6.山下敦弘監督デビュー作にして、山本浩司のデビュー作である本作は、まさしく低予算映画の雰囲気漂う作品ではあるが、そこがうまい具合に良い方向へ向いている。
うだつのあがらない二人の男の生活を描くには、こうした低予算じみたつくりが非常にマッチする。
冒頭のさびれたパチンコ屋でのシーン。
まずこれからして良い。
服装センスの最悪な男二人。
すっきりしない曇り空。
ふきすさぶ風音。
パチンコで暇つぶしという、その日暮らしを象徴ような状況設定が見事にはまっている。
汚いアパートに住み、裏ビデオのダビング下請けという危険なバイトで生計を立てている。
そこに上がり込む、これまた覇気のないプータローの若者。
確かこの映画が作られた2000年前後は、こうした若者がこういう生活をしていて、それなりに楽しく、なんとか生活できた時代だった。
その時はバブル後の不況から脱出できないどん底の不景気とか言われていたけど、今なんかもっと経済状況は悪化しているわけで、2010年になった今となっては、この映画の主人公二人のような生活さえ難しいかもしれない。
とかく規制も増えて、当然、裏ビデオ稼業なんて摘発される確率も断然上がっているだろうし、更にはフリーターの仕事自体も減ってきている。
だから、この映画の二人は、落ちこぼれの若者だとしても、楽しくやっていけたのだ。
そう思うと、現代はますます厳しい環境になってきている。
ぶらぶらと好きなことやって、適当にバイトして、暇つぶしにパチンコやって、疲れたら寝て、みたいな生活すらも現在は難しいご時世だ。
今から10年前の作品だが、こうしてみると「あの頃は良かったなぁ、なんだかんだ自由だったなぁ」みたいな懐かしさがこみ上げてくる。
この先、不況が更に悪化していけば、この作品を未来の若者が観た時、羨ましく感じるかもしれない。
そういう意味で、この映画は、その時代を鋭く切り取った作品として、今後ますます輝きを増すかもしれない可能性に満ちている。
安っぽさが漂う作品ではあるが、有名な役者が出ていてお金がかかっているだけの派手な日本映画に、決して劣らない力をもった作品である。