2.佐藤蛾次郎をヒョロっとした感じの男と、ジーナ・ローランズ顔の(要するにコワイ顔の)女の、冴えない恋愛。正直、大した事件らしいものも起こらず、そんな映画面白いのかよ~と言われそうなんですが、これが妙に面白い。事件が起こらないどころか、即興的に捉えられたカメラの中では、常に何かの細かい事件が起こり続けている、という印象。構図をしっかり決めてカメラを回せば、そこには思わぬ揺らぎが常に生成され続ける。
例えばこの映画では、クローズアップはむしろ、被写体である登場人物の姿を、カメラから「はみ出させる」ためにこそ、用いられているようにも思われて。そう、この、あふれ出す感じ。
きちんと計算された作りの映画を観るのも気持ちがいいけど、なるほどこういう自由があっても、いいんだなあ。実際、ここで描かれているのは、まるでヤケクソのような悲痛な「自由」だから。ラストの無理やりなハッピーエンドを見ると、かえって何とも切ない気持ちになるのです。たぶんこれは、実際には我々が決して手にし得なかった過去形の「幸せ」だから。