7.《ネタバレ》 「Remember Me(私を忘れないで)」だって?忘れたくても忘れらんねえよって傑作。
ロバート・アルドリッチはフィルム・ノワールでも多くの傑作があるが、コレは「何がジェーンに起ったか?」と並んで最高傑作の一つ。
ファースト・シーン、初っ端から路上を走る女。
ワケ有り女を拾って車が走り出すと同時にクレジットがズラズラ画面を上っていく。強烈なオープニングだ。
女の荒い吐息は、まるで性向でよがるような荒さすらある。
ミッキー・スピレインの原作「燃える接吻を」のセックスと暴力を盛り込んだハードボイルドの世界観を、アルドリッチ流の“えげつなさ”で描かれる。
SF的な要素を持ったフィル・ノワールは「アルファビル」や「ブレードランナー」等も該当するだろうか。
とにかくこの映画はよく壊す、よく歌う(クラシック)、よく叫ぶ、よく殴る(後ビンタ)、よく死ぬ。取り合えず酔ったまま運転すんなよ。
ヒッチコックの「汚名」も酔いどれイングリッド・バーグマンがぶっ飛ばしてたな。
「三つ数えろ」張りに女性がウジャウジャ出てくる。ドイツもコイツも謎を秘めて。 女性じゃないけど“va-va-voom(ババブーン)”ことニックのオッチャンも癒し。
そんな女たちを主人公のマイク・ハマーは、常に冷めた眼で見届けていく。
ハマーは「Remember Me」というメッセージだけを頼りに黙々と仕事に取り掛かる。だが、たらしだ。
探偵の武器は銃弾の代わりに鉄拳が飛ぶ。
ポップコーンと鉄拳を3発打ち込む、階段での“追い討ち”は本当えげつない。
地道な調査の影でうごめく暗殺者たち。
次々に“人生から”ノックアウトされていく敵や知人、そしてハマーが追う“ヤバ過ぎる”探し物。
ボクシング場に立ち寄るシーンすら、この映画の鉄拳の飛びようを象徴する。
浜辺でのシーンは「アハハ待てよコイツ~(バキドカ)」という風にしか見えねえ。あーあ手錠にしないから・・・片手で何したんだよハマー。
ベッドでのやり取りは最高だったぜ。だから悲鳴(爆)
ところであの“黙秘”のシーンも笑っちまったよ。
終盤の演出は完全にホラー映画というか、SFというかとにかく怖い。そんな場面すら冷めた眼差しで見届けられるハマーは何なんだよ。
ともあれ、衝撃的なクライマックスが拝める映画だった。