97.《ネタバレ》 これは観客を不愉快にさせる為の映画なのでしょうか。
不愉快になる理由としては、劇中で行われた暴力や理不尽さに対する怒りが必要になってくると思います。
でも正直、不愉快というよりは退屈に感じましたし、怒るというよりは呆れるという感情に近い。
それが決定的になるのは「仲間を殺されてしまった犯人が、リモコンの巻き戻しボタンで時間を逆行させて、仲間の死を回避してしまう」という場面。
これはもう、完全に興醒めです。
不幸を回避する為に時間を逆行させる展開は珍しくもないけど、これほど唐突なパターンは記憶にありません。
(現実に行われている暴力の理不尽さを描こうとしているのかな?)
(暴力を娯楽として描く映画に対するアンチテーゼなのかな?)
などと、色々考えながら観賞していたのですが、この映画に匹敵するほどの理不尽さは現実世界や他の映画では見受けられないと思います。
よって、現実世界に対する警鐘とも他の映画に対するパロディとも感じられません。
恐らくは「ある戦慄」(1967年)が元ネタなのだろうな、と思えますが、あちらに存在したラストシーンのカタルシスや、背筋が寒くなるほどの恐怖や嫌悪感すらも無し。
致命的なのは、やはり「巻き戻し」によって、一度映画で描かれたものを自ら否定する形になってしまった事ではないでしょうか。
この映画はラストにて、新たな獲物を見つけた悪党二人組が再びゲームを始めようとする場面で終わるのですが、それに対しても恐怖とか、次なる展開への興味とかいったものを抱けないのです。
極端な話、ゲームに飽きた二人が巻き戻しボタンを押してしまえば、犠牲者も全て元の状態に戻る事になる。
犯した罪も全て「無かった」事に出来るじゃないか、と考えれば、彼らが何をやっても、映画の中で何が起ころうと、興味を持てなくなってしまいます。
この映画に対する不快感だって、劇中で巻き戻しボタンを押されたら否定されてしまう、意味の無い物としか思えません。
監督さんは才能のある人なのだろうし、波長が合えば楽しめる映画なのだろうな、とも感じました。
けれど「劇中で描かれた全てを無価値にしてしまった映画」という意味において、これほど「0点」が相応しい品は他に無いように思えます。