★11.リアルで独特で抜群の間を持つ山下敦弘監督の映画ではあったが、この作品のソレはどこか違和感を感じる。壊滅的な違和感ではなく、これまでの山下監督の作品と比べての違和感。きっと女子高生たちが作り出す間に対する個人的な思い込みに寄るところが大きいのだろうと思うのですが、もしかしたらメジャーな映画たる題材と、けしてメジャーにはならない山下ワールドとの同居がもたらす違和感なのかもしれません。仲間内だけで映画を作る素人っぽさが画面から溢れるところもこの人の好きなところなんですが、新しいスタッフを抱えた今作でも、学園祭をあまりにもいいかげんにビデオ撮りする学生の描写に、いいかげんな中にも新鮮さと楽しさがある山下監督の映画作りの原点を見た気がします。だいたい作中でもバンドのメンバー選びからしていいかげんこのうえない(笑)。物語の構成もいい。青春って大人になってから省みると劇的なこともあっただろうけど、真っ最中にはひとつの出来事として通りすぎてゆくにすぎない。この作品ではバンドメンバーのいざこざはあっても感動的な仲直りは無い。芝ロックを成功させてもそれぞれの成長は見えない。プロ顔負けに演奏が上達しているわけでもない。ここぞという場面での告白も無かった。ただ時間だけが過ぎてゆく。でもとても貴重な、そして忘れ得ぬ時間が。それがいいんです。成長って目に見えるとうそ臭くなりますから。感動って演出されるとうそ臭くなりますから。 【R&A】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-09-22 13:00:18) (良:2票) |
10.《ネタバレ》 前田亜季が本当にドラム叩いてるとして9点、違ったみたいなので減点。高校の文化祭前、最中の雰囲気を見事に表してる、それだけで評価の対象です。おれ共学じゃなかったから、いまいちわかんねえとこもあるけどね。ただ、香椎由宇って顔のイメージ強すぎねぇか?じつはそれがマイナス1点なんだけど… 生の湯川潮音見れてよかった、風来坊とはね。その前に歌ってた漫画喫茶の子、男だと思ってた、この子はとてもよいです。こっそりりりィも出てるし。この使いかたって、TBS「青い鳥」でトヨエツの母親やったときみたいでとても気持ちよかった。ところで、甲本雅裕ってヒロトの弟だったの?↓↓↓ なんかとっても腑に落ちた、ありがとう。 〈追記 2006.7.30〉そうか、The Water Is Wideを唄うのは実体験を基にしたエピソードだったのか、本日ETVのTRで知った。ということで、再度1点加点。 【shintax】さん [映画館(字幕)] 9点(2005-09-13 21:33:12) |
9.絵の構図、間の取り方、山下監督らしく適度な小津な薫りが心地良いリズムで入り込みやすかったです。どちらが好きかは人それぞれでしょうが、スウィングガールズに作られたウソ臭さを感じ、イマイチ入り込めない私としては、本作に等身大なリアルさを感じ断然リンダ派です。学校といえばプール、学校といえば屋上、文化祭といえば告白といったウソ臭さ漂う遊びすら学校だもん!青春だもん!といった感じで許せてしまいます。本番前夜の学校での高揚感は台風クラブを彷彿とさせていました。ブルーはーツをやる彼女たちを見守る甲本雅裕って弟じゃんとか芝ロックで美声を放つ湯川潮音は湯川トーベンの娘じゃんってな部分も好きです。ただ意地の悪い私としては芝ロック会場に彼女たちが間に合わない方が面白かったんじゃないかと思ってしまう。 【亜流派 十五郎】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-09-12 19:01:11) (良:3票) |
8.片言の言葉を話す異国の人や動物、子供なんかを使うのはある意味お約束というか反則と思えるが、ペ・ドゥナは間の取り方も上手くリアルな演技で観ていてまったく飽きなかった。アカペラを歌った子やダブりの人の歌声はお見事。 それにしてもこの手の映画を見ると「後悔先に立たず」とはよく言ったものだなと思う(泣)。 【ロカホリ】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-08-23 01:34:37) |
