14.《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。ロッセリーニ流のネオレアリズモによる新約聖書マタイ伝の映画化。 ギリシャ神話を題材とした「アポロンの地獄」では日本の雅楽みたいな音楽を使ってましたが、ギリシャよりさらに東方を舞台とする本作ではコンゴ共和国のミサ曲やら米国のブルースやらを効果的に使っていたんですね。むしろバッハのほうが本作には不釣り合いです(笑)。キリスト教の映画にバッハを使うのは当然かもしれませんが、西欧様式の音楽はかえって東方的な雰囲気を損ねるし、とくに終盤では、バッハの音楽が否が応にも扇情的に鳴り響いて、せっかくの乾いたリアリズムを湿らせてしまう。 映像的には、さながら「顔のリアリズム」といった感じで、ひたすら沈黙する人々の顔を連ねながら聖書の神話に説得力を与えていますが、ロッセリーニの「フランチェスコ」に比べると、ちょっとユーモアに乏しい。序盤のヘロデ王の死の場面などには、どこかしら笑える要素もありますが、イエスが成人して以降はユーモアがなさすぎて息苦しいのです。 無神論者なら無神論者らしく、最後まで醒めたリアリズムに徹してほしかったけれど、ユダヤ社会の既成概念をことごとく覆したイエスの主張は、意外に現代の無神論者の立場に近かったのかもしれません。パゾリーニは、不覚にもイエスに共感しすぎたんじゃないかしら? 【まいか】さん [インターネット(字幕)] 7点(2022-04-18 05:48:33) |
★13.《ネタバレ》 最初は「あれ、イエスさん眉毛繋がってるやん」て、そればっかり気になってしまったんですが(笑)、 ずっと見ているうち段々ひき込まれて眉毛のことはあまり気にならなくなりました。 鑑賞していて、私は昔読んだ遠藤周作の「イエスの生涯」「キリストの誕生」という本を思い出しました。 クリスチャンでない自分にとって、奇跡とか復活と言われてもねぇ、という思いからずっとキリスト教は敬遠をしていたわけです。 でも遠藤周作の本を読んだら、奇跡など全く起こせない、一人の非力な人間としてのイエスが描かれていた。 それは驚きだったし、すっと受け入れられるものでした。 本作は、奇跡とか悪魔とかが描かれていたとしてもそれはものすごく淡白な描き方で、悪魔もその辺のおっさんにしか見えません(笑)。 そんなわけで見やすかったことは事実です。ただ、淡白すぎるが故に娯楽的な楽しさとは対極にある映画です。 ラストも復活して洞窟から出てくるのかと思いきや、復活したんですよ〜って姉ちゃんが告げに来て 別のところでイエスが元気に立ってるっていう。要はこっちの方が忠実なんですかね。 「キリストの誕生」の最後は、なぜイエスの死後、弟子たちによって教えが直ちに流布できたのか、 なぜ汎神教のヨーロッパでイエスの教えが信じられるようになったのか、それは大きな謎であるというようなことが書いてあったと記憶してます。 本作を見てると、何もない時代の人たちにとっての言葉の力というのは絶大だったのだろうなという気がしました。 黒人音楽見たいなBGMが使われてたりもしましたが、意外とマッチしてました。 【あろえりーな】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2018-05-08 21:18:48) |
12.宗教的な関心が無い場合には映画として観るのはツライと思う。 それだけ、自然な描き方かもしれないが。 【simple】さん [CS・衛星(字幕)] 4点(2018-04-30 18:55:19) |
11.《ネタバレ》 福音書の内容がそのまま映画化されていて、ストーリー的な脚色や映像的な演出が映画の体裁を整えるうえでの底辺に抑えられている印象を持ちました。製作者はイエスに対するイメージを出来る限り鑑賞者に委ねようとしているようで、ドキュメンタリー的な趣きを持ったイエス像だったと思います。 で、私が感じたことですけど、後年のイエスには体制や富裕層を糾弾するシーンがやたらと目立ちました。まるで「活動家」です。体制側から目を付けられて当たり前ですよね。イエスが起こした幾つかの「奇跡」と活動家的な側面が一人の人物像の中に上手く収まらない印象を持ちました。 以下、ほとんど余談です。イエスは超能力者だったのだと思います。主に治癒能力。現代ではアニメやラノベで当たり前のように見かける能力ですが、そのキャラが宗教の創始者になるようなお話はありません。超能力と生き方を説くことは全く別次元のお話だからだと思います。現代でも科学的に説明が出来ないことを宗教にしたがる輩は後を絶ちません。でも、それは科学が未だにそれらの事象を説明できるほどには進んでいないだけだと思っています。あー、やっぱり私はキリスト教が嫌いなようです。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-02-13 00:30:01) |
