★10.ヒキの画で終始描かれている。人間を描くというより、どこかそこに行き来する人々を客観的に覗き見しているような錯覚に陥る。それは丁度、あの家族が実際にしていたようにこっそりとばれない様にしている感じだった。構図もそういった覗き見している間隔にさせられる画が殆どで、どこか恐ろしくもあった。まるで血の気の通っていない人間のような冷たい構図、演出、演技。外界から切り取られたようにワンシチュエーションで物語りは進む。流石は新藤さん、脚本が素晴らしい。台詞が説明になっておらず、すべてが完璧な表現になっており、聞いているだけでも本当に面白い。家族の会話のようで、そうでない。兄妹の会話のようで、そうでない。親子の会話のようでそうでない。この作品の中だけで許される常識、ふつう、当たり前。だからこそ、不意にヨリの画になった時、あまりにも人間的でリアルな表情をする。あぁ、やっぱり人間なのだ。淡々と狂ったことを言っているが、彼らは紛れもなく人間だ。それが、妙に現実味がなく恐ろしかった。川島雄三監督、天才。 【ボビー】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2007-07-12 17:16:16) (良:2票) |
9.《ネタバレ》 ほとんどのシーンが団地の一室という舞台劇風な作りでありながら、カメラは部屋から部屋へ所狭しとアングルを変え、メインの画では高度成長期の日本の風景が常に窓の外に、画面の奥に映され続けることで映画たらんとしている。会話が多いが全く飽きがこない。それどころか面白さが途切れずに持続する。強烈に赤い夕日を浴びて延々と踊り狂うシーンはインパクトありすぎ!自分たちでは止められない狂った世界の象徴。そして破綻を予告する雨。破綻を知る山岡久乃の視線。一人勝ち逃げを予言していた若尾文子の良心の呵責。それでもやはり勝ち逃げするのだろうその冷静な妖艶ぶり。うーん、たまらん。 【R&A】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2007-05-11 12:02:22) |
8.基本は団地の一室のみで展開される二幕一場ものの舞台劇(しかも若尾文子が主役じゃない!)。しかし川島雄三は、ありとあらゆる位置からの構図を駆使し、極めて映画的に仕上げてます。上下左右、縦横斜め、窓越しドア越し襖越し、考え得る限りの構図が登場。ビシッと決まる構図の為にはカットの繋がりさえ無視する徹底振り。人物の出入りや立ち位置も絶妙で、狭い団地の一室に無限の広がりを与えてます。その登場人物も全員が腹に一物を持った非情な金の亡者ばかり。「貧しさ」は人を獣に変え、急激に押し寄せる「豊かさ」がそれを正当化する。話は一応「悪の栄えた例なし」という結末を迎えますが、ラスト・カットでは、高度経済成長が無数の「しとやかな獣」を育んでることを雄弁に物語ってました、7点献上。 【sayzin】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2006-11-15 00:01:21) (良:2票) |
7.《ネタバレ》 (2015年8月修正) 若尾文子映画祭でこの映画をスクリーンで鑑賞する事が出来て幸せいっぱい。と同時にもともと8点だったこの映画、+1点加えたい。川島雄三監督初心者には「幕末太陽傳」ではなくこの作品から入った方が良い気がする。(「とんかつ大将」「洲崎パラダイス~」の良さがわかったのは30代から)清貧という意味ではなく、ただ悪行が目立たない様に公団住宅に住み着いている退役軍人一家の破滅を描いたこの作品、初見時には若尾文子(様)や伊藤雄之助の存在感ばかりが目についていたが今回インパクト強かったのは山岡久乃の母親。そしてやっぱりピノサク(小沢昭一)。彼の出番は最初の15分くらいに関わらず、劇場がドッカンドッカン沸いていた事報告しておきます。「監督が喜んでもらうために何でもした」と後年述べていた小沢さん、川島監督か脚本新藤兼人どちらの指示かはわかりませんが、演じていてもうノリノリだったんだろううなぁ...。本当得難い才能でした。 【Nbu2】さん [映画館(邦画)] 9点(2006-04-21 01:18:07) |
