこともたくさんあると思うのよ。 人が自分を本当はどう思ってるか、とかね。 …とにかく、自分の生き方も含めていろいろと考えさせられる、とっても知的な映画だったわ。 あ、あとジーナ・ローランズがすごかったわー。 彼女の表情の変化を見てるだけで、マリオンの心の内が手に取るようにわかるの。 いい女優さんだわー、ホントに。 【梅桃】さん [地上波(字幕)] 7点(2008-02-01 12:20:24) (良:1票) |
《改行表示》11.カウンセリングのひとつの案件内容を延々語って聞かせられるような代物で、何とも退屈。 何か解決をみたように終わらせてはいるものの、人生はいかに自分を納得させるかでしかないんだ、としみじみ。 【カラバ侯爵】さん [DVD(字幕)] 3点(2007-09-08 23:44:02) |
《改行表示》10.《ネタバレ》 観終わったあと、しばらくの間自分の人生や、他人との関係など、言葉にはならないけど色々と考えさせられてしまった。劇中にて、偶然レストランで出くわした、過去にマリオンに教わった学生が「自分の人生を変えさせられた」と、マリオンの授業に対して感謝の気持ちを述べていたが、まさにあのときの学生の気持ちと同じ気持ちだ。この映画こそ「自分の人生を見つめさせられた」と言わざるを得ないほどの衝撃を受けた。本作は、ある意味でアレン教授による哲学の授業なのかもしれない。 描き方も実に見事だ。マリオンは、現在・過去・夢の中を縦横無尽に、かつ全く違和感なくスムーズに行き来する。観客がマリオンと同一化できるような手法や工夫がとられていると思う。人生を見直すきっかけが、隣室からの患者と医者の会話からというのも見事なやり方だ。なにげないきっかけから、徐々に自分を見つめなおすということは、映画の主人公(特別な存在)というよりも、一人の50歳の女性として受け止められるのだろう。 そして最後には、マリオンとホープは一枚の鏡のようにお互いを映し出していく。マリオンを見たホープは、マリオンのようなあんなかわいそうな女性((色々と多くのものを持っていそうでも)何ももっていない人間)にはなりたくないと言って、マリオンの存在が反面教師になり「希望」を見出したように思えた(医者の対応からすると「自殺」したかもしれないけど)。ホープを見たマリオンは、自分の偽りの人生に気づき、人生をリセットして再スタートするという「希望」を見出した。マリオンとホープがお互いの鏡になったように、観客にとっても「マリオン」は自分を映す鏡になったのではないか。 また、白い仮面やクリムトの絵「希望Ⅰ」もいい使われ方をしていた。彼の絵の多くには官能的かつ絶望的な悲壮感が漂っているが、そういう絶望の中にも「希望」は確かにあると感じられる絵だ。 知らず知らずのうちに、自らを人よりも優位にみせようとする行為は人間にとっては避けられないことかもしれない。自分でも傷つけるつもりはなかった、たわいもない言葉が、相手にとってはかなりショックな言葉だったと受け取られたことがあった。その気がなくても、確かに人を見下したような言葉だったかもしれない。相手の気持ちを推し量ることは難しいと思ったことがあった。この映画をみて、そのときのことを少し思い出した。 【六本木ソルジャー】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2006-08-17 22:38:33) |
《改行表示》9.生き方について、とても考えさせられる作品でした。 気づかない内に人を傷つけたりするってことはありますからね・・・・・・。 ただ、自分が知っている自分の姿と他人が知っている自分の姿のどちらが本当の自分の姿なのかというのは非常に難しい問題ですよね。 また、もう少し年齢を重ねたときに見てみたい作品です。 【TM】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2006-04-16 21:25:51) |
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8.妊婦へのカウンセリングをきっかけに、自分を見つめ直していく内容で。ウディアレンならではの、細かい心理描写がきっちり、アンニュイなぼかし方で描かれていて、あ~~なるほどと言わんばかりの出来でした。かなりシリアスに描かれてはいるもの、見ていて疲れないし、役者人もナチュラルで素晴らしかったです。平凡ながら、良く出来ている映画だと思いました。 |
《改行表示》7.まった~りしていて良かった。 この映画のよいところは、話の内容と音楽が素晴らしいほどに合っていた所だと思う。 大人になってから見ると、また違った面白さを発見できるんだろうなぁ。 【kokayu】さん 7点(2004-02-29 22:46:24) |
6.過去の自分を振り返ってしまうことは今でもあるけれど、いつかもっと真剣に過去の自分と、これからの自分を考えるときが来るんですね。50歳をくぎりに、過去の自分の人生と向き合う女性の心理がうまく表現されていました。素敵です。 【civi】さん 7点(2004-02-22 23:21:58) |
5.地味に良い。いや地味だからこそ良い。とりわけ主人公と同年代の人には心に光が、それも一本のローソクがやんわりと灯るような感慨にふけることができるのではないか。否定から始まった人生に悔いを覚え、動揺さえするのだが、だからといって極端な自己肯定に走ってやり直しを試みるわけでもない。あくまでも穏やかに、たおやかにセカンドライフを見つめ直そうとする姿勢に、年輪の重み、人間としての「成熟」をうまく映し出している。また、ジーナローランズをキャスティングしたセンスも光る。女性には相当苦労したであろうウディ・アレンだが、浮世の苦労もムダではなかった。「イイ女優」を見抜く目は確かなようだ。心地良い静穏がハートを満たす作品である。 【給食係】さん 7点(2004-02-22 00:56:41) |
4.このウディ・アレンは、あまり面白くなかった。いい役者がたくさん出ているんですが。 【omut】さん 4点(2003-06-20 08:38:40) |
3.哲学的、回想的、懐古趣味的、ですが好きです。ハックマンとローランズのラブシーンが綺麗。年寄りカップルのラブシーンとして1,2を争うのでは。ラストもかすかにすがすがしいです。 【tamecat】さん 7点(2003-04-14 22:20:36) |
2.日常を無我夢中で過ごしている間は気づかないことが数多くある。しかし、人は誰しも自らの人生を振り返ってしまう瞬間が必ず訪れる。その時これまでの人生に納得するのか後悔するのか。そして納得して生きていく勇気、若しくはやり直す勇気を持てるのか…。そんな思いに駆られている50歳の女性が、たった一人、本当の自分を理解していた人間がいることを知って心の平安を獲得するまでを描く、ウディ・アレンらしい(ちょっと鼻につく)演出で観せる小品(恥ずかしながら、観る前は二重人格の話だとばかり思ってました。映画のタイトルとしては「私の外のもうひとりの私」って感じの方が近いです)。ということで6点献上。 【sayzin】さん 6点(2002-03-07 22:17:11) |
1.ユーモアはない作品だが、実にアレンらしい作品。ニグヴィストのカメラも物静かな視線で描かれたタッチで独特の世界を発揮する。これといった派手さはない小品ながらも、なかなか見せてくれる映画である。ちなみに地味に結構豪華なキャストである。 【チャーリー】さん 8点(2001-09-06 10:53:47) |