23.もう少し金俊平の人間像を描いてほしかったなぁ。ストーリーも断片的で落ち着かなかった。美術的には最近にない出来なので非常にもったいない作品に思えた。 |
22.最初にインパクトのある題名に注目した。同名の原作は未読だが、朝鮮には古くから“血は母より、骨は父より受け継ぐ”との考え方があるらしい。また原作には「おまえはわしの骨(クワン)だ」という場面があるそうだが、記憶違いでなければ本作の中には出てこなかった。娘の花子に対する「わしはいったいおまえの何や」との言葉とならんで本作のテーマに関する場面だけに、理解に苦しむ。とにかく最初から最後まで金俊平の傍若無人な行動がこれでもかと展開されるが、一貫して子供(特に息子)を欲し、異常なまでに金に執着する俊平にとって、子供と金こそが自らの化身だったのではないか。家族のためには一切金を使わない俊平だが、だからといって自らの遊興に浪費するわけでもない。ひらすら本能のままに金と暴力とセックスで自分自身を拡張するがごとき、究極のわがままな生き方にはとうてい共感できるものではないが、当時異国の地で自己実現をしていくのは、奇麗事ではすまないことはわかる気がする。しかしそういったことよりむしろ本作は、俊平という一人の「化け物」を通して、昭和の庶民のリアルな営みを切り取った作品として評価したい。時代と共に移り変わる街の風景は見事なまでに当時の空気を再現することに成功しているからだ。 【田吾作】さん [DVD(字幕)] 5点(2005-05-05 11:04:20) (良:1票) |
★21.前作「クイール」とはまさしく対極にある、本来の姿に立ち戻った崔洋一の真価を問う問題作。一旗揚げる野望を抱きながら、朝鮮半島から日本は大阪へと出稼ぎにやってきた金俊平という男が、金儲けと暴力で明け暮れるという壮絶な生きざまで、昭和初期から末期までの時代を駆け抜けていく。一種の“ピカレスクもの”とも言え、暴れん坊一代記といった趣の内容である。とにかく凄まじい暴力シーンの連続で、観るに耐えないような過激さを有する作品だが、平穏な生活を破壊してしまう金俊平の行動は常人の理解を超えるものであり、感情移入を挟み込む余地が無い程の理不尽さである。このあたり自分の為だけに本能のままに生き、他を受け入れると言う寛容さには無縁の男として徹底的に描かれていく。ただ、人間と人間との感情のぶつかり合いから激しいドラマが展開されるも、崔監督自身が暴力描写に心血を注ぎ過ぎたのか、金俊平の傍若無人ぶりばかりが強調されたような印象を受ける。彼にとって未知の土地で生きていくという事が、闘う事と同義語なのは理解できるにしても、これではハミ出し者が単に暴れているだけにしか見えず、本来の生きるという意味からは大きく逸脱しているように思う。純粋に愛を育んだ清子との関係に重点が置かれ描かれたように、人間としての内面をさらに掘り下げてほしかった。ビートたけしはこの人なりの力演を見せるが、相変わらずの一本調子で、過激なシーンだけは、まるで金俊平のDNAと一致したかのような暴れっぷりで、本領を発揮している。また濱田マリやオダギリ・ジョーなどが強烈な存在感を示しているだけに、鈴木京香の描き方には今ひとつ食い足りないものがある。 オープニングに新天地へ向かう若き日の金俊平が、目を輝かせながら工業地帯を遠景に臨むシーンを、エンディングにも用意したことが余韻をもたらし実に効果的であった。 【ドラえもん】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-05-04 01:32:09) (良:1票) |
20.ハードな一家をそのままみているようだった。最悪な親父だけどそれでも心の底から「嫌な奴だな」とは思わなかった。逆に金俊平を白い目で見ている奴に嫌悪感を覚えたほど。前半はグッと引き込まれ、後半は少しトーンダウンしたものの、充分見応えのある映画だった。 【Syuhei】さん [DVD(吹替)] 7点(2005-05-03 23:18:41) |
