18.《ネタバレ》 大自然の中に書き割りやスクリーンやライティングを持ち込んで撮影しているのかと思いきや、後にオールセットと聞いてびっくりしました。言われなければジオラマとは思えないほどリアルなのですが、そうと知らされた上で見ると、撮影に都合が良いように計算し尽くされ、つくり込まれていることに気付きます。舞台芸術としてはすばらしいし、いいもの見せてもらったとも思うのですが、姥捨て山伝説を描くのにこの手法が果たして正解だったのかは、正直よくわからないです。今村版と比較してみたいところです。婆さんと息子、脇役たちの演技も総じて悪くないのですが、婆さんの孫息子の若造を演じてる役者の演技が、どうもわざとらしく周囲から浮いてるなと思いました。浅はかで血の気の多い若造役なのでわからんでもないのですが。後で調べてみたら当時18歳の今の猿翁でした。ま、歌舞伎とは勝手が違うから。若いし。 【camuson】さん [ブルーレイ(字幕)] 8点(2023-06-21 19:27:11) |
17.《ネタバレ》 ○姨捨山の映画化舞台版といった感じ。○オールセットに三味線と連動する演者の動きに最初は違和感を感じたものの、徐々に違和感も消え引き込まれていった。○ラストにモノクロで姨捨の駅が映されるシーンもオールセットで描いたからこそ。たった数十秒だけだったが、意味あるカットだった。 【TOSHI】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2016-01-05 00:09:37) |
16.これ貧乏ってことがポイントだ。貧乏ゆえの掟であって、食うこと(歯)が罪悪感を伴ってくる。その実感を出すために、この歌舞伎的な様式が必要になったのだろう。リアリズムで演出したのでは、実感が出なくなってしまうということ、これ映画の手法を考える上で大事なことだ。とにかく製作者の気迫が感じられる作品で、会社を説得させるために前年に『喜びも悲しみも幾歳月』を作ってヒットさせ、やっと本作を手がけることが出来たという。村の長老たちが並んでの、山送りの作法を伝える儀式の重苦しさなど素晴らしい。監督のフィルモグラフィーを眺めると、深沢七郎による本作と『笛吹川』の二作が質感の異なる岩として浮き出て感じられる。木下のこういう深沢七郎の残酷と共鳴する部分をどう捉えるか、ってのが監督について考えるとき避けては通れない気がする。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2013-11-20 09:47:50) |
15.《ネタバレ》 どうみても書割チックな背景、あまりにも明らかなセット撮影に、とりあえずはビックリするんだけれども。でもすぐに、この作品は決して「まるでドキュメンタリみたいだね」という意味でのリアリズムを狙った作品ではないこと、舞台のイメージで作られていることがわかります。いやむしろ、観ているうちに、この世界観に呑まれていき、そういう違和感自体がわかならくなっていく。そしてクライマックスの雪山の描写に至っては、これはまさに圧巻で、セット撮影はここまで表現できるのだ、という凄みに圧倒されます。で、全編の物語が、閉鎖された舞台の世界、完結した説話の世界として、描かれていたものが、最後に、実際の「姨捨駅」が写されることで、現実世界との接点を突き付けられる、という訳ですが。しかしまあ、この「姥捨駅」と、年寄りを山へ捨てたという姥捨て伝説とは関係ない、とか。そもそも姥捨てなどという風習が実在したのか、しなかったのか、とか。そういう声もあるのですけども、映画としての効果たるや、ドキリとさせられて、これは絶大なものがあります。ただ……勢いあまって隣人の息子を殺してしまうのは、ゴメン、かなり笑撃的でした(笑)。でもどうしてこんなエピソードにしちゃったの? 深沢七郎の原作を読んで感じるのは罪悪感。納得して捨てられに行く母親、そこに雪が降って「良かった」というラストは、まさに表面だけのハッピーエンドで、一皮めくればすごそこには残酷さがある。捨てられてハッピーな訳ないもんね。この残酷さの中に幸せを感じ取らねばならないことほど、残酷なことはないもんね。そしてまた結局は、捨てる側の立場としては、崖から親を落とすのと、山に置き去りにするのと、大差ないもんね。読んだ瞬間、ハッピーエンドを感じてしまい、次の瞬間、こんな残酷な物語にそれを感じてしまった自分に対し、罪悪感を感じる。しかるに本作、「隣人殺し」のエピソードを描くことは(つまり残酷な隣人と母想いのオレとは違うのだ、という主張は)、本当に必要だったのかしらん??? 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2012-05-27 09:08:55) |
