1.《ネタバレ》 衝動的に殺した過激派ヴィーガンの肉を勘違いで売ってしまい、繁盛してしまう肉屋の夫婦。
グロはあれど臓物系・欠損死体なし、作り物感も強く、90分未満の上映時間でテンポ良く進んでいく。
さしずめ『スウィーニー・トッド』をもっと軽くポップに仕上げたブラックコメディ。
(どちらかと言えば、『シリアル・ママ』に近い)。
…と題材は面白そうだけど、期待が大きすぎた。
笑えるシーンはあれど、後半から失速して妙にシリアスになってしまったのが原因。
元から冷めているようで次第に狂気を帯びていく妻に、殺人に葛藤していく内に戻れなくなっていく夫。
経営も結婚生活も破綻寸前で、過激派ヴィーガンの言動と嫌味な同業者夫婦に一線を越えていく説得力はあるけれど、
もっとコメディに振り切っても欲しかった気がする。
ラストの一言である「ウィニー」に全てが詰まっている。
心臓病を抱え不遇な境遇を持った善人であり、彼の死で止めるか、エスカレートしていくかの分水嶺だった。
過去の発言を悔い、価値観の異なる人たちを理解して歩み寄ろうとした娘の彼氏もいたが、
夫婦にとって肉付きの良い女子供すら食糧としか見ていない皮肉。
極端なヴィーガンも問題だが、その逆も同レベルでしかない。
カニバリズムによる食欲減退で菜食主義者になりそうなメタな構図を鮮やかに切り取る。
元々胃腸が弱く、お腹に溜まりやすいので肉は消極的だが、思想を押し付けず、黙って命を頂くとしよう。