10.有名なエピソードの連続で、キリスト伝入門としてはなかなかよいのではないでしょうか。「超人」としてのイエスと、平凡な人間である両親や弟子たち・民衆との対比がよく表れており、こうした表し方もうまいと思います。全般的にリアルな演出で、この映画においては聖書の内容が真実かどうかは、争う余地がないようです。音楽はバッハのようなクラシックだけでなく、ゴスペルなども使われていて面白い。特に最初と最後の"Gloria"が印象的でした。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-12-12 20:54:03) |
9.《ネタバレ》 イエスの台詞はほとんどが新約聖書そのまんま、出てくるシーンも「ああ、あれ」と思い当たるものばかり。しかし、その愚直なまでの誠実な作り方と、主演の彼の奇妙な迫力、余計な装飾ゼロの役者のリアクションなどが相まって、湧き出るようなインパクトを与えている。再三背景に出てくる不毛の荒野の映像も強力だし、一方で街というか集落にしても、斜面に辛うじてへばりつくような感じで設置されていて、こういう一貫した「別世界感」が、その発言や行動などとは別の角度から、主人公イエスの存在そのものを浮かび上がらせているのです。 【Olias】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-09-23 04:43:42) |
8.イエスの行動が当時の人たちの心にメチャクチャ響いたから今のキリスト教があると勝手に思い込んでいます。聖書は後付けの作為的な物語だと勝手に思い込んでいます。なのでそれを説明的にダラダラと見せられても、ただただ苦痛なだけでした。 【ProPace】さん [CS・衛星(字幕)] 1点(2017-09-22 22:24:47) |
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7.《ネタバレ》 パゾリーニはフェリーニの「カビリアの夜」で素晴らしいシナリオを残しているが、コイツの映画だけは無理です。 ゲドゲドとかクソミソとかそんなレベルじゃない。もう吐くものが無えよ。俺を殺す気か。 が、そんなパゾリーニも物凄くまともな映画を残していたようだ。 「奇跡の丘」はキリストの受難を描いた典型的な聖書ものらしいが、パゾリーニ特有と言える謎の神々しさ。 「ソドムの市」まで行くと禍々しというか、おぞましいオーラになってしまうがこの「奇跡の丘」はイエス=キリストという神に近い人間の物語だ。 神に近いと言っても、神じゃない。普通に血を流す人間なのだ。 かといって、その教えは同じ人間から邪道視察され抹殺されようとする。そんな男の苦悩、地面を歩み続ける姿が出す眩しさというべきか。 案外このキリストはパゾリーニ本人なのかもな。 他者とは違う境地を見出し、それが受け入れられず抹殺されようとする・・・パゾリーニの人生を思うとちょっと切なくな・・・いやなるようでなんねえな。だってパゾリーニだし。 パゾリーニのクソ野郎は大嫌いだが、「奇跡の丘」は別だ。オススメです。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-03-17 07:58:14) |
6.「キリストもの映画」ってのは、あちらの「忠臣蔵」なんだな。観客は話をすっかり知ってて、それをどう料理するかが見せどころ。あの役は今度は誰が演じるんだろう、といったキャスティングの楽しみとか。だから量産されても、キリスト教徒用という枠が感じられて、異教徒にはちょっと疎外感があった。そういった中で、キリスト教と無縁の私でも楽しめたのが、『ジーザス・クライスト・スーパースター』と、これだった。ドキュメント・タッチで、素人の顔の力が画面にみなぎっている。サロメはいたいけな少女で、マグダラのマリアはおばさん。そして民衆の顔、顔、顔。当時を再現したって感じでもなく、髪形なんかは現代のまま。それがキリスト物語の普遍性を打ち出した。