8.まったく豪華絢爛な歴史絵巻である。実のところ、時代背景もわかるようなわからないような・・・・・・なのだが、「私は謎でありたい」と熱望し、夢に耽溺するルードヴィッヒの姿をあますことなく描ききっていて圧巻。まさに耽美で退廃的な映画。野心的で強欲なワーグナーや、リストの娘コジマ、シシィことエリザベート皇后などもも、かなりイメージ通りだった。ノイシュヴァンシュタイン城の内部の、美しい映像も素晴らしい。オペラ歌手に不眠不休で演じさせるシーンなどは、印象的だったが、現在の大衆テーマパークの原型はここにあるんじゃないだろうかと、余計なことを思ってしまった。 |
7.初公開時、滅茶苦茶な再編集短縮版と知らずに見てガッカリし、その後、4時間の「完全版」を見たもののやっぱり納得いかなかった…。美術も、カメラも、役者も、すべてに超一流であることは認めるものの、物語の叙述ばかりに追われた豪華絢爛たる紙芝居のような印象。見終わった後の空虚感は、ちょっと忘れられるもんじゃない。それが、ヘルム-ト.バ-ガ-扮するあの”狂王”の生涯の不毛ぶりと妙にシンクロするあたり、狙ってたのか…とも思わされるけれど。やっぱりこの映画におけるヴィスコンティは、衰弱している。残念だけど。 【やましんの巻】さん 5点(2003-06-11 14:06:30) (良:1票) |
6.こういう映画はいいですよ、歴史物っていうは。エリザベート王妃役ロミー・シュナイダーはいかにもエロティックでいい。彼女のあの微笑みには、ルートビッヒが惚れこんだのも納得。こんな艶かしい女性はなかなかいないですよ。彼女の魅力には、画面に登場する度に興奮させられました。映画ってある意味美しい女性や景色を保存しておく役割もあるのかもしれません。話も歴史物だけあって面白いです。この淡々と地味に映画が進んでいくのがまたいいです。そして映像美、再現力、どちらとも非常に優れています。 |
5.大歴史絵巻に圧巻。ルードヴィッヒ王役のH・バーガーはイメージがピッタリだった。シシー役のR・シュナイダーはちょっとイメージが実物と違うと思うけれど若い頃にすでに彼女は別の(テレビ)映画で一度シシー役をやっていてすでに彼女なりのシシーを作り上げています。あれだけの美女の誉れ高い女王役をほとんどの人に納得させる美貌と気品はすごい。ドイツ(バイエルン)王の話がイタリア語だったので初めは違和感があったけれど見るうちにそんなこと気にならなくなっていた。 【Jade】さん 9点(2003-01-27 18:22:14) |
★4.ヴィスコンティ映画に嵌まっていた頃、上演されていた岩波ホールにまで観に行った唯一の作品であり、今後もそんなことはないだろう。本作に限らず、ヴィスコンティ映画は、ある意味面白いが、楽しめる映画ではない。だが、ルキノ・ヴィスコンティ本人がイタリア貴族の末裔であるのを反映してか、旧体制が滅んでいく残照を描いて右に出るものはいない。本作は、その集大成とも言える作品であり、史実であるだけに壮大である。ルードヴィヒの狂気と頽廃を追いながらも、全編をセピアで縁取り、決して品格を損なうことがない。ヴィスコンティにはお気に入りの役者というものがいるが、ミス・キャストというものがない。ルードヴィヒのヘルームート・バーガーは無論嵌まり役だったが、当時、絶世の美女と謳われたエリザベート=シシィを演じたロミー・シュナイダーの気品ある美貌は、シシィ役を見事に表現して見せた。ただ、気軽に観られる映画ではない。観る前に、「よし、観るぞ」という覚悟はいるだろう。完全版では、4時間だ。美術監督の苦労が偲ばれる、小物に至るまでの調度やセット、気合いの入ったコスチューム・プレイは、圧巻である。 【由布】さん 8点(2002-11-11 01:04:01) |
3.富と権力を与えられた者には相応の義務と責任が伴う。それをフランス語で「ノーブレス・オブリージュ」と言う。その責務に耐えられなかった男の末路を描いた映画。ヨーロッパ最古の名家ヴィッテルスバッハ家の血筋を引くルートヴィッヒ。そしてその血筋に代々受け継がれる狂気・メランコリーの人格的欠陥は、ルートヴィッヒも逃れることが出来なかった。エリザベート王妃役のロミー・シュナイダーの美しさも見逃せない。この頃がまさに最後の輝きだったと言える。かなりの超大作なのであまり人には薦めないが歴史的な価値を考慮して7点。かつてのヨーロッパ王侯貴族がどれほどのものかを垣間見ることができる。 |
2.生への執着と絶望、死への憧憬と恐怖、相反する感情に揺れるルートヴィヒのおののきは、腐り落ちかけた果実のように甘美です。(映画では)。彼の退廃と凋落は、彼が生から得た魅惑の証しのように思えました。「帝国衰退期のローマ人を手本に、デカダンスの戦士であるとはどういうことか学びたまえ。絶望の中でもがき、鬱々として栄光を愛し、素朴さにおいて腹黒いとはどういうことかを。」シオランの「敗者の祈祷書」の一節です。この映画にピッタリだと思って引用してみました。嫌味に感じた方、ごめんなさい。 【毬】さん 10点(2002-06-08 22:27:28) |
1.異才ルキーノ・ヴィスコンティの遺作(確か?)。「ベニスに死す」を絶賛し,ほとんどマーラーそのもののような性格の主人公に共感し,感情移入してきた人たちにとって,柄がでかいぶん散漫な印象を与えたであろうことが,容易に想像できる。しかし,ドイツ統一という時代の大波に翻弄されつつも,自我を通し悲惨な末路をたどるバイエルン王ルートヴィヒ2世の生涯は,当時既に時代遅れであった絢爛たる様式美に溢れている。中世への憧憬と決して満たされることのない心の空洞と。豪華絢爛たる時代錯誤的19世紀末南独逸王侯物語。大河のうねりのように息の長いワーグナーの楽曲が,ヴィスコンティとルートヴィヒの人生の黄昏を鮮やかに彩っている。 【koshi】さん 8点(2002-01-18 22:17:37) |