★7.《ネタバレ》 夜の公園でオバサンが謎の人物に襲われる場面。公園の生垣の間をオバサンが逃げ回ると、まるでそこが立体迷路であるかのような、シャイニングチックなシーンに見えてきて、するとそこには何となくペンデレツキチックな気がしないでもない鋭い音楽が被さる。もちろんアルジェントがキューブリックをパクった訳でも何でもなく、そもそもこの映画が作られた時にはキングの原作小説すら世に出ていない訳で。さすが、ダリオ・アルジェント。 などと、無理して褒めてくれとはいいませんけれども。 その前の場面、オバサンが公園のベンチで誰かを待ち続ける姿が、不穏な空気を伴ってやたら長く描かれます。さらにその前には、オバサンが誰かと電話する場面。これがまた、カメラが電話線を追いかけていって我々を会話先の謎の人物のところまでいざなうような、奇妙な演出になってます。こういったシーンが醸し出す得体の知れない空気感の中、ついに起こる惨劇、という訳ですが、突然襲われるにせよ何にせよ、被害者が殺されること自体よりも、殺害に向けてジワジワと追い詰められていく姿、それを描くことが、主眼。アルジェントらしさ。オバサンの死はカメラの前で直接描写されはしないけれど、ジワジワ感は充分です。 他の被害者も、ロクな殺され方をしません。いや、映画の中でジワジワ死んでいかないようなヤツは要注意。実は生きていました、ってなことになり、改めて死んでもらうことになってしまう・・・。 ミステリ仕立ての作品ながら、謎解きよりは、幻想シーンを含め、ヤな感じを醸し出すことに重点が置かれていて、真犯人が明らかになるくだりも「そんなアホな」ではありますが、タイトルの「4匹の蠅」にも強引ながらちゃんと意味があったりするのが、作品の意外性。さらにこの作品、陰惨な内容ながら、トボけた探偵とか、犯人と間違えられて主人公にタコ殴りにされる気の毒な郵便配達とか、ユーモアも盛り込まれていたりするが、さらなる意外性。 真犯人は誰なのか。これが一番、意外性が無いかもしれないけれど(笑)、その最期は誰の死よりも唐突かつ派手に描かれていて、これぞミステリにおける犯人の特権。先ほど、ミステリ仕立て、などと言いましたが、謎解きだけがミステリではなく、怪しさと妖しさを兼ね備えたこの作品もまた、立派なミステリ作品と言えるのではないかと。 【鱗歌】さん [インターネット(字幕)] 7点(2024-08-25 17:14:19) |
6.《ネタバレ》 サスペリア、だとかフェノミナだとかインパクトのでかい作品から比べると及第点、と言った感じ。まあアルジェント初期作ということで、まだゴブリンも発足していないし、原色バリバリだとかド派手な殺戮方法は少し控えめ、とはいえ目を引くショットもちらほら。 ジャーロらしく犯人の動機が八つ当たりを超えてトバっちりなのと4匹の蝿という割にはあまり蝿が絡んでこなかったり(冒頭のあれは伏線じゃねーのかよ)とかはあれど、まあそれなりに楽しめる。 今際の際の映像が網膜に映る、というのは後年にロボコップのテレビ晩でも使われてたし、映像業界では忘れられてるようで忘れられてないい設定なのだろうか?(笑) 【クリムゾン・キング】さん [DVD(字幕)] 5点(2022-02-26 17:44:44) |
5.《ネタバレ》 初期アルジェントのいわゆる“動物三部作”の三本目という位置づけ。「幻の傑作」なんてコピーを臆面もなくつけて40年ぶりにリバイバル上映されましたが、「幻」になったのは権利関係の揉め事が原因で、よくある話です。そして「傑作」は明らかに誇大広告で、これにはアルジェント自身もさすがに恥ずかしいんじゃない? はっきり言って70年代に流行ったイタリアン・ジャーロの中でも多少出来が良いという程度のお話し。あのストーリーテリングでは犯人は予想外の人物ということになりますが、私の様にぼんやり観ていなければ大概ホシの目星は付きますよ。でもこの犯人の行動はツッコミどころが満載で、ご都合主義が目につきすぎます。警察の方もたいがいで、“被害者の網膜に最後の映像が焼き付いている”というトンデモ科学を大真面目に見せられるとはねえ。その残像が“四匹の蠅と言うわけですが”、ここのタネ明かしの説明も無理筋すぎるでしょ。今や昆虫好きと言えば香川照之かダリオ・アルジェントかというぐらい有名になってしまいましたが、その隠しきれない性癖を映画作りにぶつけ始めたのはこの頃からだったということですかね。 ちょうど本日エンリオ・モリコーネの訃報が配信されました。本作はアルジェント作品としては珍しいモリコーネ起用ですが、“来る仕事はすべて引き受ける”がモットーのモリコーネらしいです。音楽自体はオーソドックスないかにもイタリアン・ジャーロと言った雰囲気ですけど、やはりアルジェントの作風とは合わなかったみたいですね。合掌。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 4点(2020-07-06 22:44:25) |
4.アルジェントらしさはありますが、物語的には及第点かなーと。まずやっぱり音楽はゴブリンでもっと煽ってほしかった。いつの間にか「サスペリアPART2」みたいな、映像作家みなぎる謎解き映画を期待してしまってるのかなと。犯人知ってからそれまでの展開を思い返した時に「ん?」って疑問に思う所も多く、アルジェントの初期の作品の1つが観られた喜びは確かに大きかったですが、脚本がイマイチだったかなと思いました。ただカメラワーク(電話してる時に電話線をずっとナメて追う所とか)や無表情な仮面のアップ使ったりと、随所に私の観たいアルジェントのねちっこい部分を垣間見れてのは嬉しかったです! |
3.途中で犯人は分かるし、犯人の動機も陳腐だということもあるのか、いつものダルジェントワールドに入りきれなかった。 【みんな嫌い】さん [DVD(字幕)] 6点(2011-12-11 23:53:25) |
2.《ネタバレ》 不可解な映像は、いかにもアルジェントっぽくていいですね。独特なカメラワークで見せる殺人劇は、どれも印象に残ります。それにしても、犯行動機があまりにも理不尽すぎる・・・。(笑) 【たけたん】さん [DVD(字幕)] 5点(2011-08-07 11:47:51) |
1.《ネタバレ》 「幻の傑作!」との謳い文句につい観てしまったが、初期アルジェントのジャーロものはどれも似たような印象。ホラー色を全面に打ち出した『サスペリアPART2』ほどのインパクトはない。プロットは出鱈目だが、魅力的な登場人物(オカマの探偵がいい味を出している)とアルジェントらしい画作りでそこそこ楽しめる出来。斬首のイメージ(夢)がラストのスローモーションに繋がるところは巧い。「4匹の蝿」とは、もろ犯人を言い当てたタイトルだが、「死体の網膜から犯人の映像を映し出す」って、すごい科学捜査だな。 【フライボーイ】さん [DVD(字幕)] 4点(2010-11-17 18:03:05) |