14.《ネタバレ》 かの有名な姨捨(おばすて/うばすて)山の話を映画化したもの。 有名な題材なだけあって、いかにそれを映画として演出するかに注力している。 陰鬱な雰囲気を出すために、木下惠介監督は様々な工夫を本作で凝らしている。 それが一般的に評価されたか否かは別にして、奇をてらったかのような演出がどうにもわざとらしい。 具体的には、ほぼ室内セットで撮られた演出にあざとさを感じ、そのあざとい演出に、終始、意識がいってしまった。 ただし、ラストシーンだけは屋外で撮影されており、この部分についてはさすがの迫力。 しゃれこうべがそこかしこに転がり、不気味な霧が辺りを覆う。 その斜面に老婆を捨ててくる。 この物語のラストシーンに相応しい、不気味で陰鬱な映像に圧倒された。 しかししかし、そもそも老人を捨てるなどという因習自体に腹が立つ。 というか苛立つ。 ならわしだからといって、当然のように行っていた当時の村人に苛立ちを隠せない。 「みんながやっている」 「かわいそうかもしれないけど、やるのが普通だから」 「現在のならわし(制度)に別に疑問もない」 そんな風にしか物事を考えない人間が、閉鎖的な村社会の中で、平然とやっていた悪しき行為。 普通だからやる、みんなやっている、そんな日本人特有の思考回路が、最も悪い方向で現れたのが、このおばすてという行為だろう。 たとえ自分の考えや行動が、少数派であって、周囲から普通じゃないとか言われたとしても、自分自身が正しいと思えば実行し続ける、そんな人間になりたい。 この映画を観て、改めてそう思った。 【にじばぶ】さん [DVD(邦画)] 4点(2012-03-26 01:36:39) |
13.楢山参りを控えた母親に対する息子の苦悩と葛藤が核になっているお話だが、 心情描写云々以前に、当然のことだけど圧迫感を感じるほど暗い。すべてがセット撮影、 演出面では歌舞伎の手法を取り入れ、舞台劇を観ているような印象を与えてくれる。 これはこれでいいと思うけど、映画でわざわざ舞台劇?という思いもなきにしもあらず。 田中絹代は相変わらずうまく、その演技は真に迫るものがあり、心にずっしりと響いてくる。 個人的には、もっと切ない雰囲気を出して欲しかったのだが・・・。 【MAHITO】さん [DVD(邦画)] 6点(2012-02-29 02:33:10) |
12.《ネタバレ》 これはまたすごい映画を見ました。広大なセットを使った舞台劇風の作り。場面転換も舞台を彷彿とさせながら、映画ならではの表現を用いています。BGMに長唄を使ったのも効果的でした。照明もすばらしく、特に赤の使い方がうまい。ということで、監督の技巧が光る作品です。物語の方は、姥捨に対する各人の異なる思いを重層的に描いているのも見ごたえがありました。 これだけでも上出来なのですが、本作の真骨頂は最後の大転換でしょう。セットからいきなりロケ(現代の機関車)映像となり、最後に姨捨(おばすて)駅が映されて終わり。この部分だけわざわざモノクロで撮影されています。それまでセットを使い、観客の現実とは離れた、作り物めいた世界で物語が展開していたのですが、ここで一転、観客とつながった現実世界が現れます。過去と現在・虚構と現実・閉じた世界と開けた世界・カラーと白黒という対比を持たせながら、両者が地続きであるということを端的に表した、実にあざやかな、そして簡潔な幕切れでした(もちろん、こんなところに台詞はありません)。ここまでやられると、素直に参りましたと言うほかないですね。このように、木下監督の映像技術が存分に発揮されています。正直、物語よりもそちらの方に目を奪われました。でもこのテクニックだけでも、一見の価値はあるでしょう。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2011-12-26 20:15:52) |
11.セットで全部やってしまった貧相な画面にもどうにも違和感が残ったが、それ以上に、どこまでもしつこくかぶさってくる三味線の音が非常に耳障りだった。こういう寓話的な作品世界こそ、静寂が重要だと思うのだが。 【Olias】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2011-12-04 01:28:05) |
