3.弟を殺害された主人公が、悪徳保安官への復讐を誓い、刑務所を脱走……とくれば、何やら殺伐とした暴力映画を想像してしまうのですが、さにあらず。ノンビリした映画です。まあ、主役がバート・レイノルズですし、この主人公、あまり“復讐”に一生懸命という訳でもなく、ノンビリまったり、楽しそうにやってます。そもそも、酒密造の罪で服役していた主人公、弟の死を聞いて、刑期残り僅かなのに脱獄を試みる、そこまではカッコいいのだけど、アッサリ捕えられてしまう、というのがなかなかイジワルな脚本です。で、当局の捜査に協力することを条件に正式に保釈されるのだけれど、両親のもとに帰った主人公、更生したことを褒められるのかと思いきや、逆に「密造仲間を売るなんてとんでもない奴だ」と親からなじられる始末。筋金入りの密造一家なワケですな。これがどうにも可笑しい。可笑しいけれど、なるほど、この件に限らず、この映画には、多様な価値観が渦巻いているのですな。だから、一本気に見えた主人公も、ひたすら復讐に燃えてる訳じゃなくて、もっと活き活きとした存在として(復讐アクション映画の主人公としては頼りない存在かも知れないけれど)、すべてを楽しんでいる。そうは言っても、一応、保安官との対決となる訳だけれど、そしてまた、クレジットに「ハル・ニーダム」という名前がある以上、カーチェイスとなる訳だけれど、これといってクラッシュシーンもない、これまたノンビリしたカーチェイスが、のどかに展開されてゆきます。保安官との対決の結末、これがまた実にスバラしくて、爆笑してしまいました。