4.《ネタバレ》 特に、日本においては決して知名度が高いとは言えない歴史上の事件を、かなりシリアスかつ真摯に冷徹に描いた作品、というだけで、とりあえず観ておく価値は間違いなく非常に高い作品だと言える(もちろん、娯楽映画として観れる類いの作品ではない、ということは前提として)。全体的にオスマン帝国政府・軍に対する批判的な製作姿勢が大いに見て取れるものの、例えばエムレのエピソードに代表される様に決してバランス感覚を著しく欠く、という訳でもないと思う。また、主役3人の三角関係的恋愛模様をシナリオに持ち込んだことも、あくまでこの要素は添え物に留められている、という点からしても個人的には決して悪くない工夫だと思えた(こーいうのがあると、登場人物が一層「人間」に見えてくる、というか)。
ただ、本作の意義は重々認めつつも一点だけ指摘したいのは、本作が主に描いているのはとある「結果」であり、より重要なのは「原因」だということだ。何故このような事態に陥ってしまったのか、というのは、本作を観ただけではちょっと分かり辛い、というのが正直なトコロで、その辺の事情、アルメニア人とトルコ人の宗教的差異であるとか、アルメニア人勢力・ロシア・トルコの三つ巴の関係性とそれに第一次大戦が及ぼした影響、といったことは別途自分で調べないといけない。ソコを上手いコト作中に描き込めたのであれば、よりバランス感覚に優れてかつ深い映画になった、と言えるのではないだろうか。