7.高校生の時、周囲のブルーハーツ熱をよそに岡村孝子を好んで聞いていた私は、今でもカラオケで「リンダリンダ」を聞くと、やかましい奴だな~と思うだけで、その時にはキャンディーズの「微笑がえし」を思いっきり歌い返してやるのが私の反射となっていますが、そんなことはどうでもよく、さてこの映画です。なにかギスギスとした彼女たちを曇天のもと描き、少しずつバンドが好転し始めると、空には雲が流れ太陽の光が彼女たちを差す。そしてラストのどしゃ降り。あの雨は、「リンダリンダ」の歌詞の通り、彼女たちを“どぶねずみ”のように美しくした。ずぶ濡れのままステージに上がる彼女たち、では写真には写らない美しさとは・・・やはりソンさんのあのバンドの仲間を振り向いた時の視線、目には見えないあの視線ではないか。そのはにかんだ笑顔には思わず私も微笑がえしたのです。山下監督のこれまでの作品に見られる独特の間が少し希薄になり、その分留学生の日本語理解能力を笑いに変換しているような面もありますが、でもやっぱり面白いのでした。 【彦馬】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-08-18 13:06:16) (良:2票) |
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6.ギターの子が言うんです。バンドをやることに「意味なんてなくていい」と。 この言葉がなんとも強く耳に残ていて。 ”花は美しく咲こうと思って咲いてるわけじゃなく、ただ咲いているだけで美しいんだ”とチャップリンが言っていた気がするけど、そうだよ、意味なんてなんら必要ないんですって。 そんなこと考えてる時間があるなら動き出さなきゃいかんのですよ。 【紅蓮天国】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-08-18 12:01:05) (良:2票) |
5.まさに青春ど真ん中って感じの映画である。高校の文化祭特有のあの雰囲気がとてもよく出てて良かった。放送部(?)の学生達が文化祭の様子をビデオカメラに撮ってるとことかなんていかにもな感じだし、全編を通して客観的な視点で撮られた画が多く、まるで自分も文化祭に参加しているかのような気にさせられた。 また、登場人物それぞれに見せ場があって、脚本もよく練られている為、主人公達にも感情移入し易かった。特にペ・ドゥナの自然体の演技はとても良く、彼女が男に告白されるシーンは最高に良かった。しかし、あとで彼女のプロフィールを知って驚いたのは自分より年上だったこと。完全に女子高生にしか見えませんでした・・・。 それから、ラストの演奏シーンは本当に見事でした。雨が全てを洗い流すかの如く急速に閉塞していく感じが切なくて、思わず涙が出そうになった。 【きのすけ】さん [映画館(字幕)] 9点(2005-08-17 20:48:04) |
4.「ブルーハーツ!?熱いねえ・・・」ってしゃべるダブりの女子高生最高。屋上にマンガ喫茶経営するお前の方が熱い。「素晴らしい日々」歌っちゃってるし。遅刻の埋め合わせのために登場した彼女のギター演奏と、怪我でバンドに参加できなかった子の信じられない美声によってギャラリーが段々と体育館に群がる。大雨の体育館の中でのこの前座パフォーマンスはいまだに心の中に不思議な余韻を残している。あとぺ・ドゥナが徹夜練習の抑えきれない高揚(?)によって一人で校舎に飛び出すところ。これは本当にいいシーンだと思う。この終盤に来るまでは、笑いを狙いすぎたり山下ワールドを出そうとする過剰さに、煩わしさを少なからず感じたが終わってみれば満足(実はぺ・ドゥナとビラ配りを絡ませてくれただけで満足だったりするが)。先生が彼女達を見つめる視線にしんみり、ぺ・ドゥナがメンバーに振り向く視線にニッコリ。成瀬とは比べようもないけど、結構な視線の使い手かな?と思う。まあ、青春がテーマでもあくまでカーブを放る山下監督は、やっぱり推したい。 【Qfwfq】さん [映画館(字幕)] 7点(2005-08-15 21:52:06) (良:1票) |
3.いや、【まぶぜたろう】さんの仰る通りだと思う。のだけれど、正直言うと、高校生の時からのブルーハーツ狂(というかブルーハーツに人生を動かされたと言っても良い)である僕はクライマックスの演奏シーンがちょっとあっさりしていたため、観終わった後、一抹の物足りなさを覚えてしまったのだ。しかし、時間が経つうちに「あれで良かったのだ」と少しづつ思えてきた。この映画は、例えば「スクール・オブ・ロック」のようなロックバンドのサクセスストーリーではない。登場人物の一人が「別に意味なんかない」と言っていたが、(さして文化的でもない)文化祭にも、その為に結成されるコピーバンドにも、別に意味も意義も無い。だけどそこにはやっぱり「何か」がある。それは、何か起こりそうな予感だったり、理由も無い高揚だったり、ふと感じる切なさだったりする。