2.映像がいい。音楽もいい。役者の演技もいい。イマイチと思ったのは、脚本だ。真正面から素直にストーリーを作って撮りました、なので捻りとか驚きを期待しないでください、という作品に見える。
だが、ヒロインの妄想と願望と哀しみと苦しみの表現は凝っていて、とてもいい。彼女の苦悩を映像化した作品として観るなら、淡々と進むストーリーも捻りや驚きのなさも納得できる。それゆえの捻りのない脚本なのだろう、とわかる。淡々と進む場面が積み重なり、ただ一つの山場のラストへと繋がっていく。
娯楽作品を求める方にはまったく向かないが、とても良心的でいい映画であることは間違いない。この世で一番愛する子どもを喪失した母親の、魂の放浪を描いた作品だ。