15.《ネタバレ》 点数を8点にしたが、私が一番好きなトリュフォー作品はこれ。
というと、たいていの映画ファンからは「あれがぁ?」というリアクションをされる。
だいたいこの映画、レビュアー様の評価もまちまちだし。
フランス本国では不評だった、らしいし。
わからなくはない。不倫を題材にした映画で、尚且つ
「柔らかい肌=若い女性の魅力に溺れる」中年男性の不徳と不実を
これでもかと描写した挙句の顛末を描いてるんだから不快にはなりますな。
(そんな意味では主人公ピエールを演じたジャン・ドサイの演技は良い)
私がこの映画が好きなのは監督トリュフォーが敬愛するヒッチコック等の巨匠の
撮影テクニックに触発された上で、「日常での最もスリルある行為=背徳の恋」を
映画的な効果でストーリー化しようとした試みが自分の琴線に触れたわけだ。
冒頭の手の絡み合いから始まるショットからラスト、夫に制裁を加えるべく
移動する車の不安定な動き~銃声。あからさまな裸や性描写を駆使
しなくとも、官能を表現する事は可能だし、感情を表現するのに表情を
映すのではなく、動作やフィルムに映し出された陰影でちゃんと表す事が
出来る、という点で面白い映画だと思う。
なので撮影:ラウール・クタール(ヌーベルヴァーグを支えた名カメラマン/後監督)、
音楽:ジョルジュ・ドルリューもいい仕事してる。
あとはフランソワーズ・ドルレアックを一番美しく捉えた映画として。
「定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー(晶文社)」を読んだ上で、
この題材に問題なければおすすめ、って結構高いハードルだなぁ。