そんな平熱の青春の表情―思い切って告白したけどあっさり振られた、とか、みんなでご飯を食べたりこっそり学校に泊まったりするのが訳も無く楽しい、とか、あるいは後から見れば他愛の無い友人同士の諍いであるとか―を、この作品は慎ましやかに捉えている。そう、ここで描かれているのは何も特別な主人公ではない。ブルーハーツの「終わらない歌」の歌詞にもあるように、正に「僕や君や彼ら」の青春、何処にでもあるけれど、しかし一人一人にとってはかけがえの無い青春なのだ。・・・・・・それにしても、山下監督、すでに「巨匠」の空気を匂わせている。良いのか、まだ二十代なのに。 【ぐるぐる】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-08-03 15:43:54) (良:3票) |
2.冒頭に登場するビデオカメラの少女が観客に向かって宣言するように、さらに横移動で捉えられる学校の風景とそこに生きる高校生たちの姿は、ここが特別な場所の特別な時間であることを示している。ある人にとっては過酷であったり、甘美であったり、郷愁を誘ったり、もしかしたら今まさにそこに立っている人もいるであろう特別な場所と時間。しかし、その中に生きる高校生たちにとって、それは特別でもなんでもなく、ごく日常的な平凡な時間の積み重ねでしかない。■そんな特別だけど平凡な一瞬を私は見続けることとなる。事件が起こる訳でもない、物事が都合よく説明される訳でもない、ただ平凡な日常の断片が切り取られて提示される。例えば私は、告白する男子とそれにとまどう女子の姿を窓の外から覗き見る、バンドに誘われて訳もわからず返事をする女子の姿を壁に囲まれた枠越しにそれを眺める、あるいは顧問の先生のようにビールを飲みながら、ある種のノスタルジーを覚えながら彼女たちの練習に耳を傾ける。そんな平凡だけど特別、特別だけど平凡な時間の連なりを眺めることの心地よさ。■そして一人の少女が誰の目にもふれえない場所へと赴く。スキップをし、両手を広げ、「フランクフルトいかがですかぁ~、焼きそば、おいしいすよ~」という言葉を聞いているのは私たち観客だけだ。そして彼女は観客に向かって声を張り上げ「仲間」たちを紹介する。このシーンが素晴らしいのは、眺めるだけの存在であった私たちが彼女との時間を共有するからだ。彼女が話しかけているのは誰もいない体育館ではなく、私たち観客なのだ。■あるいは大勢の観客を前に逡巡する彼女は、突然後ろを「仲間」の方を振り返る。私は舞台の上の彼女としてではなく、まるでバンドの一員であるかのように眼前にそれを目撃する。そして唄う彼女、演奏する彼女たちを舞台の袖から見続けるのだ。■この映画が描くのは郷愁ではなく、現在の時間です。現在の時間として、人生においてまさに特別であった場所、特別であった時間を共有することの素晴らしさ。できればいつまでもそんな時間を過ごしていたいと思う。彼女たちや先生や、「あ酒ですか?」とか「OK?」とか言ってる間の抜けた男子たち、茶髪の留年女子、この映画に描かれるすべてと別れる、その痛みに、ブルーハーツのオリジナル曲が流れても涙が止まらなかったとです。 【まぶぜたろう】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-08-01 01:14:04) (良:5票) |
1.長い人生の中で、学校生活なんて短い間だし、ましてやその中の文化祭なんて、ほんのひとときの事。でも、それが後々まで確実に鮮明な記憶として焼き付いていたりします。そんな焼き付いている感じを、空気感までひっくるめてフィルムにきっちりと再現させてみせた映画でした。4人の女の子が過ごした、ほんの短い時間が、かけがえのない大切な時間として輝いています。学校の空気の中に存在するひとときの青春物語は、ゆったりとしたリズムに刻まれているがゆえに、じわじわと染みるように世界に誘い込みます。惜しむべきは、その一貫した空気演出のためか、カメラが被写体に寄りきれてない、もっともっと表情を捉えて欲しかったのに、という部分。こういう映画は、やっぱり「みんなと一緒にいられた時間」の感覚を観客も共有する事が大切だと思いますから。あと、唐突に挿入される「夢」の部分が映画の流れ、バランスを崩してしまった感もあります。でも、決して大仰にならない、大袈裟じゃない、等身大の彼女達の存在感、放たれた魅力は、映画という記憶装置に永遠に刻まれる、それはとても素敵な事ですね。 【あにやん🌈】さん [映画館(字幕)] 8点(2005-07-27 19:41:29) |