5.《ネタバレ》 “1930年代の英国に舞台を替えたシェイクスピア劇”として良くこの映画は紹介されますが、でも違うんだよなー。たしかに流れる音楽や衣装や車は30年代風ですけど、この映画が描く英国は、決して50年前はヴィクトリア女王が統治していた英国ではないわけです。ましてヨーロッパや世界の情勢はまったく物語には関わってないし、いわば“脳内イングランド”とでも言いましょうか、それこそ西暦何年なんてことはなんの意味も持たない実に不思議な世界だと言えます。そんな“脳内イングランド”で繰り広げられる王族たちの死闘は、セリフ回しからしてもシェイクスピアの世界そのものでしょう。 E・ホークの『ハムレット』もそうでしたが、せっかく舞台を現代風にアレンジしたのなら、セリフやプロットももっと弄って欲しかったところです。 I・マッケランのリチャード三世は、もう心底キャラになりきるという才能の素晴らしい見本の様なものです。特に目を瞠ったのは、倒れたリチャードが振り向くと牙を生やしたイノシシの様な怪物顔に変わってしまうカットで、I・マッケランはこれがやりたくてこの映画を創ったんじゃないかと思うほどです。リチャードの最期は、『ダイハード』でのH・グル―バーの死にざまと同じ様な映像なので苦笑してしまいました。そしてリチャードの顔を見てるとどうも誰かに似てると気になってしょうがなかったのですが、観終わって気がつきました、東野英治郎でした(笑)。 【S&S】さん [ビデオ(字幕)] 6点(2013-07-19 22:42:38) |
4.《ネタバレ》 1930年代のラジオから聞こえてきそうなBGM、そのころの軍服、ファッションやメイク、クラシックカーや汽車などに魅了されっぱなしでした。2度目に鑑賞した時、古本屋で入手した原書を片手に原作と比べながら見ようと思ったのですが、絢爛たる画面のせいで途中で挫折しました。かなり省略している感じですが、リチャードとの決戦を前にしてのリッチモンド伯ヘンリー・チュダーと亡きエドワード四世の王女のどさくさの婚礼とベッドシーンは創作のようです。この二つのシーンと前後のカメラや構成がとてもうまいのです。醜いおっさんのリチャードを見慣れてきた鑑賞者に、(王女のうれしそうな顔は映りますが)どうせこっちもたいしたことはないだろうと思わせておいて後でヌードまで奮発、原作での政争の犠牲者の幽霊が出るシーンはリチャードの悪夢に換えて、大胆不敵な童顔のリッチモンド伯と王女の決戦前のロミジュリにも劣らない甘いベッドシーンと対比させ、そしてそのリッチモンド伯とリチャードのチェイスと一騎打ちと最後まで飽きさせませんでした。婚礼とベッドシーンにこだわりたいのは、ヨーク家の女性との結婚によってランカスター派のリッチモンド伯ヘンリー・チュダーが戦乱に飽きた民心をつかみ、次のチュダー朝創設の契機となったからなのです。どの俳優さんの演技も非のうちどころろがないのですが、あえて素敵なファッションで登場した女優陣を褒めておきます。「弱きもの汝の名は女なり。」を地でいった前王朝の皇太子未亡人アンはとてもきれいで哀れでしたが、政争渦巻く薔薇戦争の顛末において、次男クラレンスを殺した三男リチャードをヒキガエル呼ばわりして見捨てた母のヨーク公爵未亡人、二人の息子が生死不明ながら、唯一手元に残された娘を本来は敵方だったランカスター朝の末裔リッチモンド伯と結婚させて平和への切り札にしたエドワード四世の未亡人エリザベスの二人の賢く強い女がいなかったら次王朝への道は開かれなかったのです。 でも、王位継承のもめごとで近代戦の戦車が稼動されたことってあったっけ・・・(マイナス1点要因)。 【かわまり】さん [DVD(字幕)] 9点(2009-03-22 13:08:22) |
3.《ネタバレ》 英国の名優、サー・ローレンス・オリビエの「映画・リチャードⅢ世」が凄かったので、それより若いサー・イアン・マッケランの「リチャードⅢ世」ということで、英国中世の陰謀劇と思い、注文したビデオをみてビックリしました。なななんと!冒頭から戦車が壁を打ち破って進撃して来るではないですか「わぉー!」。こんな現代風にアレンジされてしまうとは・・・。しかし、ピカレスク映画としては「ハンニバル」に勝るとも劣らない位の迫力でした。その後DVDも買ってしまうほどのほれ込みようの自分にあきれて居ます。▼自分が殺した王子の妃の口説き方なぞ、本当に学ぶべき(?)ところが多かったのも事実です。あれだけ甘言を次から次と並べられれば、増悪すべき仇にすら心を許してしまう女心の儚さと本人のいらだたしさなどもよく描かれていました。ヒトの心の弱みに付け込んで行く凄みも垣間見させられました。次兄の暗殺場面の暗さは、切ないような暗さで背筋が「ゾック」としました。▼ナチそのもののコスチューム、演説、仕草、軍用列車、等々。最後は戦争映画とも思わせるくらいの迫力でした。さらにバックに流れるジャズ。何をとっても、とても原作がシェイクスピアとは思われない程モディファイされ尽くした傑作です。 【亜酒藍】さん [DVD(字幕)] 9点(2007-11-19 10:35:22) |
★2.シェイクスピア映画独特のカメラ目線で独り言のように喋るシーンが印象的です。ストーリー的に残酷なシーンが多々あるけどイアン・マッケランがいい味出してました。ラスト10分は一瞬戦争映画と勘違いしてしまったべ(笑) |
1.英国が誇る舞台俳優、サー・イアン・マッケラン氏の代表作「リチャード三世」を、そのまま映像化した作品。舞台をナマで観ていたので、映画館で舞台を思い出しながら観ていた記憶があります(笑)観客に向かっての独白部分もそのままなので、リチャードの心の中が分かって面白いです。極悪人のリチャードが、ナチの軍服を身に纏ったマッケラン氏のスマートな身のこなしと、あの凄みのある演技力で、かなりカッコ良く魅力的に描かれています。時代背景も舞台と同じく近代に置き換えているので、ロケは撮影当初のイギリスの現状を垣間見る事も出来ますし。個人的に元になった舞台に非常に思い入れ強いので、あの世界を映画にしてくれた事に感謝したくて、ちょっと甘めですが9点献上です。 【n@omi】さん 9点(2004-03-01 01:32:17) |