19.役者の熱演は物凄く絶賛したいが、どうも感情移入しづらい映画。たけしさんはもちろん、オダギリと田畑智子がよかったなぁ。『殺人の追憶』でも感じたんだけど、どうも韓国人の感情の起伏についていけない自分がいる。瞬間湯沸かし器を通り越して、物凄く違和感があるんだよね、怒りの感情に。そこがどうにも付いていけなかった。あと、内縁の妻役の二人は脱いでいて、鈴木京香だけ脱いでいないのが物凄く違和感あった。だったら脱げる女優を当てるべき。べつにあの妻役に鈴木をあてがう必然性も見当たらないし。ストーリーテラーである長男のキャラの立ってないところも、なんで?と思ってしまった。 【ダブルエイチ】さん [DVD(字幕)] 5点(2005-05-02 03:05:01) (良:1票) |
18.梁石日、鄭義信、崔洋一彼らの想いが十二分に詰められており、戦前・戦後を生きた一人の在日朝鮮人一世の一代記としては、かなり真に迫っており、在日の物語としては一番のデキじゃないでしょうか。一世世代には結構こういう人がいたんじゃないでしょうか?あの時代、国では飢餓が蔓延していたでしょうし、まともな職もなく、出世も望めない。野心と欲望に燃え、時と場合には国を売る覚悟(当時は日本国籍なのかな?)で海を渡ってきた人間です。日本人からの差別も受けるだろうし、コレくらいのバイタリティを持たねばならなかったのかもしれない。父を憎めども父に似ていく正雄、父は高瀬川のごとく愛すればこそ人も殺すが、自分は姉を死に追いやる。自分の最期を考え、後継者に指名するも、父を許せない正雄。この父にしてこの子あり、血の因果といったところでしょうか。海を渡ってからカマボコ屋を興すまでの語られない時間が描かれないからこそ想像を掻き立てられます。仕事上知り合う、土建屋の社長で在日一世の人って皆、大なり小なりこんな感じのところがあります。 【亜流派 十五郎】さん [DVD(吹替)] 8点(2005-04-19 23:41:21) |
17.出演者の演技にはやはり見応えがあった。まぁ良かった所と言えばそんなもんだ。とにかくこの作品には見所というのがまるでない。終始心情に変化無く暴れ続ける金修平という男と、終始夫又は父親を憎しみ、悲しみという視点で見続け怯えながら暮らす家族を見せられ続ける我々は不快の他、感想はない。昔、北野武の実際の昔話をドラマ化したものが、陣内孝則と室井滋主演「菊次郎とさき」という題名で放送されていた。その中の主人公ともいえる武の父、菊次郎も俊平の如くどうしようもない飲んだくれ暴れん坊亭主で観るに耐えない様に映っていたものの、息子である武の視点からの話を元に、毎週このろくでなしが実におもしろく描かれ、味のあるドラマに仕上がっていた。俊平と菊次郎とを比べるつもりは無いし感情移入させろとも思わないが、このように一人の人間を物語にするのであれば、そこにドラマを作らなければならないのではないか。この作品にはひたすら感情の不明なモンスターが傍若無人に振舞っているようにしか見えない。原作者の父をもとに作られた話らしく、本当のろくでなしだったのかもしれない。だが、息子である作者からの視点が元なのであれば(武の様にと言ってはなんだが)、自分が見た、感じた父親像をもっと膨らませて描く事ができなかったのか。もっとも息子である作者からのそれが本作の様に本当に憎しみや悲しみしか込められていないのであれば、こんな作品は作らなくていいし見たくもない。 【ホーラン℃】さん [映画館(字幕)] 1点(2005-04-17 17:10:59) (良:1票) |
16.えげつない話やけど、大阪の下町っぽさと在日の人達のイメージはすごっくよく出てるんちゃうかな。役者の演技もえげつなさがすごくでてて惹きつけられる。ドンドン悲惨になっていくんで観てるのがちょっと嫌やし。でも大阪に住んでるからかもしれん、こんな世界あるかもってすんなり受け入れて観てもーたわ。ただ、自分はそんなに悲惨じゃなくてよかった。最後はそーかみしめてもーた。人には持って生まれた生命力の大きさってのがあると思うんやけど、金俊平の生命力はあふれすぎてる。だから好き放題めちゃくちゃに生きれるんやろね。でも一人でよその国に子供時代にやってきて生きてゆくのには、それくらいの生命力が必要かもしれんな~。ヌクヌク生きてる俺には到底マネできひんし理解もできひん。そこがまた惹きつけられる。観た後はかなり色々消耗するんで気をつけてや。ちょっと長すぎた気がしたんで。七点。 【なにわ君】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-04-12 22:55:59) (良:1票) |
