66.《ネタバレ》 ふと、自分と同じ歳のワインを所持するように自分が生まれた1967年の映画をざっと探してブルーレイを購入した。
「スティング」や「明日に向って撃て」など好きなポールニューマンだ。
評判も良好なのでいつか観ようと思っていた映画だ。
タイトルの「暴力脱獄」がバイオレンス性を感じるし反骨の象徴映画として挙げられているが全く違った印象を感じた。
主人公ルークは自分の資質の活かし方が判らず、目的を持てずに生きているだけの男としか映らなかった。
彼は「人並み外れた根性」と「人に好かれるカリスマ性」その2つは間違いなく持っている。
だが、それに見合った地位も職にも就いていないし、そうなる術も知らない。
それもあり、戦争で挫折を感じた後も現状にイライラし、行き場を探してるようにも見える。
そして映画の冒頭で無意味な事を(無意識の中で何かの象徴を切り落としたのかも知れないが)して刑に服する事になる。
新しい環境では、暫くは持ってる高いポテンシャルを発揮するのだろう。
というか、生き生きしてるように見える。
きっと軍隊も最初は大活躍をしたに違いない事は、勲章を3度も受けて曹長になり、この刑務所でもあっという間に人気者になってゆくのがそれを示している。
しかし、暫くすると現状に飽きるのか…もしくは彼の「行き場を探す足掻き」がそうさせるのか…
軍隊でも除隊時には二等兵に戻り、刑務所でも行き詰まりにも似た閉鎖感の中、恐らくは母の死がトリガーとなり、唐突に脱走という行動に出る。
それは反骨でも、何かの使命を帯びた脱獄とは思えない。
脱走の目的は、強いて言うと自由だ。
ただ、人間の尊厳を得るための自由ではなく…籠の中で飼われて暮らしていけるのに外へと飛び去る小鳥…そう俺には映った。
閉鎖感と虚空、そして知性を持つが故に「巻き込み式の犯罪を起こす事が出来ない男」の「なんとなく」の行動。
生まれてきた意味を頭や言論ではなく無意識の中で体現した男…
それがルークなんだと思う。
また、原題は彼自身を表すモノではない気がする。
刑務所の仲間たち廻りの人間が、彼の苦悩を理解出来ずに自分たちの願望を託した称号。
そう思えたら最後まで彼は誰にも理解して貰えずに…
いや、最後に理解して欲しかったのが神だったのかと思え、凄く悲しかった。
そういえばルークの笑顔は素晴らしいが、いつもどこか悲しい。