10.全編セット(最初は人形劇でも始まるのかと思った…)で撮影が行われ、舞台の手法を取り入れるなど、変わった映画という印象。俳優陣では役のために本当に歯を抜いた田中絹代に脱帽。凄まじい女優魂だ。ただ、自分に嘘をついてもしょうがないので正直に言うと、退屈だったし、セットによる撮影も逆効果としか思えなかった。今村昌平版は見ていないが、ほとんど同じ内容なら見ようとも思わない。生贄にしても姥捨てにしても、そのような文化に腹が立つだけで、感動など二の次になってしまう。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 4点(2011-11-28 20:02:13) (良:1票) |
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9.《ネタバレ》 原作既読。姥捨ての習慣が残る極貧の寒村を舞台にいのちの尊さを真正面から描いた傑作だ。淡々とした筆致ながら、深い感動が残った。この映画は歌舞伎仕立てで、その世界観を汲み取ろうとする。ナレーションは全て長唄である上、セットはセットらしく、舞台をイメージした演出は徹底しておりユニークだ。 ただ残念なのは、どうしても人情が全てに先行してしまったところだ。非情とも呼べるほどの原作のスタンスがこの趣向によって綺麗に崩されてしまっているのは惜しい。原作と映画は全くの別物という立場に立てば許容できるはずなのだが、どうしても手放しでは褒められないと感じてしまう。また、原作で印象的だった美しく残酷な自然というテーマが舞台では生きてこないのもつらい。母性の神々しさが際立つつくりは悪くないが、この作品のメッセージは、前述のとおり、他にもある。その取捨選択は手堅いが、捨てられたものの大きさを考えると残念としか言いようがない。 【枕流】さん [DVD(邦画)] 7点(2011-09-13 22:44:03) |
8.《ネタバレ》 歌舞伎調。前口上がなんとも洒落ています。正に昔話の世界を再現したようです。全編セットかつ、照明も独特です。特に「掟は必ず守ってもらいやしょう」の演出は目を離せない。他にも舞台が二つに割れる場面など、普通の映画では観られない演出が多かったです。喜んで、というとおかしいかもしれませんが、自ら進んで楢山へ行こうとする母と、それを辛く感じる息子の対比がなんとも惨い。結局のところ、息子は涙を流しながらも村の因習に逆らえずに母親を置き去りにするしかないのです。そして自らも楢山へ行くことを覚悟しながら生きて行かざるを得ないのです。これほど残酷な物語が他にあるでしょうか。 【Balrog】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-09-06 20:28:34) |
7.ほとんど舞台劇ともいえる全編色彩豊かなセットで見せる、ある意味実験的な映画だと思う。口減らしのために老人を山に捨てるという貧しい村の伝説が今ひとつ現実味がわかなくて、のめり込むことができなかった。手法や芸術的価値は高いと思うが、あえて舞台の様な作品を映画として見せる意味に個人的には疑問が残る。正直、面白い作品とも言い難い。 【きーとん】さん [DVD(邦画)] 5点(2010-09-04 20:56:43) |
6.《ネタバレ》 背景は絵、人間以外は大道具という、大掛かりな舞台セットのような風景。BGMは三味線。舞台風にしたことで様々な色の照明や、スポットライトが違和感なく溶け込んでいます。視覚的にも聴覚的にもかなり斬新。 泥棒の出た一家を根絶やしにするという発想や、年寄りは山の神様の元に行くという残酷な発想が当たり前の貧しい田舎が寓話的なのに現実的に描かれています。このどうしようもない閉塞感は、撮影が全て屋内であるということにも起因しているのでしょう。 ラストの唯一の白黒シーンに、なんとも言えない気持ちになりました。 【すべから】さん [DVD(邦画)] 7点(2009-06-05 12:07:04) |
5.素晴らしい演出。特に儀式のところの色が良かった。内容は日本的でしたね。姨捨駅に行ってみたくなりました。 【すたーちゃいるど】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-09-23 11:02:24) |
4.セットがオズの魔法使いみたいだと思ったが、ライティングや場面転換など、今見ても斬新。演劇の手法をそのまま映画に持ち込んだ感じ。クライマックスの三味線も映像と一体化し、とてつもない臨場感を醸し出している。 【カタログ】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2007-12-01 00:41:15) |