15.暴力が目立つ映画だったけれど、不快さはあまり無かった。金俊平は確かに鬼でやりたい放題だったけれど、それよりも金俊平の商売人としての信念の強さを大きく感じた。良かったです。 【civi】さん [映画館(吹替)] 7点(2005-04-03 06:36:40) |
14. 確実に観た後暗くなる作品です。2時間半にわたってひとかけらの希望も無く、あるのはただ暴力、暴力、暴力・・・。げんなりします。R指定されているだけのことはあります。中学生には見せないほうがいいです。歪みますから。 演技陣はみんな素晴らしいですね。特にビートたけしはさすがです。徹底して暴力的な上に極端な自己中、正直嫌悪の対称にしかなりえないはずのキャラクターですが、しかし何故かその姿からは孤独や哀愁を感じてしまいます。 それと準主役の新井浩史。いいです。虫みたいな顔してますがいいです。強いものに対して極度のコンプレックスを背負いつつ反発する役柄は『青い春』のときと一緒で、きっと彼に向いているんでしょう。あと出番は短いですがオダギリジョーが良かったです。仮面ライダーのくせにどうしようもないゴロツキの息子役を鮮烈に演じて見事なまでに子どもの夢を裏切っています。 僕はあまり好きではないですが、たぶん傑作のはずです。日本アカデミー賞とるかどうかは微妙ですが(てかたぶん無理、内容的に)、キネ旬ベスト10には入るでしょう。憂鬱な気分に浸りたい人は見てやってください。でもホント、楽しいシーンは一つも無いから注意するように。ちなみにカップルで観に来てる奴らがいました。上映終了後しばらく、全く会話していませんでした。(11月13日鑑賞) 【藤村】さん 5点(2005-01-25 18:58:02) (良:1票) |
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13.《ネタバレ》 はじめから終わりまでの144分、終始ブルーな気分にさせてくれる映画だった。映画を見終わってイメージする単語は、暴力、DV、セックス、男尊女卑、自殺、キチガイ・・・、といったところか。映画で描かれている暴力シーン、男尊女卑ぶりはなかなかすごいので、人によっては見れない映像かもしれないな。途中、出てきた豚の解体シーン、本物の映像っぽかったけど、どうたったのかな。映画をみてどういうメッセージがあったのかは良く分からなかったが、金俊平のキチガイぶりがすごかった。家族団欒とかデートとかでこの映画を見るのはあまりお勧めできないなと感じた。 |
12.《ネタバレ》 開始10分で唖然。いきなりそんな事するかー!まさにモンスター。こんな理解のできない怪物を演じた北野武の演技は素晴らしいのひと言。武が登場するだけでなんか緊張してしまった俺。「何もするなよ…変なことするなよ…。」と祈りながら見ていたのは俺だけではあるまい(笑)こんな親父と戦う勇気は俺にはないわ。非常に見ごたえのある映画だった。 【ふくちゃん】さん 7点(2004-12-09 20:11:57) |
11.《ネタバレ》 暴力の恐怖のみで生きていく悲惨。自分の中の鬼だけを信じている。原作での金俊平がやくざ相手に超人的な立ち回りをするシーンや李英姫と子供の悲惨な逃避行や戦争の罹災などがカットされていたのは残念。長屋中心のストーリーに仕上がっていました。予算の問題か時間の問題か。ルックスとしては顔はトミーズ雅で体はバイオレンスジャックと想像していたので少し違ったが、たけしより迫力を出せて物語を引っ張っていける人がいるかというとこれも難しい。新井浩文は相変わらず良し。北村一輝は迫力あり。濱田マリはよくぞ出した。 【チューン】さん 7点(2004-12-06 22:13:09) |
10.《ネタバレ》 原作を読んでしまうとやっぱりね…。ちょっと厳しくなってしまいます。親父が清子を殺したのを見てみぬ振りする家族や、親父をあっさり見捨てる正男(だっけ?)に全然感情移入できず。あんな最低な親父でもほんの少しだけでもいいから救いが欲しかった。バットエンドは嫌いじゃないんですが、あのラストは最悪です。 【ゆうろう】さん 2点(2004-12-02 16:22:53) |
