18.《ネタバレ》 冤罪をもたらす群集心理の怖さを描いた西部劇。後味の悪い結末であるが問題意識をはらんだ佳作。 冒頭の、何もなくつまらない街という自虐的な意識が伏線となり、つるし首を数少ない娯楽として楽しむ集団リンチへと繋がる。 付和雷同による私刑は、多くの西部劇でひとつのエピソードとして語られるが、本作ではこの問題に焦点を当てている。 【風小僧】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2023-06-25 16:24:40) |
★17.《ネタバレ》 これは怖い。もはや、一種のホラー映画です。 なにゆえ怖いかと言うと、作品の主要な部分を占める一連のシーンが、夜だから、ですね。人の理性を狂わせる闇。何が起きるかわからない、何が起きてもおかしくない、不穏な時間の流れ。モノクロ映像が不気味な迫力を醸し出しています。 本来ならヒーロー役であるところのヘンリー・フォンダ、後の某作品で他の11人の陪審員に立ち向かって見せたヘンリー・フォンダなら、この事態を何とかしてくれるんじゃないか、とつい思っちゃうのですが、彼の正義感もここでは無力。彼の存在が一抹の希望を抱かせるけれど、その対比によって、絶望の闇はさらに深くなる。 では彼は一体、この作品に何のために登場したのか、何のために彼に相棒がいたのか、というと、相棒へ読み聞かせるという名目で、「手紙を読みあげる」ためにこそ、この主人公は存在したのだ、というラスト。 ただ、この手紙、人の心を動かすどれほどの内容が書かれていたのだろうか、と作品自身がだいぶハードルを上げてしまったので、正直、割とフツーの内容だったかな、と思わなくもないのですが(ゴメン)、映画を貫く緊迫感と迫力は、それを補って余りあると思います。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2023-04-15 11:41:20) (良:1票) |
16.《ネタバレ》 集団が思い込みで暴走する恐ろしさ。思いたいことを信じる人たち。これは100年前の出来事などではないということを、米議会襲撃事件で我々は目の当たりにしたのでした。 私刑を先導するアジテーターがいて、その危険な明快さに乗っかる多数の人間。トランプが火をつけて暴徒が議会になだれ込んだ映像と同じで震撼します。 そしてもっと重大なのはこういうことがアメリカだけにとどまらないであろうということで。 良心俳優ヘンリー・フォンダの若き姿を見ながら人間の進歩の無さに呆然とするのでした。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-08-30 22:31:45) |
15.《ネタバレ》 ここでの登場人物たちを、無知だと嘲ったり、野蛮だと蔑んだりするのは簡単だが、ネット時代になった今でも、人々が行っていることはまったく同じであることに気づいて慄然となる。この普遍性、そして予言力! 【Olias】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2022-05-25 02:00:09) (良:1票) |
14.《ネタバレ》 苦手なヘンリー・フォンダの抑揚のない芝居で物語ものっぺりとして惹き込まれない。人が我は正義なりという感情だけで人を裁く浅はかな思い上がりを、処刑賛成者は勿論のこと、妻に宛てた遺書を勝手に読み上げる行為からも感じた。遺書の内容は妻に宛てるものでなく監督の主張であり、観て解る事をあらためて言葉にする演出に白ける。過ちに対する罰を受けることのないご都合主義の結末にも萎える。お目当てだったダナ・アンドリュースも見どころが無い。尺が短かったのがせめてもの救い。 |
13.《ネタバレ》 傑作ですね。テーマは「冤罪」、裏テーマは「法(良心)」でしょうか。現代日本でも往々に起こりうる冤罪というテーマを通し、良心を説く。 ラストシーンの手紙の「法こそは良心なんだ」。深いですね。捉え方によってはそんなわけない、ともなりそうです。「法こそは良心」つまり「良心こそは法」であると。手紙の「法」を「良心」に読み替えるとすっきりします。「法(=良心)とは正義のすべて、そして善悪のすべてだ」「人々が良心(=法)を持たないと文明は成立しない」。なるほどその通りだなと。この場合の「法」は法律とかの成文法のことではなく社会一般のルールのことですね。 また、冤罪にされた男が手紙に記した、自分に私刑を施した連中に対しての「彼らは善い人だ。あおられていたんだ。彼らが可哀想だ」という一文。一番の良心を持っていたのは、良心に従わない者たちによって私刑に処された彼だったと。なんというか、グッとくるものがあります。 本作は登場人物が多く上映時間も短いですが、それぞれきっちりとキャラが立っており、会話劇の面白さがより際立ちます。 なおDVDでの視聴ですが、パッケージ裏のあらすじは開幕からほぼ閉幕までの完全なるネタバレでした。笑 【53羽の孔雀】さん [DVD(字幕)] 8点(2015-07-02 22:57:25) |
