2.《ネタバレ》 盗み撮りを交えたゲリラ撮影的なマンハッタンロケと画像の粗さが、街の猥雑で荒んだ様相を生々しく伝える。
滑稽感すら漂わせる調子はずれのロックグループやホームレス達が醸しだす気だるい停滞感が、カウンターカルチャーの行き詰まりを如実に物語る。
しかし一見ラフにカメラを廻しているようでいて、蒼暗い街路とスポット的な赤(口紅、シーツ、衣類、血)の意識的配置は終始明確だ。
逆光の中に浮かび上がる主人公のシルエットと電動ドリルの芯の鈍い光の見事さ。
主人公の眼窩に落ちる黒い影の凄み。眼の見えない相貌は、生気や理性を感じさせない。
ガラス越しのイルミネーションを背景にしたドリル殺人の鮮烈なイメージ。
夜の街中、路上のホームレスたちに主人公が無差別的に襲い掛かるアクションの俊敏さ。
そして圧巻といえるクライマックスの緊迫感。
主人公が待ち伏せるベッドの側のルームランプを女性が消灯した途端、画商殺害シーンと同様の「赤」が画面を覆う。
赤一色の画面と女性のモノローグ、そして沈黙というほぼ最小限の要素が、最大限のサスペンスを発揮する。
低予算を逆手にとる積極的な消去法が実現した息詰まるラストが鮮やかだ。