1.初めて士郎正宗という存在に出会った時は、非商業版のブラックマジック本が出た頃で、同人誌上では『黄金円柱祭』の連載が佳境に入っていました。本は買ったけど、いつも彼の話を読むのにすごい時間を食うオイラは、この映像化までにブラックマジックも黄金円柱祭も読み切れなかった…けど、結果としては正解だったかもしれません。OVA『ブラックマジック』は原作の機械的な消化を目的にしたワケじゃなくて、士郎ワールドのエッセンスの動画化にあったからです。とにかく動画。ロボットのこんなに凄い動きは初めて見たっすよ(今でもこれに匹敵する動きのロボットは映画/アニメ共々見たことないな)。自重と、それがもたらす移動時の慣性・ダメージを計算に入れて攻めてくるロボは、他のアニメみたいに人間には見えません。インテリジェントな「機械」そのまま。何かのテーマを追った作品ではなく、描写に関するコンセプト提示型の作品ですが、この点数をつけさせるインパクトは充分にあります。必然的にその後のオイラは、アクションシーンの動きを厳しく見るようになりました。『ターミネーター2』の評価も『マトリックス』の評価も超低いです(『アニマトリックス』も低いぞ)。「人間を描くべし」と言われる映画・アニメの世界で、士郎正宗は人間でないものを描破しようとしたんですね。しょーもない評論家や文化人たちとは別の世界に住んでいる彼の、アグレッシヴな第一作だったと思います。