12.《ネタバレ》 ウェルマンによる西部劇の傑作。冒頭から引き込まれる作品だ。 当時の赤狩りへの反論、西部開拓時代の歴史が詰まった作品でアルトマンの「ビッグ・アメリカン」とセットで見たい。 西部における牛の大切さを学べるぜ(ちょっと説教臭いところもあるけどな)。 ま、日本だと評価は低い。ウェルマンの評価がこれほど日本で低いのが謎だ。 でもこのサイトはこの映画が高評価で凄く嬉しい。もう何だよこのサイトは!たまに見直す。 だが、この映画が苦手という奴もいるだろう。そんな奴らも「女群西部へ!(フランク・キャプラ原案)」や「廃墟の群盗」「飢ゆるアメリカ」「無責任時代」「暗黒街の女」「スター誕生」「紅の翼」「ボー・ジェスト」辺りを見てからウェルマンを評価しても遅くないだろう。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-05-18 12:54:08) |
11.《ネタバレ》 人は自らの正義を簡単に信じてしまう。そして、その「正義」の実現のための障害は力でもって簡単に取り除いてしまおうとする。信じた「正義」の目から見れば、手続を踏む法はあまりにも遅く、そして間違えることもある。 ■しかし、「正義」を信じて走るとこういうことになる、といういかにもすぎるぐらいに教訓的な話。面白いか、というよりは意義深い作品。75分の短さで骨格だけでストレート勝負している。 【θ】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-02-14 00:25:39) |
10.なんだろう。このまっとうさは。今にして、手紙の演出はいかにも出来過ぎだが、西部劇に仕立てられた、アメリカの国民風土と刑罰と良心の、ど真ん中ストレートのドラマでした。70年近くたった今でもその説得力は色あせていないですね。 【ねこひばち】さん [DVD(字幕)] 6点(2011-11-01 20:16:35) |
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9.《ネタバレ》 これは小中学生に教材として見せてもいいと思う。「疑わしきは罰せず」の大原則を破る重さと、集団が振りかざす暴力の怖さを説教臭くなく(例の手紙には多少そういう要素もあるけど)、凄まじい人間ドラマの中に盛り込んだ傑作だ。みんながバーに戻った頃からだろうか、必死に抗議していたドナルド・マーティンの姿が思い起こされて、呆然とする自分がいた。そんなパワーを持ったこの映画は素晴らしいのだと思う。 【リーム555】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2011-03-19 00:00:28) |
8.《ネタバレ》 集団心理の恐ろしさを描いた異色西部劇。たいした意味もなく撃ち合い簡単に人が死んでしまう西部劇が多い中で、無実の人間を死に追いやってしまった村人たちが罪の深さを知るという、道徳的な西部劇です。手紙の部分は「くどい」という意見もあるかもしれないが、ここに作品のテーマが凝縮されていると思います。これがないと出来事を描いただけで、印象が薄いものになりそう。 【きーとん】さん [DVD(字幕)] 6点(2010-07-26 20:54:09) |
7.《ネタバレ》 地味な邦題もあってか隠れた名作。手短な登場人物の紹介は見事で、無駄なシーンなく本題へ入る。どうせ助かるんだろうと思えばあっけなく処刑。見せ掛けの正義に、多数決に流される人々、75分と短い中で非常にうまく表現している。オープニングとエンディングでのカットや、手紙を読むシーンでつばに目が隠れるという演出など、画作りにも非常に凝った作品である。ただ、手紙の内容が少しくどく、死に際の人間が書く内容とは思えなかった。バッドエンディングながら非常に良い映画を観たなと感じられる作品。 【TOSHI】さん [DVD(字幕)] 9点(2008-02-08 16:33:57) |