説法して回っているときの、通行人の薄ら笑いなどに、ゾクッとするほどのリアリティがある。無名の教団に対する「変な人たちね」という視線。こういう視点がハリウッド製のキリストものには欠けていた。処刑前に刑吏たちがたむろして食事してるあたりもリアル。人間キリストを出すより、彼の言葉に集中する。こんなにも説法に時間を割いたキリスト映画はなかった。イタリア語圏でない者は字幕を次々読まねばならないのでつらいところだが、新約聖書を改めて点検してる感じ。ユダもなんの解釈もせずに、おそらく聖書どおりにそのまま描いているのだろう。この監督の映画には、斜面がよく出てくる気がするのだが、とりわけ本作と『デカメロン』三部作で印象が強い。崖や斜面を民衆が上下し、それがタペストリーのようにも見えてくる。音楽はバッハあり、黒人霊歌の「時には母のない子のように」ありで、あとアフリカの民族音楽が生きる。とりわけ復活の場。 【なんのかんの】さん [映画館(字幕)] 8点(2010-05-08 12:01:52) (良:1票) |
5.モノクロ映像はとにかく美しい! だけど、それだけの映画。 特に、キリスト教に感心の無い人にとっては、辛い作品。 【にじばぶ】さん [ビデオ(字幕)] 4点(2007-09-09 23:21:13) |
4.【DADA】さんが触れておられる導入部について付け加えさせてください。マリアの緊張した面持ちが映され、ヨセフの微笑んだ顔が映され、それを見たマリアの顔が安堵の表情で満たされる。処女懐胎の困惑からすべてを受け入れる二人の愛をいとも簡単に映像だけで見せています。聖書にあるイエスの生涯の物語を描いていてもワンシーンワンシーンに見られる素人役者たちの豊かな表情と詩的な映像はけして物語に支配されずに物語を形成してゆく。映画の世界に入って間もないパゾリーニの非凡さが伺えます。そして無神論者パゾリーニゆえでしょうか、説教をするイエスのまるでキング牧師のような芯の強さとカリスマ性を持った人物像が従来のイエスのイメージを大きく変えています。多くの人をひきつける者として説得力があるし、画的にもインパクトがあって良かった。後のパゾリーニの作品を見れば、この作品もまた彼の思想がどこかに反映されているのだろうと想像できるが、そういう見方をせずとも映画的魅力をじゅうぶん楽しめる作品だと思う。 あ、そうそう、サロメの美しさと残酷さの同居が、より美しさと残酷さを相乗効果で増幅させていて他のどの作品のサロメ像よりもすばらしい!と思いました。 【R&A】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2006-06-22 15:41:34) |
3.《ネタバレ》 この作品2回見ました。マタイによる福音書を読む前と後です。読む前は、かなりわからない部分もあった物の、それでも独特の音楽など心に残る部分もありました。で、読んだ後は、原作をかなり忠実に再現しておりとても話に入っていけたし、またキリスト約の役者がまたかなりいい感じで良かったです。 【ソウリ】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2006-05-03 23:00:53) |
2.キリスト映画はたくさんあるが、私にとっては本作がベストである。これはリアリズムなどではなく、ハードボイルド受難劇とでも言うべき物だろう。映像の歴史的考証にはあまりこだわらず、言いたいことを実にストレートに表現している。キリスト役にのっぺりした顔立ちのスペイン人俳優を起用し、角張った顔のイタリア人俳優たちとの異質感をだしているのも面白い。どちらかといえば静かな映画だが、惻々と迫るものがある。それからサロメ役の女の子がすごく可愛い(美しい!)。その踊りは「舞い」という言い方がふさわしい上品なもの。サロメが王女であって、踊り子ではなかったことを思い出させる。ラストシーンのキリストの表情が素晴らしい。実に見事なエンディング! 【トコトコ】さん 10点(2003-10-01 18:20:39) |
1.撮影のテキトーっぽさ加減では、ピンク・フラミンゴに負けてません。これぞへたウマ。妙な雰囲気が横溢してて見入ってしまいます。しかし、遠藤周作の描くキリスト像に親しみを覚える身としては、この映画にはどうしても、いかにも類型的でニガテなキリスト像という印象を持ってしまうんですが。ま、遠藤周作とはアプローチが違う以上、しょうがないんですけどね。 【鱗歌】さん 8点(2003-06-08 00:22:16) |