5.《ネタバレ》 風来坊のごとき主人公がふらりと町に現れ、「何かを残して」またふらりと去っていく。いいですね~。これぞ西部劇の醍醐味。
その主人公が、ヘンリー・フォンダ。無精ヒゲの顔に、人生経験というか、積み重ねてきた過去が、窺われます。基本的にはこの主人公、自分の過去はあまり語りたがらなくって、西部劇のヒーロー像としては王道、なんですが、会話の節々で、つい自分の過去を漏らしてしまうのが、ちょっと脇が甘い(笑)。要するに、そういう口の重い主人公が、断片的ながらもついつい過去を語ってしまうように水を向ける、脚本の構成になってるんですね。上手いと言えば上手いんですが、でもちょっと脇が甘いと言えば脇が甘い。
それはともかく。「何かを残される側」として登場するのが、若き保安官アンソニー・パーキンス。一本気でいささか頼りなく、こういう役に似合いそうな俳優としてはロック・ハドソンあたりが思い浮かぶのですが、アンソニー・パーキンスが演じることでやや神経質な感じも出ています。意外なことに、銃捌きも見事だったりするのですが、いや、早撃ちならいいってもんじゃないんだよ、ということを彼に教える、ヘンリー・フォンダ。影響を与える側、与えられる側。一方通行のようでいて、実は双方向なのが、これまた西部劇の(に限らないけど)醍醐味ですかね~。
リー・ヴァン・クリーフが出てたりして、やっぱり悪役なのか、というと、案の定、いいヒトではないのですが、あくまでチンピラ風情であって、この町にはもっとやっかいな真の悪役がいる。それがネヴィル・ブランド。え、誰かって? あの『殺人ブルドーザー』のたった6人しかいない登場人物の一人ではないですか。周囲の人間を扇動し、町を牛耳ろうとする彼と、若き保安官との対峙。
その二人の対峙するシーンが映画では二度描かれ、どちらも巧みな構図で印象的に描かれますが、その二度の対峙における、ヘンリー・フォンダの立ち位置の違いが、さらにこのシーンの印象を深めています。一度目はこの対立から少し身を引いた位置からの助太刀。それが、クライマックスである二度目のシーンでは保安官と並んで立っていて、胸には星のバッジが。いやホント、痺れるんです、このシーン。
リー・ヴァン・クリーフたちが起こした事件のために町は大騒動となり、奴らをリンチにかけろ、とばかりに町民の一部が暴走。縛り首にすべく準備されたロープが、これ見よがしに揺れてたりする演出が、焦燥感を煽ります。
そんでもって、上述の対決へ。前回は主人公が銃で助けたけど、今回はあくまで保安官が対決に挑む。彼がこの町を守っていくための通過儀礼。主人公は彼の側に立って、それを見守る。
ラストシーンは、町を去る主人公の馬車のそばへ保安官が歩み寄り、やがて二人が離れていく様を、移動カメラのワンカットで見せており、作品自体の縮図というか、総まとめのように感じられるワンカット、でもあります。
充実のラスト。