2.《ネタバレ》 僕はオペラのことは分らないので本作の主人公であるポール・ポッツのことも本作で初めて知りましたが、
ポールという人間と彼のこれまでの半生を適度にコメディタッチで実にテンポ良く分かりやすく描いています。
彼の周りにいる愛すべき人々の人物描写がいい。
子どもの頃からずっと彼のことを応援してきた母。
対立することもあったけど、実は息子思いの父。
終盤の息子のいじめっ子だった男を殴り飛ばすシーンと、
ラスト近くの「俺はいい親父じゃなかったが、親父としていかに成功したかは息子がどれだけ親父を越えたかで決まるんだ」という台詞が感動的。
この親父役のコルム・ミーニイが実にいい味を出しています。
前半の、後に結婚することになるジュルズとのラブストーリーと結婚後のドラマ。
作品の中で非常に重要な位置づけである彼女の存在抜きにはポールの人生も、
この映画も無かったかもしれない。そんな2人のドラマとしても良かった。
もう1人忘れてはならないのがマッケンジー・クルック演じる携帯ショップの店長。
ちょっと可笑しな好人物で、作品の空気を和ませる貴重なキャラクター。
彼がいなければこの2人、出会うことは無かったかもしれなかっただけに、
彼もまたポールの人生のドラマには欠かせない存在です。
オペラの吹替はポール本人が担当したそうですが、
あることがきっかけでジュルズを怒らせてしまったポール。彼女の仕事が終わるのを待ち、
彼女への思いの丈を歌に込めたシーンなど、彼の歌声を実に効果的に挿入しています。
幼少の頃からのトラウマ、自分への自信の無さ、病気や怪我を乗り越え、
彼を支える人々と共にワンチャンスをモノにした男の半生を爽やかに描いた王道サクセスストーリー。