1.子どもの行方不明事件が後を絶たない中国。子どもの人身売買が大きな社会問題になっている中国。一人っ子政策下の中国。
都市部が急速な経済発展を成し遂げるほどに広がっていく農村部との格差。
香港が中国に返還されて久しいですが、香港出身の名匠ピーター・チャンが
実際に起こったある誘拐事件を描きながら、その事件の背景から垣間見えてくる現代中国に内在する問題に言及する社会派の秀作です。
誘拐された子どもの両親、誘拐の実行犯の夫に先立たれるもその子どもに実の子の様に深い愛情を注ぐ誘拐犯の妻。
どちらの気持ちも痛いほどに伝わってくるのですが、ピーター・チャンはそのどちらにも寄り添う。
子どもが行方不明になった親たちが結成した被害者の会のメンバーのある夫婦。妻が妊娠するくだりも印象に残る。
一人っ子政策にある中国では、それは認められない。認められるには、無事を信じ必死で探している我が子の死亡届が必要という。
親にとってこんなに辛いことがあるだろうか。ここにもピーター・チャンが本作に込めた強い思いを感じます。
僕が知っているのはヴィッキー・チャオだけでしたが、主要キャストが皆、好演しています。
ざっくりとした作品の知識はあったので、ヴィッキーは最愛の我が子を探し続ける母親として登場するのかと思いきや意外なキャスティングでした。
かつてはその言動が問題視されることが多いお騒がせ女優だった彼女。しかし久々に見たそんな彼女の演技力に驚かされました。
ピーター・チャンの作品を見るのも久々。中国が抱える負の部分に踏み込む難しい作品をきっちり仕上げる、監督としての貫禄を感じる作品です。