4.四谷怪談と皿を数えるアレと混同していた。
顔がただれたお岩さんというのは知っていたが、物語の詳細は知らなかったので、楽しむことができたが、題名に「新釈」とあるので、多少はアレンジがなされているのだろうか。
それはさておき、本作は木下惠介の作品らしく、実に卒のない完成された作品であった。
名優たちの演技も手伝って、重厚な愛憎劇と相成っている。
そして、みんな驚くほど若い!
上原謙もかっこいいし、田中絹代もまだそれほどおばさん臭くないし、杉村春子はお色気を売る役を演じているし、加東大介もまだそれほど太ってはいない。
だけど、例外が一人いた!
飯田蝶子だ。
この人はいつの時代の作品を観ても、常におばあさんだ。
まるで笠智衆の女版である。
「怪談」と聞くと、さぞかし怖いんだろうなぁ、と少し気合いを入れてから鑑賞を始めたが、現代からみれば全く怖くないし、しかもそんなに怖い場面すら多くはない。
それよりも、愛憎劇といった人間性を描いた部分が深く掘り下げられていて、それが物語りの奥行きを深めている。
160分弱の尺の長さもそれほど気にならず、ムダの少ない完成度の高い作品であった。