23.《ネタバレ》 現実離れした馬鹿げたマンガ的な世界観であるが、個人的には好みのストーリーと世界観だった。
独特の自虐的なユーモアを交えつつ、勢いのあるストーリー展開によって、強引にこの世界観に引き込まれてしまった。
多少の無理や無茶も、許容できてしまうほどだ。
製作陣がきちんと独特の世界観を作り上げた成果だろう。
スタイリッシュな映像もまたこの世界観を構築する一役を買っている。
アンジェリーナ・ジョリーはさすがの存在感を放っていた。
彼女の妖しい魅力がなければ、本作のイメージも大きく失われていただろう。
彼女がいたから、なんでもありの世界が許容されたのかもしれない。
現実離れした彼女の存在が、現実離れした本作の“扉”を開ける“鍵”のような存在になっており、この“鍵”がなければ、あの世界観に上手くハマり込むことはできない。
マカヴォイの代わりはいても、ジョリーの代わりはいなかっただろう(ジョリーのファンではなく、ファンになるつもりもない)。
彼女の最後の選択も納得できるものに仕上がっている。
自分の過去を話し、彼女に刻まれた刻印を示すことで、本当の自分は、幼いころにとっくに死んでいるという気構えであり、彼女はこのシステムと心中する覚悟があるのがよく分かる。
彼女を主役にしたスピンオフを作ってもヒットするのではないか。
父親に関しては上手いミスリードを観客にさせることができたので、組織に関してももうちょっと上手いミスリードをして欲しかったところだ。
あの描き方では、見ていて組織が破綻しているのが分かり、組織の秘密が分かっても驚きを感じることはできなかった。
伏線の張り方が下手というわけではないが、もうちょっと観客の頭を信用してもいいのではないか。あれでは分かりやすすぎる。
もうちょっと使命感のある組織ということを強くアピールして、さらに観客をミスリードさせてもよかった。
ラストの仕掛けに関しては物足りないと思ったが、オチ自体はあれ以外考えられず、多少の無理を承知で、あのオチを選んだものと思われる。
フリーマンが誤解するようなストーリーを変に小細工して作るよりも、オチを優先させた思い切りの良さも評価したいところだ。
ストーリーがおかしな部分はあるが、細かいところを描くべき映画でもなく、ストーリーよりも映像を優先させることが大事と考えたのだろう。