166.《ネタバレ》 【再投稿 2023/5/8】
「前書き」
まるでタイミングを合わせたかの様に、心酔していた日本の偉大なミュージシャンが二人も亡くなられてしまった。
悲し過ぎる。
その中のお一人、坂本龍一氏のファン達へ贈り物の様にオープンした「109シネマズプレミアム新宿」。
音響監修だけでなく館内で流れる各種音楽も坂本龍一氏自らが手掛けたと言う。
入場料金は最も良い席で6,000円もしたが、坂本龍一氏への感謝とご霊前の意味も含め奮発した次第。
「本題」
映画鑑賞と言うものは、やはり鑑賞した時の自らの環境や、直面している問題・悩み、その時までに新たに得られた知識によって
より芳醇な経験になるのだと言う事を改めて強く再認識した次第。
坂本龍一氏が手掛けた音響は素晴らしく、贅沢極まり無い豪華なシートの座り心地も良く濃密な3時間を過ごす事が出来た。
残念ながら坂本龍一氏の演技は大根(偉大なる)だったが、それを補って余りあるほどに見応えの有る作品だった。
奮発してよかった。
【前回投稿 2010/7/13】
私に取って、鑑賞する事で気持ちが「昇華」した作品の一つ。
23年前、YMOのファンだった私は「坂本龍一が音楽を担当しているから」という不遜な理由だけで劇場に足を運んだ。
確かに音楽は素晴らしかった。 だがそれ以上に、近代日本史に興味が有った事も手伝い、時代に翻弄されながらも気丈に生きる主人公に感情移入する自分が居た。
終盤、観光地と化した宮殿で主人公が王座の後ろから楽しそうに壷を取り出し、中からコオロギが出てくる~主人公の姿が何処かに消える・・・と言う描写に私は身体の震えが止まらなかった。
壷の中のコオロギ=囚われの身だった主人公に他ならず、壷から出てくる事即ち主人公が精神的にも・身体的にも文字通り「解放」された事で有り、それまでの長い間の主人公の境遇を思い返し、言葉で表現する事が難しい感情の昂ぶり=「昇華」を感じた次第。
淡々とした展開で人に因っては眠くなる映画かも知れないが、良作です。