6.《ネタバレ》 川島雄三監督、凄い!こんなにもぶっとんだ家族はまずはいないだろう!人間の持っている醜い部分をここまで徹底的に描くその凄さに何度観ても感心させられる。人間とはお金がかかるとここまで醜くなるものなのか?芸能プロダクションに勤める息子が会社のお金を騙し取るような詐欺行為をする中で、そんな息子に対し、しかるどころか更にお金を稼がせようとする父と母の何とも言えない金に埋もれる悪人ぶりの凄さとまたそんな家庭に対しやってくる人達の何とも個性溢れる人達、それをたった二つの狭っ苦しい部屋、公共団地のあの部屋を覗き込むようにして人間の醜い部分を笑っているかの如く思える監督の演出ぶりの凄さ、これだけ徹底的に笑わしておいて、最後には氷付くような結末に、そして、まるで歌舞伎の世界を思わせる音楽も効果抜群!それにしてもこれだけのメンバーの中でも若尾文子の悪女ぶりと小沢昭一のピノサクの何とも怪しい人物には完全にやられた。 【青観】さん [DVD(邦画)] 10点(2005-11-04 22:24:56) |
|
5.このタイトルいいですね~。ある団地の一家で繰り広げられる舞台劇のような空間を会話とカメラが所狭しと行き交い交錯し、ただでさえ熱気の充満する冷房装置のない夏時間を、登場人物のギラギラした生きる欲求がムンムンと湿度を上げているにもかかわらず不快指数は高くない。出てくる人間を傍から見れば、なんちゅう連中なんや~、と顔をしかめてしまうような無味無臭の良識をあざ笑うかのように、あっけらかんと悪意なき彼ら彼女らの言動は涼しげに。高級洋酒、キャビアに託される<生きていることそれだけで素晴らしい>といった虚妄の突貫は軽やかに。踊り狂う姉弟から聞こえてくる肉体の声の生々しさは高らかに。乱れぬ足並で行進する彼ら彼女らが奏でるマーチが痛烈痛快な映画であります。ラストシーンに合掌。 【彦馬】さん 10点(2005-03-25 13:01:02) (良:1票) |
4.とにかく小澤昭一の怪演に尽きる。日本映画史上一番奇天烈な登場人物だと思う。 |
3.「しとやかなけだもの」って呼び方で良かったんですよね、確か。前衛的というか実験的というか、とにかく一筋縄ではいかない川島雄三の傑作の一つ。何だ何だ?って思わせるストーリーと畳掛けるような台詞の応酬、若尾文子の妖しいビッチ(けだもの)ぶりも見物。山岡久乃って この頃からこんな感じだったんですね。 【放浪紳士チャーリー】さん [地上波(邦画)] 10点(2004-04-25 13:30:46) |
2.こんなに面白い映画は、そうあるものではない。二転三転する練り上げられた物語、台詞、伊藤雄之助、山茶花究、小沢昭一、ミヤコ蝶々らの怪演、若尾文子の悪女ぶり、浜田ゆう子の助平、高松英郎のごりおし熱い芝居…、こんなに面白い映画はない、そう呟いていた観客は、ラスト近く、山岡久乃の冷めた不気味な横顔を目撃する。水を浴びせられたような瞬間。これは怖い。このような瞬間をこそ、私はもっと見たかったのだ。そして思うのは、面白すぎて物足りない、ということ。川島雄三のベストワークの一つでありながら、やはり私は「女は二度生まれる」などの奇形的な傑作を支持する。 【まぶぜたろう】さん 10点(2004-03-05 11:57:20) (良:1票) |
1.面白れ~!終始団地の一室だけで展開されているのに、全く飽きさせない演出は素晴らしい。画もなんともフォトジェニック。人間って怖いですね~でもあんな生活できたら楽しいかも? 【クロマス】さん 9点(2003-04-15 21:58:27) |