1.《ネタバレ》 本タイトルの元ネタは奇抜な衣装でお馴染みアメリカの歌姫「レディー・ガガ」ではなく、日本の加賀温泉郷の観光PRユニット「レディー・カガ」のほう。平成23年発足で今なお継続している息の長い活動であり、私も当時ニューストピックを目にした記憶があります。もちろん「レディー・カガ」の元ネタは「レディー・ガガ」ですから、本作はいわばレディー・ガガの“孫オマージュ”作品、通称「マゴマージュ」ということになります。嘘です。そんな言葉ありません。
本作は「レディー・カガ」プロジェクトに着想を得たオリジナル脚本であり、夢破れたヒロインの再出発を描いた物語・・・と自分で書いておきながら、本当にそうかな?という気がしています。主人公は完全にタップダンサーになる夢を諦めたのでしょうか。女将業に本腰を入れるのでしょうか。イベント終演後の姿は描かれませんが、彼女は再びタップの道へ戻る気がしてなりません。主役としてスポットライトを浴びる快感は、消えかけた夢の火種を再燃させるのに十分な熱量と推測します。女将修行で得た経験はタップダンスでも活かされるでしょう。ただ失礼ながら、彼女がタップで成功するとは思えません。理由は単純です。技量不足だから。
「そんなこと言ったってしょうがないじゃないか」とえなり君なら言いそうですが、肝心のタップシーンが迫力不足だったのは否めません。特に主人公のソロパート。エンターテイメントショウはパフォーマンスの品質確保が生命線です。吹き替え、CG、各種演出。どんな手段を使っても構いませんが、観客を魅了してください。その観点で、明確に物足りないです。「手っ取り早く」「それらしい形になる」「あまり扱ってない題材」というコスパの良さで「タップダンス」に白羽の矢が立った気がしますが、気のせいですか。劇中では素人集団が僅か2週間の練習でステージに立つ設定でした。これは流石にタップを舐め過ぎでは。舐めてよいのは「飴玉」と「女王様のハイヒール」と相場が決まっています。トラブル続出なのに断行されたイベントについても、運営サイド(裏方)の労力を軽視しているようで気分が良いものではありません。少々キツイ言い方ですが総じてアプローチが軽薄なのです。軽くて薄いのが好まれるのはノートパソコンとたい焼きの皮と相場が決まっています。ちなみに主人公のタップ挫折理由として「心の弱さ」が指摘されていました。否定はしませんが気持ち次第でどうにかなる世界ではないとも思います。気持ちはあって当然。その上で「努力」「才能」「運」が試されるのがエンターテイメントの厳しい世界。もちろん『旅館の女将』だって同じ。この物語で描くべきは、己が人生に向き合う「覚悟」であったと感じます。彼女が選ぶ未来は「タップダンサー」か、はたまた「旅館の女将」か。どちらであっても素晴らしいですが茨の道です。私は彼女の「覚悟」が見たかったのです。
「成功して素晴らしい」は理想ですが実際問題なかなか大変です。ですから「覚悟を持って挑んだから悔いはない」が人生の行動指針としておススメ。なんて偉そうに講釈を垂れていますが、実践するのが難しいのは百も承知です。流されるままに生きてきた自身に問いかけると、まるで中世の拷問具にでも入れられた心地になります。「鋼鉄の処女」っていうんですか、あれ。名誉童貞が何言ってんだって話ですけども。