67.《ネタバレ》 “キング・オブ・銅像になった実在の動物”忠犬ハチ公。
死んだ主人を迎えに駅に通い続けたというエピソードを、わかり易く映画化した作品。
東宝が南極物語のヒット以降、子象、子猫と“○○物語”という動物モノ映画が乱発された中、松竹が作った動物映画がこのハチ公物語。
当時は動物の扱いが雑で、ハチが夢の中で上野先生に飛び込むシーンとか、明らかに犬を放り投げてるのは、今ではまず撮れない映像。
そんな時代、終盤のハチの弱々しい姿が、どうやって撮られたのか考えると、ちょっと怖くなる。
実話を極力忠実に再現したのではなく、かなり創作の部分が多いようで、あくまでフィクションとして観たほうが良いみたい。
最初の、秋田から渋谷駅についた時、犬は死んでたってのは、実話ならともかく、創作なら意図のよく解らない演出。
「犬がほしい」って言い出した娘の千鶴子が、犬の世話は父任せ。アッサリ出来婚で家を出て、父の死後もハチを引き取りもしない。動物を飼うには最後まで世話をする意志が必要。って教訓だろうか?
親戚がハチを持て余し、渋々飼うことになった菊さん。史実ではハチを最後まで大事に面倒を見てくれたのに、どうしてアッサリ死ぬことにしたんだろう?
焼き鳥屋や駅員とハチのエピソードを、心温まるものに変えたのは、子供にも観せたい映画だから解らないでもないけど…
仲代達矢演じる上野先生の、溢れんばかりの本気の犬愛。演技の枠を超えて素晴らしかった。
秋田や渋谷駅、上野先生がハチと歩いた商店街の、大正~昭和初期の再現が美しい。
店のお婆ちゃんとか、クリーニング屋?の店主とか、2匹の飼い犬とか、温かい雰囲気含めて綺麗。
一方で最後のシーン、ハチが雪を被って死んでいる早朝の渋谷駅。
年々軍国化が進むような描写もあって、誰もハチが死んでるのに関心を持たないのが、リアルにも見えるけど、一方でやりすぎにも見えた。