9.欲望のままに、本能のままに荒々しく行動する破天荒な「怪物」をたけしが鬼気迫る熱演。田畑、中村、濱田も強く印象に残り、株を大いに上げたな。昭和の戦時中から戦後、経済成長の様子も上手く描いていた。韓流ブームとやらに乗せられている人達に見せてやりたい。 【ロカホリ】さん 8点(2004-11-24 01:37:00) |
8.《ネタバレ》 背景に静かに存在するセットの情景や、そこで遊ぶ子供たちが意外に印象的。見たことがない時代なのに、とてもリアルに感じた。それはやはり、丁寧なつくり、ということなのだろうか。原作では読後感が強烈だった父子間の暴力は、スピード感ある場面転換で、むしろユーモラスに感じるほど。たけしの存在感は圧倒的だけれど、むしろ、それと対峙する鈴木京香、中村優子という女の映画、のように思ったのだけれど… 【coco2】さん 6点(2004-11-20 03:31:20) |
7.音楽の多用が気になりました。ボカシは…どうせ入れなきゃダメなら、やはり無いように撮った方が良かったのでは?邪魔でした。 主人公像がよくわかりませんでしたが、何だか凄い人物でした。 【じふぶき】さん 5点(2004-11-13 17:26:59) |
6.《ネタバレ》 良くも悪くも、この映画には暴力以外何も無い。 たけしという存在は、凶暴な父親を演じても、金髪の盲目を演じても、とぼけたコメディアンでも、偉大な映画監督であっても、それらを全て凌駕する強烈な「個」を放っている。だから、金俊平という男にリアリティを抱けない。いつだって、たけしはたけし。 【紅蓮天国】さん 7点(2004-11-12 00:11:35) |
5.《ネタバレ》 とにかくパワフル。 その一言に尽きます。 ある在日朝鮮人の半生を二時間半にまとめるには細かな所が判り難い所もありますが それ以上に主人公・金俊平の生き様のパワフルさに圧倒されます。 自分の欲望のまま金儲けをし、女を略奪し、自分以外の人間を人とも思わず生きていく。 こんな男の最期はどんななんだろう?と思っていたら最期まで自分の欲望のまま 死んでいく・・・。これが自伝ならではの映画なんだと思いました。 あんなに暴力を受けても離れない女たち、蒲鉾工場の社員たち。 男が凶暴で怖いと言うだけではないような気がする。 憎しみの他に何か惹きつけれられるものがあったんだろうか? 個人的には濱田マリの脱ぎっぷりに〇 鈴木京香の老け顔に二重〇 でも金俊平は誰を愛していたんだろう? 私としては清子であって欲しい。 【あずき】さん 6点(2004-11-10 17:30:32) (良:1票) |
4.凶暴、強欲、そして精力絶倫、究極の「雄」を描いた映画。自分の気の趣くままに雌を力づくで自分のものとし、純粋に己の為だけに生きるその完璧なまでの傲慢さの前では、「人間として正しいか」などという薄っぺらな道徳観など有無を言わせず吹き飛んでしまう。そういった実在の男の存在感、恐怖がリアルに伝わってきた。この男が過去にどのような経緯でこんな人間になったか(きっと生まれながらにしてそうなのだ)、そして年を取ったその果てに惨めな目に遭って後悔したかなど、そんな些末な筋書きなど観ていて思い浮かばない。徹底した強さは孤独の寂しさなど凌駕し、金俊平は死ぬ時まで惨めな思いなど持たず、後悔など微塵も感じなかっただろう。彼はあれほどの傲慢不遜を極めながら、物語の中ではその生き方を肯定されている絶対的な存在であり決して「悪役」ではない。誰もがドロ臭く必死に生きていたかの時代、彼の生き方は現代の人間が失いつつある圧倒的な野性的な生命力に満ちており、動物としての視点で見れば誰よりも人間らしいのかもしれない。そんな主人公に共感できるかどうかはともかく、この映画は誰もが道徳観をたやすく無視した視点で観てしまうのではないか。倫理や道徳などという文明的なものよりももっと底深いところにある、彼の持つ人間として、動物としての根本的な生命力に惹かれてしまうのだろう。奇妙な棒読み口調と無表情さで、ぞっとする様な無気味さを感じさせる北野武の演技は圧巻。オダギリジョーを始め、脇を固める役者達の演技もド迫力である。なんとも重厚で、見応えのある映画だった。 |