5.先ほど観終わりました。良い作品だと思います。
しかし、基本的に社会ドキュメンタリーというよりは
特定のイデオロギーに元付く教化映画の様に思えて成りません。
昨今の企業、特に大企業は確かに傲慢です。酷いです。
しかし、それはこの映画で描かれている細かい具体的な事柄は兎も角
すでに世界中の多くの国民は認識していると思います。
この映画で描かれる主題を端的に言えば
「もはや市場原理、資本主義は腐り切って、人間に恩恵よりも、大きな害を及ぼす存在と成り果てている」
と、言う事です。
それは分っています。分っていてもどうする事も出来ないで居るのが今の社会なんです。
「明日から極悪な米メジャーの石油元売企業は全て解散せよ!!終わりだ!!」
と、言えばどうなるでしょうか?その翌日からライフライン(電気、水道、ガス)の全てが止まり、物流もストップし
あっと言う間に世界は100年前に戻る事に成るでしょう。それを甘受出来ますか?
この映画に出演している人々も、特定の企業の牛乳や洗剤なりは、或いは買わないのかも知れませんが
企業の作為や偽善で生み出した文明の果実を、全く齧らずに生活している訳ではないはずです。
つまり、もうそこで矛盾が生まれているし、極悪な特定の大企業を叩いたとしても、社会の本質は変わらないのです。
我々は文明の果実と言う甘い果物を、際限もなくばら撒いている列車に乗っている様なものです。
このままではいけないと思いつつも、100年前に暮らす人々から見れば
安楽で怠惰な甘い文明の果実をもはや、手放せないでいる。そのままで走っている。
つまり、この作品ではそういう部分の結論が出ていないのです。
「現代の資本主義が酷いのは分ったが、では資本主義に変わる新しい社会秩序とは何か?」
その新しい社会秩序なる物も現在の資本主義より
もっと人々に大きな利益をもたらす存在に成り得ない限り、大多数を動かす事は難しいでしょう。
「人は利によって動く」何処の偉人も言わない言葉ですが、これが人間の本質を端的に表しています。
ですが、私はムーア氏(多分におこがましいですが)と同じく
無駄と分っていたとしても、自分の出来る範囲で
自分の信じる主義主張で、立ち上がろうと思っています。
それがいま必要な事だ、という事はこの映画を見て良く分かりました。