1.《ネタバレ》 原作未読。長尺だが、飽きることがなくストーリーに集中でき、鑑賞後は素直に面白かったと感じたので評価は高めにしたい。宗教ネタや重いネタも絡んではいるが、事件のネタ自体はそれほど驚かされるものではなく、比較的ありふれた猟奇的殺人事件がベースとなっているものの、捜査の推移を見守っていれば、それなりに楽しむことができる。事件の謎や人間関係は一見複雑にみえるが、比較的シンプルで丁寧な作りとなっているので、付いていきやすいと思われる。観客を置き去りにして、製作者の都合でストーリーをガンガン進めるというようなハリウッド映画のような作りではなくて、捜査を依頼された雑誌記者と同じような目線で観客はゆっくりと丹念に事件を見つめることができるのも好印象だ。シンプルで丁寧な作りとはいっても、訳の分からない伏線を張って自滅したり、登場した瞬間に「オマエ犯人だろう」というような単純な作りではなっておらず、犯人や事件の真相は最後まで分かりにくいので、ハリウッド映画とは異なる“新鮮味”を感じられる。スウェーデンの最近の映画はあまり見たことがなかったので、この機会に見られてよかった。
また、ハリウッド映画とは異なり、派手さがない一方で、エログロ度が高いというのも特徴。殺そうとする直前に、水を飲ませてやるといったやり取りなどは、なかなか興味深い視点からも描かれている。
リスベットとミカエルの微妙な関係も物足りないながらも、興味深く描かれている。この二者の関係がより深まるのは“続編”を待つしかないようだ。ただ、自己の感情は押し殺し、暴力的な感情に満ちているように見えるリスベットだったが、ミカエルにメールを送付した時点で、心のどこかで何かを求めているのではないかと推測もできる。
リスベットは消えない“過去”をもっているからこそ、ノーマルとはいえないアプローチを図り、一緒に寝ようとするミカエルに対してストレートな対応ができないところも何かを雄弁に語っている。抱いてはいけない感情が溢れてきたから、あの時に姿を消したのだろうか。忘れることができないから、刑務所に逢いに来たのだろうか。
サスペンスの面白みだけではなくて、こういった複雑な感情が入り混じっている点も面白みの一つとなっている。単純化された相対する性格のコンビとはやや異なるタイプのコンビであり、二者の微妙で単純ではない関係も本作を豊かなものにしている。