6.《ネタバレ》 後にヘンリー・フォンダ自らが製作にあたった、「十二人の怒れる男」の前哨戦みたいな社会派西部劇。タイトル「牛泥棒~七人の黙れる男」。アカデミー作品賞候補になるほどの秀作という世評にもかかわらず、何故か未公開だったいう事で食指をそそられた作品。調べてみたらこの年の作品賞受賞作はあの「カサブランカ」。作品の内容そのものよりも、終戦後これが輸入されなかった裏事情の方に自分は興味を惹かれますね。ろくでもない愚作や珍作は幾らでも公開されていたのに。あくまで推理の範囲内ですが、アメリカ人が誇りとしている多数決優先議会制民主主義にも誤りもあるんだって事を、占領下当時の日本人には伏せておきかたかったんじゃないでしょうかねえ・・・?最後まで観た限りではそんな気がしてなりません。ドンバチ勇壮なウエスタンを期待する人には肩透かし。ラスト、首吊り処刑されたダナ・アンドリュースの手紙を読み上げるフォンダの目を帽子のツバで見えなくしてるのは、彼の滲んだ涙を隠す為のウェルマン監督の粋な演出とお見受けしましたが。 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(字幕)] 7点(2008-01-25 13:57:45) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 舞台は、無法地帯から急激に法治国家へと変貌してゆく中で時代に取り残された西部の町であることを、町を出た女によって我々に知らしめている。そんな時代、そんな場所で日常的にあっただろう私刑という一方的な正義の行いの理不尽さを通して、法のあるべき姿、群集心理の恐怖、民主主義への疑問を投げかけてくる。製作の年からすればヨーロッパに吹き荒れたファシズムの恐怖、あるいはアメリカを襲った赤狩りがこの作品の根底にあるような気がする。悲しい結末まで一気に見せるドラマは大いに見応えがあり、大いに考えさせてくれる。ただ手紙の朗読はくどい。かなりくどい。なくてもじゅうぶん伝わるのに。手紙の内容がさらにくどい。不自然なまでにくどい。これがなけりゃ高得点だったんですが・・。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 5点(2006-09-13 11:57:21) |
4.これは凄い!この映画、もうオープニングからして、映画の世界に引きずり込むだけの力強さがあります。ヘンリー・フォンダとダナ・アンドリュースの2人の俳優が馬に乗って酒場へとやって来る所からして、スクリーンの中へと入り込ませるだけの見事なカット!映画のファーストシーンがいかに重要であるかということを見せつける素晴らしいスタート!酒場でのシーンで映し出されるポスターに写っている女性の写真、それを見つめるヘンリー・フォンダの表情を捉えるカメラワーク!どれもこれも正しく映画的であり、映画ならではのカットだ!そして、この作品のテーマでもある牛泥棒についての語り口、人が人を裁くということの恐ろしさをモノクロの画面から見せる演出の素晴らしさと相成って素晴らしい人間ドラマとして成り立つ。ラストシーンの余韻の残し方も見事なこれまた傑作間違いなしの1本!「西部の王者」に次いで観たウィリアム・A・ウェルマン監督作品!またしても素晴らしい映画だと自信を持って言えます。 【青観】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-06-20 23:26:11) |
3.リンチ、法、民主主義の象徴である多数決等、様々な問題提起があり、それらを全てラストの夫から妻への手紙を読み上げるところに集約させているところがすばらしかったです。 【maemae】さん [DVD(字幕)] 10点(2005-12-08 19:05:20) |
2.お見事!お見事!!わずか76分間の間に見せる極上の人間ドラマです。牛泥棒と人殺しに罪を疑われた三人の男に「私刑」を受けさせるか否か!早く縛り首にかけ様とする男と裁判を受けさせようと必死に訴える男、とにかく色々な人間が出てきます。そこに見えてくるのはあの大傑作映画「十二人の怒れる男」に通ずるものがあるのではないのでしょうか?。人が人を裁く事の恐ろしさ、法の意味、そんな事を強く問い掛けてくる映画です。必見! 【一番星☆桃太郎】さん [DVD(字幕)] 10点(2005-06-04 23:19:35) (良:1票) |
1.先日『朝日新聞』紙上で劇作家の山崎正和が昨今のアメリカの一極化について書いていたのだが、その中でアメリカという国は今も昔も「正義の実現について、青年のように懐疑を抱かず、一本気で性急なのである。」とあった。確かにこの映画を観ていると、一旦見つけた悪者(かも知れない者)を法や規律に反してでも裁きを下す多数派と、少数派だがそういった行為に意義を唱え続ける人達がいるという基本構造が昔も今も何ら変わっていないことに気付く。大勢の人間があるひとつの方向を向いたときの恐ろしさは幾度となく歴史が示しているが、でもいつの時代にも(勿論この先も)その是非を問う人達が間違いなく存在することに希望を抱く。この映画のラストはその意味で鑑賞後感が悪くないのだと思う。 【パキちゃん】さん 8点(2004-02-27 02:05:09) |