1.《ネタバレ》 チリで悪名高い反共独裁者アウグスト・ピノチェト。
失脚した彼は2006年に死んだが実は偽装であり、250年も生きている吸血鬼だった…。
そんな大胆な設定をモノクロで綴った風刺劇がヴェネチア国際映画祭で脚本賞受賞とのことで鑑賞。
そもそもピノチェトとはどんな人物か?を理解できないと退屈な作品。
新自由主義を推し進めて、チリ国内の格差を拡大させたらしく、血肉=富の隠喩であることは確か。
意外とゴア描写が多く、モノクロだからこそのお伽感が増す。
荒涼とした土地に建つ古びた屋敷で惨めに暮らす彼は死を願っていた。
そこに妻子たちへの遺産相続問題、軍服という権力に縋り付くロシア人執事に、
会計士として忍び込んだ悪魔払いのシスターと、それぞれの思惑が働いて二進も三進もいかなくなる。
若さに執着したピノチェトから吸血鬼にされたシスターが信仰から"自由"になり、空を舞うシーンが美しい。
終盤に明かされる、英語でナレーションしていた女性の正体は、なんと英首相だったマーガレット・サッチャー。
彼女も吸血鬼でピノチェトの母親だったというトンデモ設定のおかげで一気に映画が締まる。
底なしの自由を求めることは底なしの強欲を求めること。
ラスト、二人は吸血鬼の心臓を食べて、さらに若返る。
少年になったピノチェトを小学校に送り出すサッチャーの構図に、独裁政権と新自由主義の萌芽が潜む不気味さ。
"吸血鬼"は世界中、どこかに潜んでいる。
政治の中枢を担っている増税しまくりの総理大臣もきっとそうに違いない(苦笑)。