★3.《ネタバレ》 舞台の上で起きているかのような、全編セットの作品。それが意図する事がなんなのか、僕みたいな平凡な人間には理解に達する事が残念ながらできなかったが、あの画を観ていて痛烈に感じたのが、閉鎖的な窮屈な感情だった。それは画が狭いとか奥行きがないとかそういう意味ではなく、登場人物たちがまるで、閉じ込められて生きているかのような印象を受けたのだ。逃げられない環境、現実。それらを無意識に強く感じていた。ラストの台詞があまりにも胸に響く。まさに彼らの苦しみや悔しさがそこに詰まっており、そしてラストシーンは現代の白黒のロケシーンになり、そこで一気に現実に引き込まれた。舞台のように描いて非現実的に見せておきながら、ラストで現実の画を見せ、大きな落差により、これは実話であり現実なんだ、というメッセージをより強く感じる事が出来た。 【ボビー】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-11-19 01:26:38) |
2.《ネタバレ》 凄い!このリアリズム、恐るべし映画です。全編歌舞伎の世界を思わせる映像美と相成って日本の伝統を感じる音楽に乗せて描かれる何とも恐るべし映画です。この映画の舞台となっている長野県姨捨山、地元なもので勿論、知ってるし、あの山にも登ったこともあるけど、あの山の雰囲気そのものをここまで見事に作り出した素晴らしいセットと映像美に木下恵介監督らしいヒューマニズムとが見事に融合した傑作になっている。まず何よりも田中絹代の演技が本当に恐ろしいほどの凄み、殺気を感じる。この映画の為に本当に歯を抜いてまで望んだというその役者魂にはこれぞ本物の映画俳優としての凄さを見せ付けられた思いでいっぱいです。そんな田中絹代の母を姨捨の山に捨て、雪の降る中、「おっか~」と叫ぶ息子の姿とそれを雪に打たれながら息子との別れをけして、悲しもうとはせずにいる田中絹代、ラスト、今でも実際にある「姨捨の駅」と走る列車を映し出すあの場面には涙が止まらない。これもまた間違いなく木下恵介監督の代表作品であり、そして、日本を代表する傑作間違いなしのとにかく凄い映画です。 【青観】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-11-06 22:06:12) (良:1票) |
1.深沢七郎が1956年に発表した原作を木下恵介が映画化した作品であり、後年今村昌平がリメークした同名タイトル作品のオリジナル版でもある。そして木下作品としては、「二十四の瞳」と並ぶ昭和を代表する名作である。 物語は信州の山奥深い寒村を舞台にした、姥捨てという因習に基づく老母とその息子の心の葛藤と情愛を描いたもの。いくら“口減らし”の為とはいえ、70歳を迎えると山へ捨てられるという「掟」の情け容赦のなさ。土着の古臭い慣習からすれば、非人間的で残酷な行為でさえも正当化されてしまう怖さ。貧しさからくる因習は余りにも露骨であり、その悲惨さは信じ難いほどだが、本作は決してそういった暗い部分を前面に押し出して描こうとはしていない。むしろ聞き伝えの民話をひたすら叙情的に描こうとしたものであり、斬新で実験的な手法を用いることで木下恵介の才能が存分に発揮された作品だったと言える。黒子が口上を述べる場面から始まるように、その演出はまるで舞台劇をそのままカメラに収めたような方法で統一されている。舞台装置としての書き割りや、場面が変換するときの幕の使い方、あるいは照明に至るまで徹底して舞台的な構成と演出に拘りながら、神秘的かつ荘厳で、どこまでも格調高く描かれていく。まるで歌舞伎を観るようなその様式美は、色彩設計ですら人工的でありながら、統一された美しさを醸し出している。そのテーマ性とは趣を異にして、全編木下作品らしい温か味を感じさせる一方で、田中絹代演ずるおりんが臼で歯を折るという、本編で最も凄惨なシーンとして強烈に印象が残っている。その静寂を破壊するかのような音の響きは、未だに忘れられない。鴉が谷底から乱舞する夕景の中、母親と息子の道行きの終盤のシークエンスは、本作の最大の見所である。とりわけ後ろ髪を引かれる思いで山を後にする息子の背後で、白く雪が降り始めていた姥捨山が、晩秋の景色に変わるという演出の見事さ。言葉ではとても表現できない情感溢れる名シーンであり、これこそが演出の妙というものなのであろう。 もはやこれを芸術と言わずして何と言おうか。確かビデオ化はされておらず、目に触れる事の少ない作品だが、機会を見つけて是非鑑賞して欲しい傑作である。 【ドラえもん】さん [映画館(字幕)] 10点(2005-09-06 18:37:28) (良:3票) |